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【ドラクエ史上最低のストーリー】ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅 感想・レビュー

このゲームのストーリーを一言で表すなら、「バズりを狙ってインパクトの強い"画"を作ることばかりに執心した結果、キャラクター描写もシナリオ展開も破綻しきった極度の駄作」だ。
いくら何でも言い過ぎじゃないか?と思うかもしれないが、この記事を全て読めば間違いなく納得できるはずだ。それだけの内容を俺は書いた。

だから読め、最後まで。

なお、俺はストーリー部分を目的に本作をプレイしたので、この記事ではゲーム性の部分にはほぼ言及しない。
それからストーリーの内容には注釈を入れているから未プレイでも問題なく読めるはずだが、当然ながらネタバレには一切配慮していない。
その点も理解した上で読んでくれ。

そもそもピサロを主人公にしたことの問題点

まず本作の致命的な問題点として、ピサロがDQ主人公の例に則って「喋らない主人公化」していることだ。
何が問題かと言うと、そのせいでピサロの心情が全く分からない
ピサロが今どんな目的を持っていて、どんな感情で行動しているのか、それがさっぱり伝わってこない。

(画像は自分の配信から切り抜いているので右下に俺が映っている)

本作におけるピサロの目的は「父であるランディオル大帝を倒し、自らが魔族の王として君臨する」事らしいが、その動機がまず不明瞭だ。
俺は母を見殺しにされた復讐のために父を倒したいのかと思ったが、だったら父を倒したとして魔族の王になる必要は無いはずだ。
それ以前に件のピサロの母親自体が「人間に抵抗するな」「人間よりも人間らしくあれ」「父を恨むな」等々、妙に強い思想を一方的に押し付けてくる姿しか描かれておらず、ピサロに優しく接したり、楽しい思い出を作っている姿が全く描かれていない。
なので、この母親を助けたいとか、見殺しにした父が許せないとか、そういった感情が全く湧いてこない

それでもピサロにとっては母親がそれだけ大切だったのか?
あるいは元々ピサロには野心があったのか?
それとも不幸な運命に打ちひしがれた結果、世界を滅ぼしたくなったのか?

色々と可能性は考えられるが、確かなことは何も分からない。
ピサロが何も喋ってくれないからだ。

エスタークの復活を告げる場面

加えて、本作でピサロについて不可解なのが年齢設定と時系列だ。
本作のピサロは見ての通り少年の姿で、ロザリーとも大差ない程度の小柄で幼い姿で描かれている。
だが、例えばドラゴンクエストヒーローズで登場していたピサロは並の男性キャラクターと比較しても頭一つ分大きいくらいの長身で、もちろん幼い顔つきでもなかった。
だから俺は本作がDQ4より過去の時代の物語なんだと思っていたんだが、ストーリーが進むとDQ4のシナリオをそのまま再現した展開がいくつも登場し、導かれし者たちもDQ4本編で見慣れた姿で登場する
じゃあ結局、世界線がパラレルなだけで時系列はDQ4本編そのままなのか?だったら、何故ピサロだけが幼い姿をしている?
作中で特に説明はないし、ピサロは何も語ってくれない。
ただプレイヤーを置いてけぼりにして、勝手に物語が進んでいく

CEROの都合なのか、本作ではロザリーを虐げていた人間を殺していない

根本的な話、俺はピサロについて理解や同情はできても「共感」はできないからこそ価値のあるキャラクターだったと思っている。
ピサロは勇者じゃないし、人間でもない。魔族の王だ。
だからこそ、一般の人間とは全く違う価値観で行動しているし、人間とは違う目線で物を見ている。そういうキャラクターだったはずだ。

例えば、リメイク版DQ4の6章で描かれた、ピサロとロザリーの出会いのシーンだ。本作でも焼き直しの展開が描かれている。
原作での展開は

ロザリーを虐げていた人間をピサロが殺害して助ける

ロザリーは助けられた礼を言わず、軽々しく命を奪ったピサロを非難する

自分の身よりも、自分を虐げていた人間の身を案じる彼女を、ピサロは「妙な生き物だ、面白い」と気に入り「ロザリー」の名を授ける

といった流れだった。
俺はDQ4のリメイク6章が大嫌いだが、このシーンでのピサロの言動は本当に気に入っている。
彼は人の命を奪うことに躊躇がない。勇者たちが「人を襲う悪い魔物を退治する」くらいの感覚で人間を殺すし、(ピサロの視点では)せっかく助けてやったのに礼も言わず、逆に自分を非難してきた女に対し「面白い」と言ってのけるだけの、王としての度量がある。
魔族の王」であるピサロの人となりがよく描かれた、見事な描写だ。

要は、そんなピサロを「プレイヤーの分身」として描くことに、どう考えても無理があったんだよ。
「ピサロというキャラクターの物語」を描くのなら、素直にピサロ自身に喋らせて、彼の考えを、言葉を、はっきりとプレイヤーに見せればよかった。
中途半端にDQ主人公の枠に当てはめ、中途半端にDQ4のストーリーを再現し、中途半端にオリジナル展開を投入した本作は、ピサロというキャラクターの考えが伝わってこないし、プレイヤーとして感情移入もできなかった

それでも、この程度の問題なんて後述するキャラクターの不快さや、ストーリーの破綻に比べれば些末なものだ。本当に些末だ。ここから本作の恐ろしさが本格的に牙を剥いてくるから覚悟しろよ

恐怖のサイコパスエルフ ロザリー

この妙な語尾は誤字ではない

そもそも、ロザリーとはどんなキャラクターだろうか。
原作の時点で描写が少ないので、彼女の人物像をはっきりと描けていない人も多いと思うが、あえて言うなら「心優しい少女」だろう。
先述したピサロとの出会いのシーンがその象徴で、たとえ自分を虐げてきた人間が相手であろうと、その命を奪うことは非難していた。
悪人であろうと傷付けたくはない。罪を憎んで人を憎まず、博愛の精神を持った心清らかな薄幸の少女。そんなところだろう。

さて、ここで話は変わるが、ドラクエとはどんな倫理観のゲームだろうか
これは非常に単純だ。人間は善で、魔物は悪
もちろん例外は存在するが、基本的にはそうだ。
その単純な善悪の二元論で構築された世界だからこそ、躊躇なく悪い魔物をやっつけることができる。

ヒーローが敵を倒すのは良いこと
「敵にだって事情があったのでは?」とか、「たとえ悪党が相手でも暴力で命を奪うのはいかがなものか」なんて無粋なことを言うやつはいない。
そのシンプルな価値観だからこそ、分かりやすい楽しさがある。

そんなロザリーの人物像と、ドラクエの倫理観が合わさると、どうなるか?

敵の魔物を殺害した直後の台詞

答えは魔物の親友と共に過ごし、魔族の王子と一緒に旅をしながら、目の前で魔物の命がどれだけ失われようと眉一つ動かさず、そのくせ人間やエルフは少し傷付けられるだけで大袈裟に悲しむ、恐怖のサイコパスの完成だ。

本作の主人公はピサロだ。魔族だ。つまり魔物は単なる「退治すべき悪」ではなく、「自分たちの同族、共に過ごす仲間」のはずだ。
実際、作中では魔物たちの過ごす村に行き、彼らの言葉を聞き、助けていく場面が何度もある。
どう考えてもピサロやロザリーたちの視点での「魔物」は、「ただの悪いやつ」ではないはずだ。
それなのに、本作では普段通りのドラクエのように「魔物を退治するのは当然なので、それに対して命を奪ったとか考える必要は無い」法則がそのまま適用されている。

ストーンマンなら何匹殺してもいいと思ってたのか?

それが最悪の形で現れるのが、終盤にエビルプリーストから「お前らが今まで倒していたストーンマンは、私が呪いで姿を変えたエルフだった」と告げられる場面だろう。
この発言にロザリーは大きなショックを受けるわけだが、ストーンマンだったらどれだけ殺しても問題ないと思ってたのか?

補足しておくと、本作にはストーリー上のNPCとしてピサロたちとしっかり会話をするストーンマンが登場している。つまり本作のストーンマンが「命を持たない単なる人形」扱いされているわけではない。
なあロザリー。お前、もしかして魔族のことを害虫だと思ってるのか?

その文化、どこで知った?

既にロザリーという人物のキャラクター付けが完全に崩壊しているが、問題点はそれだけに留まらない。
例えば上の画像は行きずりの炎の戦士に「何者だ!」と問われたシーンだ。

そもそもロザリーはピサロとの出会いの際、「私たち森に暮らす者に名前などありません」と言っていたキャラクターだった。
だからピサロが「ロザリー」の名を授けたわけだ。

ここで質問だ。
ロザリーは名前を持つ文化すら無く生きてきたのに、どうして「名を聞く時は先に自分から名乗るのが礼儀」なんて文化を知っているんだ?
答えは言うまでもないだろう。スタッフが何も考えていないだけだ

一人称も「わだす」にしたらどうだ?

上の画像でも少し見せていたが、本作ではロザリーがピサロの仲間になる際に妙な喋り方をして、「興奮すると訛りが出る」と語る場面がある。
そしてこの訛りは大方の予想通り、この後二度と出てこない

「興奮すると方言が出る」と言った設定のキャラクターは昨今そう珍しくないが、本来これは非常に慎重さを要する設定だ。
と言うのも、その設定を出した時点で、その人物の「本来の喋り方は方言」という設定が増えることになる。キャラクターの根幹を揺るがしかねない。

で、本作のロザリーにもそんな設定が追加されたわけだ。
この設定からは「エルフの中にも標準語で喋る層と、田舎訛りのある層が存在する」「田舎訛りは恥ずかしいと認識されており、標準語で話すことが推奨されている」といった文化が読み取れるはずだ。
まあ、名前すら持たない小規模な生活をしている本作のエルフにそんな文化が存在するわけないんだが。

要するに、この訛りに関してもスタッフが「ここでロザリーが突然変な喋り方したらウケるやろなぁ…」と思ったから雑に突っ込んだ、以上の理由があるわけもない。ロザリーはその程度のキャラってことだ。
こんな雑な設定のサイコパス女の台詞を熱演する声優が不憫で仕方ない。

見つけない

あと、本作のロザリーは一応「ピサロにかけられた、魔物を攻撃できない呪いを解くため」という理由付けで加入するんだが、この動機はあっという間に忘れられて大して話題にも挙がらなくなる。

本作の終盤ではピサロに対して「よくぞ自らの力で呪いに打ち勝った」みたいな台詞を言われる場面があるので、スタッフ的には「他人に解呪させるのではなく、ピサロ自身が呪いを克服する」展開を作りたかったんだろう。
つまりロザリーに呪いを解除されたら困るし、「ロザリーは役立たず」と執拗に描写したくもなかったので、もう呪いに言及すること自体を減らしたってわけだ。だったら適当に別の理由作って加入させろよ

人格が破綻している。
その場の思いつきで雑な設定を追加されて背景もグチャグチャ。
加入する動機も邪魔にしかなっていない。

これが本作のロザリーだ。
あと、大体の人が思っても言っていないことだと思うから俺が言っておくが、そもそも本作のロザリーの3Dモデル、顔が可愛くないんだよ

史上最悪の不快キャラ ベネット

シンプルな差別発言

さて、ロザリーについて散々書いたところで、その比じゃないレベルで不快なキャラクターの話をしよう。本作のメインキャラクターの一人、後にピサロの「相棒」を自称する本作最凶キャラクターのベネットだ。
こいつは公式サイトのキャラクター紹介に「ちょっと手クセの悪い」と書いてある通り、盗みを頻繁に行う人物だ。

だが、窃盗は言うまでもなく悪事だ。
なのでプレイヤー(正義)側のキャラクターに盗みを行う人物が登場する場合、大抵は悪党からしか盗まない義賊タイプか、貧困等を理由に良心を痛めながら盗みに手を染めている不本意タイプのどちらかに当てはまることがほぼ全てだろう。

じゃあ、ベネットはどちらのパターンか。どちらでもない
倫理観が極度に欠如しており、盗みを悪い事だと認識していないだけだ。

なぜ嫌われないと思っているんだ?

本作の最も恐ろしい点は、ロザリーもベネットの窃盗を全く咎めず、むしろ盗みに対して否定的なピサロの方が特殊な思想のように語られる点だ
ロザリーが常識人ポジションにすらなれていないのも問題だが、とにかくベネット周りのイベントは「異常」としか言いようがない。

しかしベネットに「なぜそんなに盗みを嫌うんだ?」と問われたピサロが「母からの遺言で盗みを禁じられている」と身の上話をし、それを聞いたベネットはピサロの母に誓って「もう二度と盗みはしない」と語る。
結局「窃盗はそもそも悪いことで、盗まれた人やその周囲に迷惑がかかるからダメ」といったあまりにも当たり前のことに誰も触れてくれないまま終わるのが納得できないが、これでベネットは改心……するわけないだろ。

これがサイコパスエルフだ

その後もベネットは「盗みをしないとは言ったが、既に盗んだアイテムを使うのはノーカン」とでも言わんばかりに平然と盗品を用いる場面がある。
やっぱり反省してないだろ、と思ったら案の定その後ピサロと別行動しているタイミングでは盗みを行っていたことが発覚、挙句「別行動の時だったからノーカウントだろ?」と、本当に欠片も反省していない発言を行う。

そして本作で最凶の名シーンが上の画像の場面だ。
ここまで倫理観の欠片もない、窃盗を繰り返して少しも反省していない、そもそも何が悪いのかも理解していない究極の純粋悪のようなベネットが「心の清い人間」として語られる。
まあ本作のロザリーはサイコパスなので、彼女の視点では清いんだろう。

いずれにせよハッキリ言えるのは、プレイヤーからすれば不愉快極まりないことだけだ。
こいつはピサロに対して「相棒」「種族は違っても分かり合えていた」などとほざくが、スタッフはどんな意図でこいつを描いたのだろうか。

見てたなら助けに行けよ

そしてベネットの更に致命的な問題点は、それだけの不快さを持ちながらシナリオ的に居ない方が良い立場になっていることだろう。

本作の中盤では、DQ4でロザリーが殺害されるシーンの再現イベントがある。ただし原作と違うのはロザリーが一命を取り留める分岐があることだ。
このシーンは事前にマスタードラゴンから「真実を見極めろ」と盛大に煽られており、本作の物語の重要な転換点として用意されているのが覗える。
こう書くと面白そうに感じるかもしれないが、実際には「バレバレの偽ロザリーと、ベネットの発言どちらを信じるか?」という子供騙しもいいところの内容でしかない。(偽ロザリーの正体はエビルプリースト配下の魔物)

このイベントの問題点は一つ一つ挙げていたらキリがないが、その中でも特に問題があるのは「なぜベネットがロザリーを助けに行かなかったのか」が全く説明されていない点だ。
まあ、これも答えは察しがつく。スタッフはピサロ自身にロザリーを助けさせたかったんだろう。
その結果ベネットは、人間たちにロザリーが森へと連れ去られる所を見ていたはずなのに何故かロザリー当人を放置してロザリーヒルに戻り、ピサロに報告しに来るという不可解極まりない行動を取ることになっている。

なお、ピサロが偽ロザリーを信じた場合でもベネットはロザリーを助けには行かない。彼にとってもロザリーは一緒に旅をした仲間のはずなんだが、たぶんピサロが自分を信じてくれなくてムカついたから、ロザリーを見殺しにして仕返しがしたかったんだろう。それ以外の解釈が俺には思い付かない。

人間たちの戦闘力は皆無なのでベネット一人でも余裕で助けられた

そもそも、このイベントにベネットの介入は必要だったか?
「そいつは偽物だ!」と指摘されなければ偽物も見抜けないほど、ピサロとロザリーの絆は希薄だったのか?
ピサロ自身に助けに行かせたいなら、自分自身で偽物に気付けよ。

逆に、ピサロにとって最大の悲劇とも言える「ロザリーの死」を、ベネットが体を張って防いでくれたなら、ベネットの株を上げるチャンスだった。
「ピサロと約束したから」と盗品は決して使わず、ロザリーを攫った一味にボコボコにされながらも必死にロザリーを逃がすベネット…なんて展開があったなら、俺はベネットを見直していたと思う。

とにかくベネットの介入が中途半端なせいで、シナリオ展開としても不自然な上にピサロの見せ場もベネットの見せ場もなくなってるんだよ。
原作の悲劇を回避するif展開」なんてパラレル外伝作品のド定番でアチアチなシチュエーションになれるはずの展開が、本作ではこの体たらくだ。

ダイジェストで原作の展開が流れる

ピサロが偽ロザリーを信じた場合は原作通りにロザリーが死亡し、その後ピサロは復讐心から進化の秘法を用いて異形となる。
つまり原作通りの展開だ。
そして悲劇の結末を迎える…と思ったところで、ベネットが盗品の時の砂を使って時間を巻き戻し、再び偽ロザリーとベネットの選択へ戻る。
これをベネットの活躍に数えていいのかは微妙なところだ。そもそもお前がロザリーを助けていればピサロは進化の秘法を使わずに済んでたからな
おそらくベネットは、わざとピサロを絶望させてから時間を巻き戻すことでピサロに貸しを作りたかったんだろう。

それはそうと、ここで違和感があるのは原作の展開が悲劇的なバッドエンドとして描かれていることだ。
ここから原作通りにストーリーが展開するなら、後に6章を迎えてロザリーは勇者たちの手で生き返り、ピサロも元の姿へと戻る。結果的にはハッピーエンドを迎えていたはずだ
本作では当然と言うべきか6章の存在を前提にしたイベントが随所にあるんだが、何故ここでは6章が存在しなかったかのように描いている?

まあ分かるぜ。選択を誤ったのにハッピーエンドになったんじゃ「真実を見極めろ」と煽ったイベントの意味がなくなるからな。
そこで本作のスタッフが取った行動は「ベネットと偽ロザリーの選択自体に無理あると判断する」ではなく、「6章が存在しないかのように描く」ことだった。それだけだ。

「最低」の展開

どう足掻いても回避できない

……と、ここまで書いたところで本作で「最低」の部分について話そう。
俺は上記の偽ロザリーのイベントの際、操作ミスで「偽ロザリーを信じる」を選んでしまったので、こちらの展開を知らなかった。
最初に「ベネットが正しい」を選んだ場合だ。
もちろんその場合は最初からロザリー生存ルートになるだけ……と思っていたんだが、後で調べたら違うことが判明した。

こちらを選択した場合、ピサロに信じてもらえなかった偽ロザリーがルビーの涙を流し、それを見たピサロは偽ロザリーこそが正しかったと確信。結局ベネットを嘘つきと判断し、偽ロザリーを信じたルートへと繋がっていく。
つまりどう足掻いても一度はピサロが騙されて破滅するルートは避けられず、時の砂で時間を巻き戻すまでが完全に固定の展開だった。
なお偽ロザリーがルビーの涙を流せた理由は一切説明されない。まあドラクエにおいて魔物が人間に化けているのは珍しくもないし、ルビーの涙を流すことも魔物なら簡単なんだろう。
その程度のことで騙されたピサロが馬鹿みたいだな。いや、馬鹿だろ

さて。
俺は上で「ロザリーとの絆を示すためにもピサロが自分自身で偽物に気付くべきだった」と書いた。
とは言え、もしもプレイヤーが選択を誤ったのなら仕方ないと思える部分もある。曲がりなりにも本作のピサロは主人公であり、プレイヤーの分身なのだ。誤ったのはピサロではなく、プレイヤーだと言い訳が利く

ピサロはロザリーを何一つ理解していなかった

だが、プレイヤーが正しい選択をしたにも関わらずピサロが逆の選択をする場合は話が違ってくる。
これは紛れもなく「物語として、ピサロというキャラクターがその選択をした」という意味になる。

つまり、どういうことか。
ピサロはロザリーと共に旅をしていたのに、ロザリーの言葉も、仕草も、何一つ覚えていなかった。偽物を言動から少しも区別できなかった。
そして、「ルビーの涙、ヨシ!」と現場猫レベルの判断でプレイヤーの選択に逆らってまで偽ロザリーを信じ、簡単に騙された。
これが「公式の描く、ピサロという人物」であることが確定したわけだ。

そもそも、普通「味方の偽物が登場」なんて展開は、即座に主人公たちが看破して仲間たちの絆を示すシーンになるものじゃないのか。
実際、ドラクエ11で偽ベロニカが登場したシーンはそうだったろ
なのにピサロは違った。
大切な相手であるはずのロザリーが偽物とすり替わっても気付かない。それが公式のストーリーとして明確に描写された

本作の発売にあたって、公式は「ピサロとロザリー」なんて絵本の動画を出したりして、二人の絆をアピールしていた。それが蓋を開けたらこれだ
この展開を世に出したスタッフの気持ちが1ミリも理解できないし、間違いなく「ドラクエ」ブランドの中でも最低の展開だと断言する

本作の破綻の象徴 リュノ

会話のテンポを悪化させるプロ

本作の主要キャラクターの一人に、公式サイトでも紹介されているリュノという人物が存在する。登場・退場の度に意味深なポエムを呟く人物だ。
俺はこいつが登場した時点で本作のシナリオに対する信頼が地に落ちていたので「どうせ意味深そうな雰囲気出してるだけで、特に伏線とかでも何でもないんだろうな」と思っていたんだが、幸か不幸か、その予想は的中した

普通、この手の「謎多き人物」系のキャラクターはストーリーの終盤に差し掛かった辺りで真の目的が判明し、物語のキーマンとなるのが定番だろう。
それでは、彼はどうか。

ラスボスみたいな思想の持ち主だが物語の本筋には一切関わらない

彼は2度目の登場で唐突に「自分はピサロの弟」と明かした上で、自分と一緒に平穏に暮らそうと持ちかける。
……が、ポッと出のモブに「そいつの言っていることは嘘、リュノの目的は世界の全てを滅ぼして自分が新世界の王として君臨すること」とバラされると、アッサリ観念して自身の目的を全部ベラベラと喋り、そのまま戦闘に。そして倒すと普通に死亡して即退場という、本当に何のために意味深そうな雰囲気を出していたのかも分からない超速展開を見せつけてくれる。

は?

……かと思えば、忘れた頃に何の説明もなく再登場
明らかに光の粒子となって消滅していたし、そもそも当人が「最期に兄さんに会えてよかった」なんて言っていたが、なぜか生きていたらしい。
生きていた理由の説明は一切無い
さらに言えば世界を滅ぼす野望を捨てたとも一切言っていないので、どう考えてもこいつを生かしておいたらダメなはずなんだが、誰もその点には一切ツッコミを入れず、リュノはピサロにストーリー進行用のアイテムを渡して去っていく。

これで彼の出番は終了だ。
厳密は残り1回だけポエムを読みに出てくるが、それで完全に終わりだ。
その後に生きていた理由が説明されることはないし、彼がラスボスになるわけでもない。改心して味方になるわけでもない。
彼は一体何がしたかったのか?
と言うか、スタッフは何のためにこのキャラを作ったのか?
何一つ分からない。
謎が多いってそういうことじゃねえだろ

本当に不明だ

ただ唯一、ラスボス前の四天王の一人がリュノの母親について言及する場面がある。
曰く、「あいつの母親は謎が多い。特殊な力を持つエルフだったそうだが、今どこにいるのか全くの不明だ」とのこと。

以上だ。何も分からないことだけが分かった。
もう一度言うが、謎が多いってそういうことじゃねえだろ

ただテキトーに、その場その場で刺激の強そうな台詞と設定を雑に出すだけで、整合性を取る気がないし設定を練り込む気もない。
そんな本作の物語とキャラクター造形を端的に表した人物。
それがリュノだ。

何の役割もない客寄せパンダ ホイミン

初対面の相手に宝物を差し出す

DQ4のプレイヤーなら、もちろんホイミンのことは覚えているだろう。
導かれし者の一人、ライアンの相棒であり、「仲間モンスター」の始祖だ。
彼が人間の姿で登場することは発売前から公開され、話題を呼んでいた。
公式サイトのキャラクター欄にも掲載されており、本作の重要キャラクターとなりそうな印象を受ける。

俺は最初、ホイミンがピサロと仲良くなって、その後に「勇者さま!ライアンさま!ピサロさまと戦わないで!ピサロさまは本当は良い人なんだ!」みたいな展開に繋がっていくんだと思っていた。
そして俺は、そんな想像に対して「ホイミンがピサロの良い人アピールに利用されるのは本気で嫌だが、『人間に憧れる魔物』だったホイミンが人と魔物の架け橋になるなら、まあ物語としては悪くないか」と思っていた。
だが、その予想は かすりもしていなかった

本作における実際のホイミンの出番は、初対面のピサロを「モンスターマスターだから」と突然信頼し、ライアンに貰った宝物を渡す。以上だ
なお、彼が人間になれたのは魔法研究科のアグルカ(本作の新キャラ)が進化の秘法を試しに使ってみた結果で、何のドラマもない。
そして件の「宝物」だが、時期的にそこそこ優秀なモンスター用の装備以上でも以下でもない。ストーリーには一切関わらない。
本作の中盤以降のストーリーでは導かれし者たちがしっかりと全員登場するが、ホイミンはそこに一切関わってこない
もはや怒りすら湧いてこない。ただ本当に不可解さと残念さだけがある。

完全にシステム側の存在になる

ついでに言うと、同じく主要キャラクターのように紹介されていた「アゲぴぴ」も、チュートリアルを終えると完全にネット機能の窓口役となり、一切物語に登場しなくなる。お疲れ様でした

なぜか親の仇に加勢する勇者

ドラクエ名物「一度ウケたネタは10年以上しつこく擦り続ける

何度か言及したように本作では導かれし者たちが全員しっかり登場する。
俺は元々、回想シーンで姿だけ映す程度だと思っていたから、全員に台詞があるのは純粋に嬉しい点だった
だが、唯一のトルネコの台詞が散々擦られた牢屋ネタだし、このシーンでブライは一人だけ何も喋らない。(一応、別のシーンでブライの台詞自体は一度ある)
そして、これも先述した点だが導かれし者とピサロの関係にホイミンは一切関わってこないし、ライアンも台詞があるのにホイミンの名前を出さない

ピサロと勇者たちが関わりを持つのは原作通りのエスタークが倒された場面だけで、互いに少しずつ相手を理解していくようなドラマは何一つ無い。
なお、本作では勇者の村を襲撃してシンシアたち村人を殺害したのはピサロの名を騙った暴将ディオロス(本作の新キャラ。ピサロの兄)となっており、ピサロは勇者の村を襲撃していない

なぜ親の仇に味方する?

そして勇者たちはピサロと暴将ディオロスの戦いで、ピサロに助太刀する

ここまでの文章を読んだ人は、おそらく多くが「なるほど、村を襲った真犯人を知った勇者がピサロと協力して真の敵に立ち向かうんだな」と思ったはずだが、そうではない

ピサロは誤解を解いていない。なぜか何も弁明しない。
だから勇者はピサロが村を襲撃した犯人だと誤解したままのはずなのだが、なぜかピサロと共闘して暴将ディオロスと対敵する。
そして戦いが終わってもピサロは何も説明する様子が無い。
なんで?(素)

なんで説明しないの?(素朴な疑問)

本作のピサロはロザリーの命が助かったことで暴走せずに済んでおり、その後にハッキリと人間たちを滅ぼす野望は捨てている
だから村を滅ぼした誤解を解いて、野望を捨てたことも説明した上で勇者たちと共闘するならまあ分からなくはない
だが、本作のピサロはどちらもやっていない。なのに何故か勇者たちが味方になる
勇者の視点では「村人を皆殺しにした張本人 VS その敵」のはずなんだが、そこで何故か勇者が村人を皆殺しにした張本人の方に加勢する
なんで?

あと、暴将ディオロスはピサロにとって「最大の敵」のようにストーリー序盤から語られている人物なのだが、そいつへのトドメは勇者がかっさらう

暗殺

ピサロとの会話に気を取られているディオロスの背後から不意打ちでな!!

これが制作者の考えた「ピサロと勇者の熱い共闘シーン」の結末か?
俺はこのストーリーを人間が書いたとは思えない。


とにかく全てが無茶苦茶

さて、エンディング付近は配信不可なのでスクリーンショットもないし、「結局思わせぶりな要素のほとんどが回収されずに終わった」以上のことを言いようがない。
俺もいい加減疲れてきたので、残りは細かい点を雑に書いていく。
とっ散らかった話になると思うが、まあ残りも付き合ってくれ。

ロザリーヒルの塔

墨俣の一夜城もビックリ!!

本作では最初ロザリーヒルに塔はなく、ロザリーを匿うために後から塔を立てる話の流れになっている。
しかしこの塔、「ロザリーヒルの近くにも人間が来ている、ロザリーが危ない」との会話の後、画面が一度暗転したと思ったらいきなり立派な塔が村に完成しており、誰がどうやって建てたのか一切説明がない
そもそも、こんな村の景観からも明らかに浮いている塔を建てたら余計に目立つだけとしか思えない。ロザリーを隠したいならピサロの自宅の地下にでも匿っておけばいいだろ

甘味楼の魔界 初級

ワケがあってもダメに決まってんだろ

俺が最初に、このゲームのストーリー自体に対して「異常だ」と明確に感じたのがこの地域だった。ここでは、ムジャラーという人物(後のピサロの手先)が禁断の魔獣を呼び出したせいで投獄されており、その友人のメダリカが「ムジャラーを助けてほしい」と依頼してくるので、それが目的になる。

だが、禁断の魔獣を呼び出したならムジャラーが悪いのは確かだし、何か事情があったとしても投獄されるのは当然のことだろう。
なのに何故かピサロ一行は、何の罪もないムジャラーが理不尽に投獄されたかのような反応をして、可哀想だから助けようという流れになる

そして結局、ムジャラーが禁断の魔獣を呼び出したのはこの地域のボスに脅されていたからと語られる。
なんだ、じゃあ結局ムジャラーは悪くなかったのか…と思ったら、ムジャラーは「以前にも禁術を使ったことがあって、その弱みを握られていた」と被害者面をして語る。
どこからどう見てもムジャラーの自業自得としか思えないが、誰もムジャラーを非難せず、彼は可哀想な被害者のように扱われる
ベネットの件もそうだが、このゲームは罪人に甘すぎる

なんで入ったの?(わかりません)

あと、この地域のダンジョンでは「ハチミツの底なし沼で溺れそうになったピサロを、ベネットが盗品のアイテムを使って助ける」場面がある。
なぜピサロが突然、底の見えない沼の中にザブザブと入っていったのか、溺れそうになるまで気付かなかったのか、何も説明されない

そして、ベネットがピサロを助けた方法は「アイテムでハチミツの沼を凍らせる」ことなんだが、普通に考えたらピサロが沈んでいる状態で沼を凍らせたら凍った沼にピサロが埋め込まれるはずだ
なのに沼に冷気が吹き荒れる描写があったと思ったら、次の瞬間にはピサロが沼の外に出ている。どうやって脱出したのか、もちろん何の説明もない
つまりこういうことだ。

ベネットがピサロを助けるシーンを描きたい。
でも、ピサロをピンチにする流れを考えるのが面倒。
じゃあ、なんか突然ピサロが溺れそうになったことにすればいいや。
で、魔法のアイテムの力で何かいい感じにピサロが助かって終わり!

本作のストーリー構成は本当に常時このレベルだ
ベネットがピサロを助けるシーンを作る」ことだけ考えて、その前後を繋ぐ物語を構築する気が一切無い。
真面目に読むだけ無駄だ。だって制作者が何も考えていないんだから

ピサロナイトの激安生命

恐ろしく安い命 オレでなきゃ消しちゃうね

鉄鋼砦の魔界という場所で、主要人物としてピサロナイトが登場する。
彼の主人であるヘルバトラーは昔は偉大な人物だったが、現在では暴君へとすっかり変わり果ててしまったのだとか。
と言うわけで、そのヘルバトラーを倒すのがこの魔界の目的だ。

それで、いざヘルバトラーとの決戦という時になって、ピサロナイトは「自分はヘルバトラーから"名"を与えられて生き返った身なので、ヘルバトラーが倒れれば自分も死ぬ」と明かす。
わざわざ戦闘の直前に話すのはタイミングが最悪だと思うが、まあその点には目を瞑ってやろう。
そしてヘルバトラーを倒すと、言葉通りにピサロナイトが死亡する……と思ったところで、ピサロから新たな名を授けられたことで復活する

つまり彼は、名を与えて貰える限り無限に蘇生できるらしい。
どうも演出的にはこれを感動的なシーンのように描いていると思うんだが、俺には「安っちい命だなあ」以外の感想は何も出てこなかった。

エビルプリーストの謎

なんで持ってるの?(わからない)

ピサロが主人公の物語ということで、先述したが本作にもエビルプリーストが登場する。本作で俺がこいつに対して最も印象に残っているのは、こいつが登場するダンジョンの「エビルプリーストの隠れ家」が、異様にだだっ広いし、仕掛けもテンポが悪い上に複雑で面倒臭く、歴代ドラクエでもトップクラスに「二度とやりたくないダンジョン」だった事だが、まあそんな事はどうでもいい。

そのダンジョンでエビルプリーストとの決戦になる。
勝利した後はダンジョンが崩壊し、そのドサクサに紛れてエビルプリーストは逃亡する……のだが、この際に何故かピサロが持っていたはずの進化の秘法をエビルプリーストが入手している
おそらくはピサロがダンジョン崩壊時にうっかり落とし、エビルプリーストがそれを回収したんだと思うが(それ以外の解釈は無理だろ)、ピサロが進化の秘法を落とすシーンも描写されないし、一目散逃げ出したはずのエビルプリーストが進化の秘法を回収できた理由も説明されない
多分シナリオを考えるのが面倒になったんだと思う

だから最低だって言っただろ

中学生が作ったツクールゲーみたいなノリの会話が多い

SNSが人々の生活にすっかり浸透して以来、漫画やゲームなどの創作物において「いかにもバズりを狙っていそうな描写」が目に付くことが増えた。

それ自体は一概に悪習とも言えないが、問題となるのは先述したような、「インパクトの強い"画"を作ることばかりに執心した結果、キャラクター描写やシナリオ展開に不自然な点が発生している」場合だ。
本作はその典型例と言える。

これまで記事の中で書いたが、俺は「リメイクDQ4の6章は嫌いだが、ピサロというキャラクター自体は好き」という若干複雑な立場だった。
俺が6章を嫌いなのは主に「勇者がロザリーを生き返らせようとする動機が一切無いし、何も説明されていない」「『原作のラスボスすら傀儡とした真の巨悪』として抜擢されたはずのエビルプリーストが空気」といったシナリオの稚拙さが理由だ。ピサロというキャラクターの描写は気に入っていた。

多くのプレイヤーから反感を買っていた「私は信念に従ってこの村を滅ぼしたまでだ。少しも間違ったことをしたとは思っていない」というピサロの台詞(ピサロに滅ぼされた勇者の故郷での会話)も、俺はむしろ「魔族の王としての信念と責任感が表現された良い台詞」だと思っていた。

倒したのは勇者ですよ

だから俺は、本作に触れるにあたって「叩く前提で遊ぶのはダメだ」と強く思っていた。
ドラクエの追加シナリオなんてゲマの出番増加による大量矛盾だとか、執拗にキーファを無能クズとして描いて笑いものにする追加イベントなんて内容ばかりだったので、ハッキリ言って期待しない方が良いのは分かっていた。

それでも、ここに来て22年半ぶりに「ドラゴンクエスト モンスターズ」シリーズの正統ナンバリング新作を名乗り、ピサロが主人公という話題を呼びそうな設定を出してきたんだ。
もしかしたら今回こそは、本当に気合を入れてスゴイ作品を出してくるかもしれない。そんな期待も多少はあった。
俺はピサロを善人扱いしようとする公式の姿勢が不愉快で仕方なかったが、それとは別に本作のストーリー自体は面白い可能性に期待していた。
リメイク6章での描写不足を補完してくれる可能性を望んでいた。
そして、また騙されたんだよ。

と言うか、本作が「モンスターズ3」を名乗る必要はあったのか?
タイジュの国やマルタの国は一切本作に関わってこないし、テリーもルカ&イルも登場しない。22年半ぶりに、わざわざ正統ナンバリング新作として出す理由がない。
そして徹頭徹尾ピサロ個人の物語でしかない本作のストーリーにおいて、「ピサロ当人は戦闘に参加できず、部下の魔物に代理で戦ってもらう」設定はどう考えても邪魔にしかなっていない。
素直に「DQ4外伝」として作った方がまだマシだっただろう。

ピサロの物語を作りたいと思ったタイミングで、ちょうどモンスターズの企画が転がっていたから使った
そんな意図が透けて見える気さえする。
なんでゲーム遊びながらこんなこと考えなきゃいけないんだろうな。
とにかく、このゲームの物語については全部書いた。
俺が「極度の駄作」「最低」と書いた意図も分かっただろう。こいつを最低と呼ばないなら、他のドラクエの不評だったストーリー全てに失礼だ。

俺の感想はこれで全てだ。
こんなクソ長い上に愚痴ばかりで構成された記事に最後まで付き合ってくれたことに感謝する。



余談(ここから先はただの自分語り)

以下は本当にゲームと直接関係ない話だ。
なので、こんな長ったらしい恨み感想を書き連ねた俺個人に興味が湧いた奴以外は読まなくていい、と前置きをした上で書く。

先述したスクリーンショットへの映り込みの点から伝わっていると思うが、俺はVTuberをやっている。と言うかやり始めた
このゲームが初配信だった。

俺の個性を自分で語るなら「恨み」だ。
ずいぶん昔から、コンテンツのファンとアンチの狭間を漂い続けるようになっていた。
大好きだと思っていた作品に対し、少しずつ違和感を抱く。作者の心変わりなのか、時代に合わせた変化というやつなのか知らないが、俺が大好きだった部分がどんどんと消えて行って、許容できない要素ばかりが増えていく。
そうして、口を開けば「公式が自ら作品の長所を潰すような表現をするとは何事か」と、そんな愚痴ばかりを語る、世間からは老害と呼ばれかねないような存在になりつつある。

だが世の中、同じ悩みを抱えている奴は決して少なくないだろう。
息の長いシリーズ作品に付き合っていれば、その中に一つ二つ、許容できない作品も登場してくるのは当然だと思っている
本当に一つ一つの作品に真剣に向き合っているなら尚更だ。
そんな自分を尻目に、雑に作品を流し見している程度の奴らが「もちろんシリーズ全作品大好きです!」なんて軽々しく語り、ファンの代表みたいな面をしているのを見ては苛立ちを募らせている。
だからって、そんな「光の存在」に喧嘩を売ったって何にもならないのは分かっている。だから一人で、ただ恨みを積み重ねている。燻らせている。
そんな奴は確実に、世の中のあちこちに存在するはずだ。
俺は、そんな奴らに寄り添える存在になりたいと思った。


それを表現するにあたって、本作ほど相応しいゲームはないと思った。
有名なシリーズの新作ということもあって、話題性も抜群だ。自分の知名度を上げるのにも丁度いい。全てが完璧だった。

まあ結局、その配信は俺が一人で、本気で苦しみながら困惑と悪態を繰り返すばかりの内容となり、正直なところ見る人にとってあまり楽しい内容ではなかったように思うし、本当に欠片も話題にならなかったので、俺の目論見は清々しいくらいに全部外れたわけだが
それでも俺の意志に共感してくれた人はゼロではなかったので、決して無駄だったとは思っていない。

とにかく、俺の言いたいことは分かるだろう。
こんな記事を最後まで読んでる奴。お前だよ。俺はお前を待っている。
俺をフォローして、チャンネル登録して、そしてお前の恨みを聞かせろ。

俺はもう、「最後に大笑いしたのはオードリーの春日が椅子を壊した動画」と即答できるくらい久しく笑っていないし、この先も腹の底から笑える機会なんてそうそう来ないだろう。
だからお前が、俺の代わりに笑え
俺はそのためにVTuberをやると決めたんだ。


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