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火入れ機 HOT-1 開発にあたり


火入れ研究機HOT-1の開発にあたり目指したテーマは火入れの物差しを作ることでした。

私達は長年製茶機械の販売とサービスを主な業務としていました。ですからもともとお茶の火入れに関してはシロウト(素人)でした。

そのシロウト集団の創り上げた火入機はとても使いやすいのです。

どうしてシロウトの創った火入機が使いやすいのでしょう。

火入機の開発にあたり私達が初めに行ったのは、できるだけ多くのお茶の販売に関わる方々に『どんな火入れが一番良いか』という意見を聞くことでした。

そしてわかったことは、聞いた相手により皆意見がことなること、さらに良い火入れとは、その人の好みで決まることでした。

火入れの好みは人それぞれです。

万人に向く火入れ、誰もがこれでよいという火入れはありません。しかし、シロウトにはそれではわかりません。

そこで火入れ研究機HOT-1の開発にあたり目指したテーマは火入れの物差しを作ることでした。

これが基本の火入れです、という物差しです。物差しがあれば誰でもそれに合わせて火入れをするだけです。

基本の火入れ(基準)があれば、お茶を見ながら、強くしたり、弱くしたりして味付けをして、お好みのお茶に仕上ることができます。

シロウトでも安心して使える火入機の完成です。

失敗はありません。なぜかって?

それは目の前に流れているお茶を見ながら調整できるからです。

そして他の火入機と比べて色落ちしませんから、安心して使えるのです。浅蒸し、深蒸し、粉茶、棒茶もトラフに流す量の調整だけで簡単に火入れできます。

HOT-1は、お茶を加熱する温度を、従来のどの火入機より細かく、均一にすることに努力しました。

少なくとも遠赤外線を利用した火入機では一番だと自信を持ってお勧めできます。シロウトでも安心して使える火入機の完成です。

衛生的で故障のない機械、これも重要なテーマでした。

お茶が接する部分にはステンレス素材やアルマイト加工を施し、拭き掃除が簡単に出来る構造に仕上げました。そして間接的にお金のかかる修理をなくすため、一つ一つの部品を丁寧に作り、組立てました。徹底的に故障のない機械を目指して、この商品を送り出したい!の一念から、出来る限り低価格でご提供できる商品作りに努力いたしました。

その言葉を聞くために一番早道の投資だとお考えください。

どうしたらお茶が売れるのか?お茶の販売に携わる方々は常に考えておられることですが、どんなお茶が売れるのか!

それはお客様が商品を手にとって開封し、『あーいい香り!』

飲んで『このお茶おいしい!』

この二言を聞くためにお茶つくりに日々努力していると言ってよいでしょう。

お使いの皆さんはもうHOT-1の物差しをご自分の物差しに変えて独自の火入れをされておられます。

これからの火入機はドラム型ではなく、みんなHOT-1になる!と火入機の開発に関った(もうシロウトでない)集団は本気で考えています。)

HOT-1の原理と構造

なぜ私達はHOT-1を開発したのか

その経緯とHOT-1の原理と構造を簡単にご紹介します。

遠赤外線ホット・ワンを発売以来、現在静岡県内を中心に、東京都、神奈川県、山梨県、埼玉県、茨城県、新潟県、京都府、大阪府、三重県、広島県、岡山県、福岡県、佐賀県,長崎県、宮崎県、熊本県、大分県、鹿児島県と日本全国に100台以上納品させていただきました。(2019年10月現在)

お茶屋さんにとって火入機を買い替えるということは大きな決断が必要であると思います。お客様(消費者)に何年あるいは何十年と定着した従来の火入れを止め、また1から火入れの勉強をやり直すのですから。

それでもあえて火入機を入れ替えさせていただいたのには大きな理由があります。

一言で申しますと従来の火入機の弱点は『高級茶』に適さないことです。

ご存知のようにお茶に火入れ香を付けることは容易いことですが、先に述べたように、お茶を構成する葉、茎、芽、粉など複雑な要素のすべてを均一に加熱することは至難の業です。仮にそれらをすべて仕分けしたとしても、高度な職人的火入れ技術が必要でした。特に高級煎茶などは本来のお茶の新鮮香を残す火入れ技術が必要になります。

理想の火入れをする機械はできないだろうか。しかも出来るだけ数値化して誰にでも簡単に操作できる物・・・

この命題に対する私共の答えは単純なことでした。

能率を考えず、ごく少量のお茶をていねいに火入れすることなら可能ではないか・・・

従来の火入機が高級茶に適さない最大の理由は一度に10数キロの原料をまとめて火入れする前提で作られている構造にあると思います。

例えば回転ドラム方式なら、大きな中華なべに大量のお茶を入れてチャーハンのように炒めるのと同じですから、料理の達人でなければ均一な加熱など無理な話です。何十キロかのお茶を均一に焙煎することはなかなか困難ですが、まるで実験室でやるように、手のひらに乗る10グラムのお茶なら、やわらかな熱源でゆっくり加熱すれば理想の火入れができると考えたからです。

遠赤外線火入機HOT-1の原理と構造


理想の火入れ

例えば20cm四方ほどの小さな箱の中に少量のお茶をごく薄く広げて、空間全体に炭火のようなやわらかな熱を照射し、お茶を加熱すればいいのではないかと。

お茶内部から出てくる水分や異臭は排出する必要がありますから密閉せず、保温しながら自然排気させます。

お茶葉は重ねずに、棒も一本一本並べますが、そのままですとお茶の裏表がムラになるので少し揺すってムラを防ぎます。

表面が傷にならぬようにゆっくりと。ちょうど手もみ茶で使われるほいろ(焙炉)火入れに近い方法です。

20~30秒程経過したら全体を攪拌します。その際できるだけ外気で冷やされぬよう茶温を保ちます。

これでしたらわずか数グラムですがお茶を見ながらお茶に何のストレスも与えず、理想の火入れができるはずです。

この小さな箱では商売にならないのなら、この箱全体を大きくするのではなく、この小さな箱をたくさん作ればいいわけです。

遠赤外線火入機HOT-1(ホットワン)はこのような原理で出来ています。

天井部の熱源は炭火とはいきませんが、炭火に最も近い熱源といわれる遠赤外線ガスバーナーをお茶用に改造したものを取り付けました。

天井から底面に向けて照射される熱は、底面のどの位置でも均一な温度分布になるよう工夫されています。(開発スタッフが最もこだわった部分です。)

遠赤外線は放射熱で、お茶の内部まで浸透する優れた熱源です。

空気を媒介しないため外気温にも湿気にも左右されないと同時に、マイクロ波(電子レンジ)ほど芯水をカラカラに乾燥する傾向は強くありません。

旨み成分は水の分子と仲がいいので一気に水分を取ると旨みも一緒に無くなりやすいのです。照射温度によりますが遠赤外線のほうがコントロールしやすいと考えています.

火入空間の構造


HOT-1の火入空間の構造

実際のHOT-1の火入空間の構造は、20cm四方の小さな箱の高さと幅はそのまま、長さだけは2mほどの細長い箱になります。
(約20cm×20cm×200cm)、これが3段あり、合計6m弱の連続した箱(空間)です。


底面は振動コンベヤ(トラフ)になっていて、薄く広げられたお茶は層をつくることがなくゆっくり流れてゆく連続流動式で、各段のお茶は水分値が微妙に違うため独立した温度設定が可能です。(各段自動温度調節機能付)

最上段で水分除去ができます。

HOT-1独自の遠赤外線バーナー

HOT-1は遠赤外線を利用した火入機です。

しかしそれが火入れ機としての最大の特長というわけではありません。

遠赤外線バーナーをお茶に向けてで照射をするだけでは火入れにはなりません。バイブの上に流れるお茶を単純に遠赤外線照射するだけでは、表面の一部分に火が入るだけです。

既存のドラム式火入れ機や、自動乾燥機にに遠赤外線バーナーを付けても補助的に遠赤効果が期待できるだけで、遠赤外線火入機とは呼べないと考えます。

熱源が何であれ、お茶をまんべんなく加熱することのできる構造かどうか、温度調整がしっかり出来る構造かどうかが問題になります。

HOT-1最大の特長はお茶の火入れに必要な環境コントロールが容易にできる原理と構造にあります。

荒茶の製造工程のなかで最も重要な工程、蒸し工程に例えるとわかりやすいかもしれませんね。世界で最高の蒸しの出来る蒸機はなにかと尋ねられた時、それはマイコン制御された高価な蒸機ではなく、昔ながらの蒸篭(せいろ)であると思います。

蒸篭では効率が悪いので蒸機という機械が誕生したわけで、能率をかんがえなければ、摘み取ったままの茶葉を蒸篭でおとなしく(叩いたり、高速で攪拌したりせず)自然のままに蒸しあげればいいと思います。

火入れでも同じで、能率を考えなければ、お茶をフライパンで炒めたり(ドラム式)、高温の熱風を当てたり(透気式)、電子レンジでチンしたり(マイクロ波)しないほうがいいと思うのです。

例えば、ホイロ(焙炉)の上に薄くお茶を広げ、均一な熱源でゆっくり温める。これが良い火入れの基本条件であると考えます。

ヒントは色彩選別機

色彩選別機とは色を判別するセンサーによってお茶の中から白い茎などの部分や異物を、細かく見て選別する装置です。この機械の場合もお茶が重なって層にした状態では良い選別はできないため、お茶を薄く広げ一葉一葉分離して流すような構造になっています。その中で異物を発見し排除します。
原理的に能率は良くありませんし高価な設備ですが、美しいお茶に仕上るためにこれに変わる機械は無く、日本全国の製茶問屋さんでこの色彩選別機を使用していないところはほとんどないほどのヒット商品です。
一葉一葉ていねいに流しながら棒を取るように、火入れ行うことも同等の能率を得ることは可能であると考えました。
HOT-1はこの基本原理を生かした火入機なのです。
HOT-1独自の遠赤外線バーナーは炭火加熱の特性に近つけるため、電磁波である遠赤および近赤外線により内部まで熱を浸透させるだけでなく放射熱による表面加熱も同時に行っています。
加熱のイメージとしては、ほいろの上にお茶を広げ、(下からではなく)、上に炭火が置かれてお茶を照射している感じといえばおわかりになるでしょうか。


炭火の加熱イメージ

実際の構造はほいろではなくお茶はトラフ(バイブ)上で振動しながら移動します。本物の炭火では不可能な精密な温度コントロールとトラフ(バイブ)上に放射される温度ムラを独自の放射熱反射装置により排除しました。


赤外線バーナー加熱イメージ

私たちスタッフが理想の火入機の熱源として遠赤外線を選んだ理由がおわかりいただけたでしょうか。

現在考えられる最適の回答が、炭火に最も近く、かつ熱源として温度が安定している遠赤外線バーナーだったのです。

ただし、遠赤外線バーナーを単純に取付けるだけでは問題が生じます。バーナー本体の照射部は10cm位の幅を持つだけなので、トラフの中心部と両端では照射距離に違いが生じ、温度差が生まれてしまいます。当然トラフの中心部が熱く、両側の縁の部分は少し温度が低い状態になります。

そこで考えたのがバーナー全体を覆う熱反射板です。



一見するとただのカバーに見えますが、熱反射を利用し、トラフに照射される直接の輻射熱と、反射熱のトータル熱量がどこも同じになるように設計されています。

またバーナーには少量の空気を混合して理想の燃焼状態を作り上げています。
これにより最適な燃焼と最少の燃料消費率を実現しています。

HOT-1はこのような地道な技術が凝縮された火入機なのです。

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