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「菅原伝授手習鑑 半通し〈加茂堤、筆法伝授、道明寺〉」 (伝統芸能 演目ゆかりのお話をきく会)-道明寺天満宮 編-

本日3月29日(日)夜9-11時 NHK「古典芸能への招待」で、2月歌舞伎座で歌舞伎三大名作の一つ「菅原伝授手習鑑」より上演の珍しい「道明寺」が放送されます。片岡仁左衛門さんが菅丞相を演じられ、至極の芸がご覧いただけます。お孫さんの千之助さんとの共演も話題でした。

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日頃お世話になっている方にご案内いただき、舞台である道明寺天満宮宮司様と観劇をご一緒し、歴史的背景などのお話を聴く貴重な機会を得ました。菅原道真公や道明寺天満宮の由来、このお芝居が生まれた背景を教えていただき、さらに作品を深く知ることができました。
道明寺天満宮には、国内で唯一、菅原道真公が使っていた品が国宝として遺されています。道明寺は尼寺で、史実に基づいて豊かに物語世界を作り上げた作家たちの手腕にも思い至ることができます。
http://www.domyojitenmangu.com/
番組内では、道明寺天満宮のお隣にある道明寺が紹介されます。道明寺天満宮へは、道頓堀のある大阪松竹座から電車で30分なので、ぜひ訪れたいと思っています。明治の神仏分離でお寺と神社に別れましたが元は同じということです。大変興味深いお話でしたので、許可をいただき、noteに書かせていただきます。

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「菅原伝授手習鑑 半通し〈加茂堤、筆法伝授、道明寺〉」
(伝統芸能 演目ゆかりのお話をきく会)-道明寺天満宮 編-
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菅原道真ゆかりの道明寺天満宮 南坊城光興宮司様ならではの詳しい、道明寺や道真公の歴史、演目に関してなど、なかなか聴けない深く素晴らしいお話の数々に、歌舞伎に詳しい人たちも参加していたのですが、一同感激しました。

二月歌舞伎座昼の部は、片岡仁左衛門さんによる「菅原伝授手習鑑」の半通しで、上演の珍しい「道明寺」がありました。菅原道真の母、覚寿(かくじゅ)が要の芝居で、玉三郎さんが演じます。歌舞伎で老女大役3役「三婆」の一つで、気位高く一家の運命を左右する重要な役です。洗練された演技が求められ、役者が揃ってやっと上演がかないます。「道明寺」は、九州の太宰府へ流される道真と、尼で伯母の覚寿や養女刈谷姫の別れの場面です。

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道明寺天満宮には道真公が使ってた遺品が国宝6点、1万2000社ある天満宮の中で唯一残されています。明治の神仏分離で道明寺天満宮と道明寺に分かれましたが同じであり、お芝居同様、道明寺は尼寺です。
菅原家の始まりは、土師氏の改名です。今も教師など専門家には師がつきますが、土師は土の専門家、古墳づくりや葬送儀礼を担いました。昔は帝が亡くなると仕えていた人も一緒に殉職し埋葬されましたが、殉職を埴輪へ置き換えることを提言しました。土師氏の仕事の一つであった、お墓へのお供え物である埴輪を連想させる名前は印象がよくないため、土地の名前であった菅原へ改名しました。

「菅原伝授手習鑑」は1746年大坂竹本座の文楽が初演ですが、1745年に道明寺の修復が竣工しました。寄付を募るため、それまで京都や大阪で出開帳を行っており、2段目作者の三好松洛が、道明寺の勧進で人々がよく知っていたことをうまく生かして作品を書いていることを教えてくださいました。鶏を鳴かせる演出や史実との違い、道真の彫像のこと、木げん樹の実、仁左衛門さんとの交流など、時間めいいっぱいお話は多岐にわたり、芝居の中でどうしてこのように描写されているのか、深いうなづきの連続でした。大阪松竹座から電車で30分とのことなので、大阪に行ったときはぜひ、お参りしたいと思います。

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「菅原伝授手習鑑」は、文楽・歌舞伎の三大名作を生み出した大ヒットメーカー竹田出雲・三好松洛・並木千柳合作の一作目で、翌年「義経千本桜」翌々年「仮名手本忠臣蔵」と続きます。「菅原伝授手習鑑」では、松洛・千柳・出雲それぞれが 2、3、4段目を担当し、三者三様の親子の別れを書き分けたといわれています。

歌舞伎を知る講座は、総合芸術のため、役者さんのお話、文学、衣装、小道具、舞台機構、日本舞踊…といろいろな方面から解説がありますが、ゆかりとなっている社寺の方から直接お話を聴ける機会は稀です。
筋書(※関西では番附と呼ぶ)にも、ゆかりの地紹介が時折載っています。昔の筋書はもっと詳細にまつわる事柄がよく載っていました。観劇する方、筋書を読む方も社会生活の中で歴史を自然と知り、詳しかったのだと思います。解きほぐして、より歌舞伎を楽しめるご紹介をしていけたら幸いです。

菅原道真は学識高く天皇に重用されました。権力にこだわりなかったのですが、藤原時平との政争が激しくなり、左遷という政変に巻き込まれます。千年続いていく貴族政治の実権を藤原氏が握っていく原点の一つです。昔の日本人は歴史をよく知っていました。その上で、菅家、藤原時平、親王と、それぞれ3つの家に仕えた三つ子の兄弟というフィクションを通して「菅原伝授手習鑑」は、大きく歴史が動く中での、人の生きざまやもがき苦しみ、悲哀が書かれています。

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道真左遷原因となっている、天皇の弟君と恋に落ちてしまった苅屋姫は、仁左衛門さんのお孫さんで19歳の千之助さんが演じるところも、ストーリだけでなく役者さんの人生とかけあわせて観るのも歌舞伎ならではの見どころの一つです。いろんな観点から、ファンになった方は歌舞伎を見ていくので、自分の人生を通して、何度も同じ演目を見て、人と語り合い、作品について知っていきます。一生をかけられる、とても贅沢な娯楽です。

御朱印集めがブームで、社寺参詣を趣味としている方もたくさんいます。現代に奇跡的に生き続けている歌舞伎の中に残る日本の歴史風俗をそういう方々にも結び付け伝えて、歌舞伎に興味を持っていただけるすそ野を広げていけたらと思います。

ご一緒した方が、おはなし会のことをブログ記事に書いてくださいました。
http://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2020/03/17/133414 
こちらもぜひご覧くださいませ。

二月大歌舞伎
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/603/
道明寺天満宮
http://www.domyojitenmangu.com/

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場所は眺めの良い歌舞伎座タワー5階にある、寿月堂さんで、めいめい好きな茶菓子をいただきながら、お話を伺いました。私が選んだのは大好きな抹茶モンブランです。
ここのパスタもおいしく、穴場です。
寿月堂 銀座歌舞伎座店
https://maruyamanori.net/sp/kabuki-za/store/

⭐︎菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)ってどんなお話?
文化デジタルライブラリー「文楽編 菅原伝授手習鑑」
菅原伝授手習鑑 | 歌舞伎演目案内 – Kabuki Play Guide –

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