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[書き起こし・要約]i-plug(4177) IRセミナー・質疑応答 2024.3.16開催

2024.3.16に開催しましたi-plug(4177)のIRセミナー&質疑応答の書き起こしになります。


登壇者名 代表取締役 CEO 中野 智哉 様

[資料]

IRセミナー

株式会社i-plug CEOの中野と申します。本日はよろしくお願いいたします。
CFOの阪田もおりますので、私から会社説明をさせていただいた後、質疑応答のときは内容に応じてどちらかが回答させていただきます。よろしくお願いいたします。

では、会社説明に入らせていただきます。まず自己紹介です。私は兵庫県出身ですが、大学は名古屋の中京大学に通っていました。天白区の塩釜口に4年間住んでおり、名古屋に帰ってくるとテンションが上がるタイプです。前職は、インテリジェンス(現 パーソルキャリア)で求人メディアの企画営業に携わっていました。

当時まだ求人メディアは雑誌で、コンビニで販売している時代にこの業界に入りました。その後、フリーペーパーに変わり、PC上のWEBに変わり、ガラケーに変わって、スマホに変わっていく、そういった変化を経験しました。その後、働きながらグロービス経営大学院で経営学を学んで、2012年にi-plugを設立しました。

会社概要


弊社のミッションは「つながりで世界をワクワクさせる」です。次の世代を担う若い人材の可能性を拡げる仕組みを作っていこうと、現在チャレンジしています。



会社の概要です。本社は大阪にあり、東京、名古屋と3拠点で運営をしております。現在グループ会社が3社ありまして、株式会社イー・ファルコン、株式会社pacebox、株式会社マキシマイズ、そしてi-plugの4社で運営しています。i-plugは単体で従業員280名、連結341名の会社規模になっています。

新卒採用市場とOfferBoxについて


ここからは新卒採用市場の特性と、その中で弊社が展開している「OfferBox(オファーボックス)」についてお話しします。

まずOfferBoxは、新卒領域に特化したダイレクトリクルーティングサービスです。まず学生がOfferBoxに自身のプロフィールを公開します。それを企業がOfferBox上で検索をして、学生に対して直接オファーを送るというサービスとなっています。従来は企業から求職者へアプローチする時は、人材紹介、エージェントを介して行うのが基本だったのですが、このようにインターネット上でダイレクトにアプローチできるというところから、ダイレクトリクルーティングサービスと言われるようになりました。

次に弊社がメイン事業で携わっている、新卒市場の動向について説明します。現在、新卒採用市場の規模は約1,400億円と予想されています。少子化で人口が増えていないため、新卒採用市場も拡大していないとよく思われるのですが、徐々に市場規模は拡大している状況です。その中でも、弊社が携わっているダイレクトリクルーティング市場は高い成長率となっています。


もちろん少子化は始まっていますが、私達のサービスは大学の卒業生、就活生が対象となっていますので、少子化の影響を受けるのは、実は今からになります。2019年に入学して、2023年から2024年あたりに卒業する世代から少子化が始まります。
ただ、大学の進学率は毎年上がってきています。実際に、大学生の数はまだ減少していません。今後も横ばいになると予測されています。また調査によると、大学生の民間就職希望者、いわゆる就活生の数は年々微増しており、毎年1,000人から5,000人ぐらい実は増えているというような市場環境にあります。

弊社のサービスをお伝えする上でかなり特徴的な、就職活動のスケジュールについて説明します。現在、就職活動をする時期は、基本的に大学3年生の3月からとなっています。毎年3月に広報解禁となり、就職活動が本格的にスタートします。広報解禁というのは、企業の採用情報を学生に伝えても良いということです。その後、4年生の6月から選考開始となります。面接をしながら内定先が決まっていき、多くの企業は10月に内定式を行います。その半年後、大学卒業と同時に会社に入社する、というスケジュールになっています。

以前は経団連が就職活動のスケジュールを提唱しており、基本的に大手企業はそれに従って活動をしていたのですが、現在、経団連はそういった指針は出していません。政府が企業に配慮するよう求める程度になっており、スケジュールは形骸化が進んでいるのが実態です。

一方で、労働人口の不足によって企業の採用意欲が上がっており、できるだけ早く学生と接触をしたいという動きもあります。3年生の3月より前の時期にも、学生と企業との接触がどんどん増えている状況です。接触の基本的な手段はインターンシップです。5日間程度の短期間から、1ヶ月以上の長期インターンシップなど様々なパターンがあり、この時期に学生・企業は活発に動いています。

基本的にはインターンシップの時期から本選考にかけての2年間で就職活動が行われていると思っていただくとわかりやすいと思います。これに合わせて、弊社はOfferBoxを提供していく形になります。

今、新卒採用市場の問題は大きく二つあります。
一つは学生と企業、両者間の関係です。当たり前ですが、ほとんどの学生はまだ働いたことがありません。大学で学びながら就職活動するので、自分がどういう企業に合うかわかりにくい。企業側も毎年採用はしているものの、多くの中から自社にぴったり合う学生を見つけにくい。こういった情報の格差が存在しています。どういう学生が企業にとって良いのか、どういう企業が学生にとって良いのか、なかなかわからないという「情報の非対称性」があるのが特徴の一つになります。

もう一つはマッチングの構造です。毎年約40万~45万人の大卒の就活生が一斉に就職活動をします。それに対して約3.5万社の企業が採用活動を行うので、年間の組み合わせは最大で140億通り存在します。その中から45万通りの決定が生まれます。決定効率は0.003%ぐらいと、非常にカオスな状況です。このマッチング構造の問題から混乱が起こっています。
この二つの問題が背景にあり、就職活動と採用市場というのは課題が多くあるのが実態です。

そのような中、弊社によく相談がくるのは、大きく3つのニーズになります。
1つ目のニーズは、知名度がない企業の採用です。例えばベンチャー企業、中小企業、比較的規模は大きいものの提供しているサービスがBtoBの企業、地方の企業など、知名度が低いので学生に認知されにくいというパターンです。

2つ目のニーズは、学生の人口割合が少ない分野の人材の採用です。例えばITエンジニア、データサイエンティスト、建築系、機械系、電気系などの学生との出会いが難しいというパターンです。

3つ目のニーズは、会社のイメージと採用したい人材のイメージのずれの解消です。BtoCの大手企業でもこのずれはあります。わかりやすい例を出すと、旅行代理店では、旅行が好きな学生のエントリーは多いです。しかし企業として欲しいのは旅行を企画をする人材です。
また、最近では、新しい産業分野に進出することもあります。例えば自動車メーカーが電気自動車の開発に乗り出す場合、ものづくりのエンジニアだけでなく、IT系エンジニアも採用したい。このように、会社のイメージと、採用のイメージのずれがあります。

OfferBoxのビジネスモデルには3つの特徴があります。
1つ目は起点の違いです。従来は学生が企業にエントリーする構造でした。これを、OfferBoxでは企業が学生にオファーを送る形に変えました。

2つ目は構造の違いです。学生が企業にエントリーする構造だと、とにかく一定のボリュームを集めて、確率論的にマッチングさせるということを行っていました。一方、OfferBoxでは個別最適化して、マイクロマッチングさせていくことを目指してきました。

3つ目は要所の違いです。確率論だと学生と企業、どちらも量が多くなければマッチングができません。OfferBoxでは小規模でもマッチングが提供できるように、サービスの要所を変更してきました。これが弊社のビジネスモデルの根底にある強みになっています。

OfferBoxでマッチングを実現するために、まず重要なのは学生のプロフィール情報になります。学生が企業にエントリーする従来の就活でも、社名だけだと学生はなかなかエントリーできません。どういった業種で、どういう仕事をしているのか、どういった職種を募集しているのか、というような情報が必要です。その起点が逆になっているので、学生はできるだけ自分のプロフィールを詳細に書いていくことが重要になります。
OfferBoxでは、所属大学・学部・学科、自分を象徴する写真や動画、自己PR、将来なりたい自分像、過去のエピソード、志望業界・職種、勤務地、保有資格・スキルなど、多岐にわたる情報を記載して、オファーを受けるという流れになっています。

さらに、マイクロマッチングを実現するために、詳細な検索軸を用意しています。プロフィールだけでなく、適性検査の結果からも学生を検索できるなど、多様な組み合わせを検索で生み出せる仕組みになっています。

その上で、できるだけ様々な学生と企業の組み合わせを生むために、あえてオファーの制限をかけています。オファーの一斉送信はできず、詳細なプロフィールを見ないとオファーを送れない仕組みにしています。


企業にはOfferBoxでの採用計画数に応じてオファー送信数の上限を設けており、学生のオファー承認にも上限を設定しています。さらに企業によく使っていただくためにも、学生とのコミュニケーションを個別面談からスタートしてもらっています。これらが、マッチングを最適化する仕組みとなっています。
現在、就職サイトの中でOfferBoxの企業利用率は業界内で3位となっております。

続いて、料金体系についてご説明します。OfferBoxには2つの料金プランがあります。
1つ目は本選考時期(大学3年生の3月以降)の成功報酬プランです。登録・利用は無料で、1人採用ごとに38万円の料金をいただきます。もちろん学生は無料で利用できます。内定辞退の場合は全額返金されるため、企業にとってリスクなく利用できるプランです。新卒採用にも人材紹介がありますが、成功報酬の平均単価が90万円ほどであることを考えると、かなり安価な料金設定となっています。
2つ目はインターンシップ時期から通年で利用する早期定額型プランです。こちらは映画の前売りチケットに似た料金体系で、1人あたりの単価は25万円に割引されます。例えば、3名分で75万円、5名分で125万円というように、予め利用人数を決めて契約します。この場合、最終的に採用人数が0人でも返金はありません。ただし、契約人数を超えて採用した場合は、超過分については成功報酬のプランに切り替わりますので、1名あたり38万円となり、内定辞退があった場合はその分が返金されます。
つまり、OfferBoxは決定人数が増えるほど業績が伸びるビジネスモデルとなっています。

就職活動が各学年2年間にわたって行われていますので、毎年、3年生と4年生が同時にOfferBoxを利用しています。例えば、2024年3月期の会計年度では、2024年卒業予定の学生と、その1学年下の2025年卒業予定の学生が同時に利用しています。この点がOfferBoxの収益構造の特徴となっています。

成功報酬プランの場合、内定が出ると契約を締結し、その月にすぐ売上を計上します。一方、早期定額プランの場合、契約時に例えば3名分75万円をいただきますが、一旦契約負債としてB/Sに計上し、そこから利用月に応じて売上に変換していきます。受注額の約73%は当期の売上に計上されますが、残りの27%は翌期の売上として、B/Sの契約負債に計上されます。キャッシュインが先にあり、売上は後に計上されていくため、事業上は安定的に経営しやすい構造になっています。


この影響から、売上高には季節性がかなりあります。受注が進んでいくと、売上は後ろ側に集中するため、第3四半期と第4四半期の売上が高く、第1四半期と第2四半期の売上は低くなるのが収益性の特徴となります。

最近では、OfferBox内に人材紹介サービスも搭載し、エージェントによるマッチングも行っていますが、まだ規模が小さいため、OfferBoxがメイン事業であると理解いただければと思います。

ここからは、OfferBoxのKPI進捗についてお話しします。
現在、登録企業数は17,227社で前年同期比26.1%増となっています。


学生登録数は、4年生は245,376名で前年同期比13.2%増、3年生は163,649名で前年同期比2.7%増となっています。


企業からのオファー送信数はかなり増加しており、4年連続で倍近く伸びているような状況です。


学生のオファー承認数も前年を超える成長で進捗しています。


最終的な決定人数は、第3四半期末時点で7,222名、前年同期比15.6%増となっています。

i-plugグループについて


ここからは、グループの成長戦略と現状についてご説明します。
創業して12期目になるのですが、10年が経った時に、創業当時よりだいぶ世の中が変わったと感じて、時代認識のアップデートを行いました。
今、日本が抱える労働市場の問題として、労働人口の減少が挙げられます。労働人口は現在の7,300万人から、2050年には5,200万人まで減少すると予測されています。一方で、事業のサイクルは短くなっており、事業の寿命と働く期間が逆転していっています。


人生100年時代を迎え、単純な「教育→就職→引退」という形ではなく、教育を受けた後、働きながら副業をしたり起業したり、または学び直しや転職をしたりするなど、様々なキャリアを通じて自分の人生を作っていく状況に変わってきています。一人一人のキャリアをより充実させるためには、新たな仕掛けが必要だと考えています。

ユーザーは、高校・大学での学びの時期があり、就職活動をして、その後社会に出てキャリアアップ・キャリアチェンジ、さらに転職や学び直しなどを通じてキャリアを作っています。その課題があるところに対して新しいサービスを提供し、日本の労働市場と、一人一人のキャリアをより良くしていきたいと考えています。

現在は大学生の就職活動支援にフォーカスしていますが、その前後、大学生の領域と転職の領域にもチャレンジしています。新卒採用市場のTAMから、若手・ミドル以上の転職、学び直しと、チャレンジできる市場規模を大きくしながら、成長していきたいと考えています。

現在、OfferBox以外にも、適性検査・アセスメントの「eF-1G」、若手の転職支援サービスの「PaceBox」、大学生のキャリア醸成を支援する「plugin lab」、食品業界に特化した就活支援サービスの「Tsunagaru就活」、学生の学びと成長を支援するキャリア教育サービスの「キャリア大学」、大学1、2年生向けインターンシップの「ALUMO」など、様々なサービスに取り組んでいます。



PaceBoxについては、この2年間チャレンジしたものの市場にフィットせず、2023年6月28日をもってサービスを終了することを発表しました。課題を見直し、再チャレンジを検討していきます。


eF-1Gは業界屈指の、幅広いパーソナリティを取得できるサービスとなっています。


Tsunagaru就活は食品業界に特化して、オンラインイベントを通じて学生と企業のマッチングを行うサービスです。


plugin labは、大学近くや大学内に、大学生がキャリアについて考えられるような空間を作っており、現在全国11ヶ所で展開しています。

業績推移



最後に業績推移です。昨年の連結売上高は37億4,100万円、CAGRは29.3%となりました。

PaceBoxへの大幅な投資により営業損失4億1,100万円となりましたが、今期は投資をコントロールし、営業黒字の回復を見込んでいます。
サービス別売上高は、OfferBoxが全体の約90%を占め、eF-1Gが約3億円となっています。


第3四半期の連結売上高は31億8,800万円で、i-plugが29億4,800万円、paceboxが1,900万円となっています。前年同期比では連結売上高が28.7%増となりました。先ほどお伝えした通り、PaceBoxはかなり苦戦していますので、一旦サービスを終了して、成長戦略を考え直して再チャレンジしたいと考えています。

以上、駆け足でしたが会社概要をご説明させていただきました。ここから質疑応答に移りますので、よろしくお願いします。

質疑応答

Q: 来期の四季報予想は、売上60億円、利益はほぼなしの予想ですが、OfferBoxの粗利率を考えると、再度かなりの投資が必要になると思われます。この四季報予想には、i-plug社の意向がある程度反映されているのでしょうか。

阪田:
私からお答えします。四季報予想は独自のものであり、当社の意向が完全に反映されているわけではありません。OfferBoxの利益率は、ご指摘の通り、かなり高いものがあります。以前開示した資料にも記載しましたが、中途事業の垂直立ち上げという方法が収益率を悪化させ、会社全体の赤字が2年間継続してしまいました。今後は、新卒事業の利益をしっかり出しながら事業展開を進めていく方針です。中途事業への大規模な投資はサービス停止に伴い一旦なくなるため、収益率は大幅に改善すると考えています。

Q: 複数の方から同様の質問をいただいています。PaceBoxのサービス終了について、事業が失敗した原因をどのように考えていますか。参入のタイミングやプロモーションなどに問題があったのでしょうか。

中野:
私からお答えします。参入のタイミングについては間違いではなかったと考えています。中期経営計画のローリングの際にもお伝えしていますが、企業と求職者の登録は順調に進み、現時点で企業は約1,700社、求職者は22,000名に達しています。この点では進捗が良かったというのが実態です。

企業のサービス利用意向は高く、受けが良かったのですが、問題があったのは求職者のインサイト、つまり本当に課題になっているところとサービスの構造にずれがあったことだと考えています。このまま投資を継続すると赤字が続く可能性があり、一旦サービスを止めて、求職者の本質的な課題にフィットするようなサービス形態にしていかないといけないという判断の下、撤退を決定しました。

Q: 資料17ページでは、OfferBoxが他社と比べて満足度が低いように見えます。その理由は何でしょうか。

中野:
まだまだ課題が多いというのが実態だと思っています。この4社比較のグラフは利用シェアに応じた比較になっています。過去との経年比較では、満足度は上がっています。継続して満足度を上げていくことで、シェアを拡大していけると考えております。

Q: 満足度の問題点について、もう少し詳しく教えてください。

中野:
満足度は、何人採用できたかというところだと思います。もう少し厳密に言うと、現在、企業の採用計画数に対して、学生数が40%不足するぐらいの量のバランスになっています。ですので、採用に至る直前の内定出しまでたどり着ければ、満足度は高くなります。弊社としては、決定人数を伸ばしていくことで最終的に満足度が上がっていきます。

新卒採用市場は就職ナビの大手2社が強い領域で、ここから出ている決定人数がかなり多い状況です。ただ、弊社は7,222名の決定人数を出していますが、この規模を出せているサービスは他にあまりありません。その点では、満足度は高いと理解していただければ良いかと思います。

Q: 社長自身のことをもう少し教えていただけますでしょうか。私たち世代は「やって苦手を潰していけ」というキャリアの積み重ね方をしてきたと思います。今後サービスを展開していくミドルエイジ、私たちの世代のキャリアと、社長自身のキャリアを重ねた時に「好き」が先なのか、「得意」が先なのか、どちらが先だとお考えでしょうか。

中野: これは私の主観になりますが、働くこと、キャリア自体が生きがいになるのが一番良いと思っています。生きがいについては、スペイン人が書いた『Ikigai』という本がありますが、その考え方が大好きです。鹿児島の奄美大島の人を取材して作られた本です。生きがいについて、好きなことをやる、得意なことをやるというのに加えて、ちゃんと稼げることと、世間から必要とされること。この4つが重なると良いと書かれています。そしてもう一つ、どこから始めても良いということが書かれています。

ただ、全部が揃うまで、深く取り組む必要があると私は考えています。自分のキャリアを振り返ると、実は、私はたまたまこの領域に入りました。当時は就職氷河期で、たまたまこの領域に入ったのですが、ものすごく好きになってずっとやり続けて、今に至っています。「好き」から始めるのか「得意」から始めるのかは人それぞれですが、私の場合は「稼がなければならない」から入り、今では全てが揃った状況になっています。そういうキャリアの作り方もあると考えています。

色々な選択はできるけれど、ジョブホッパーのようになるのではなく、やるからには徹底的にやる、という覚悟を持てるようなマッチングを生んでいくことが、良いサービスに繋がっていくと考えています。もちろん、入ってみて自分に合わなかったらすぐに変えるのも大事ですが、深く取り組むことも大事です。そのバランスを上手く取れるように、働く中での課題に対していろいろなサービスを提供していこうと考えています。

Q: 転職やマッチング業界における、現状の課題について教えていただけますでしょうか。企業側が求める人数と学生の人数のミスマッチや、学生がお金稼ぎのために仕事を選んでいるといった具体的な課題も含めて、お聞かせいただけますと幸いです。

中野:
とても深いテーマの質問ですね。身近なところから大きな構造的なところまで、いくつかの観点からお答えしたいと思います。
まず、就活生の世界で言うと、ほとんどの学生が、働いたり、社会人と話したりする機会があまりないため、仕事の楽しさなどを全くわからない状況で就職活動をしています。また、就職活動はすごく変で、会う時に「対面」します。就職活動は、本質的には将来一緒に働く仲間探しです。横並びで働くのに、会う時は対面する構造になっています。まずはここの認識から変えていかないといけないと思っています。
私たちが取っているアプローチは、もっと近くで、横並びになるようなコミュニケーションをいかに作るか。これがOfferBoxに込められたメッセージでもあり、なかなか真似できないところだと思います。これが一番身近な課題です。

もう少し広い視点で見ると、日本の教育事業は世界最高峰のレベルを持っており、高度成長期を支えた素晴らしいコンテンツだと思います。10年ぐらいの研究が教育に落とし込まれていくのですが、今は産業界の変化が速過ぎます。例えばChatGPTのような技術が出てきても、どうやって教育に落とし込めばいいのか。すぐに産業界に活かせるような教育が提供できないという問題があります。

また、大学の学部ごとの人数と、産業界が求める人材のボリュームにずれがあります。学んだことをそのまま産業で活かせない人が多数出てしまうという問題もあります。これが恐らく一番大きな問題で、政府も学び直しやリスキリングといった取り組みを始めています。アメリカ型のようなジョブ型雇用や、ドイツのように大学をほとんど専門学校のような形にして、キャリア教育を受けてから社会に出るというパターンもありますが、日本独自の優位性を保ちながら、教育業界と産業業界の結びつきを変えていかないと、根本的なところは解決しないでしょう。

最後に、転職回数についても課題があります。転職は3回ぐらいが上限、というような考え方がずっと残っています。5年間で3回転職すると、何かあるのではないかと思われがちですが、これは面接官との世代間ギャップが原因だと考えています。ただ、これは時間が解決すると思います。今の30代が40歳、50歳になれば、そこまで違和感はなくなってくると思います。

事業として解決していくところは、まず対面するのをやめ、良いコミュニケーションを取っていくことが、私たちがやっていくべきことだと考えています。

Q: 私は仕事柄、UIやデザインの仕事で企業のお手伝いをさせていただいています。今の学生は使いやすさや見やすさに慣れているという感覚があるのですが、OfferBoxの開発秘話や、工夫したり、こだわりを持った部分があれば教えていただけますでしょうか。

中野:
OfferBoxに関しては、私はUIの設計はできないですが、UXのイメージは持っています。コミュニケーションは、大事なところだけをやっていった方が良いと考えています。例えば、就職活動ではリアルに会った時、まず第一声は「自己紹介をしてください」です。そんなの事前に見ていればわかりますよね。そこでOfferBoxでは、プロフィールを詳細に書いてもらうようにしました。そうすると、企業は学生のことを知っているので、企業側から自己紹介が始まります。これは、ほかではないコミュニケーションの設計です。

また、OfferBoxはオファーを受け取るサービスです。学生がログインした後の画面はボックス、箱のようになっていて、オファーが届くとロゴが入り、最大15個までしか埋まらない構造にしています。アプリでプッシュ通知が来たら、ボタンを押すだけで、すぐにメッセージの内容が見られるようにしていたり、ログインして新しいロゴが表示されていたらそこを押すだけでメッセージが開いたりします。大事なのはメッセージが伝わることだと思うので、開封率を上げるような設計をしています。無駄を削ぎ落としていくと、コミュニケーションだけの世界になります。

オファー枠という発想は弊社が最初に取り入れたのですが、15枠と言っても、15個来たらその後一切受けられないわけではなくて、学生が辞退したり、選考を受けて落ちたりすると、追加でオファーを受け取ることができます。
何がしたいかと言うと、最終的に必ずリアルでコミュニケーションを取るので、その世界をインターネットに持ってこないといけません。ネット上ではデータをいくらでも送れますが、実際の世界とは全然違います。そのため制限をかけています。

私たちが望むのは、深く会話をして欲しいということです。企業数が多くなればなるほど、1社あたりにかける時間は少なくなってしまいます。それで企業を決めても、なかなか覚悟を決められないと思います。深い会話をして欲しいという思いをもとに、UXの設計をしているのがOfferBoxの特徴だと考えています。

Q: 御社のサービスはすごく魅力的だと思います。情報のミスマッチがなくなれば、採用後の離職率も大幅に改善されると思いますが、そういった数字は取っていますか。もしあれば教えていただきたいです。

中野:
離職率は取れていません。なぜかと言うと、私たちは学生にサービスを提供するので、一定期間はデータを保有していますが、その後は全て削除しています。そのため、私たちから学生に直接聞くことができません。
採用した企業はわかっているので企業には聞けるのですが、人事の方が社員の個人情報を第三者に提供はしてくれません。個別にインタビューしている事例はありますが、統計的なデータを取ることは過去何度かチャレンジしたのですが、ハードルが高く、できない状況です。

これは法律の問題でもあります。私たちの事業は「募集情報提供事業」という種別に該当しますが、別に「有料職業紹介」という種別があり、こちらの場合は1年後に調査義務が提供側と利用側の両方に発生しますので、データが取れるようになります。将来的に法律が変わり、国としても調査を進めていこうという流れになれば、データを取ることができるかもしれません。取れるようになるまでは、チャレンジし続けていきたいと思います。

Q: 御社のサービスを利用している学生さんの属性について、何か特徴はありますでしょうか。例えば、技術系の学生が多いとか、体育会系の学生が多いとか、そういった傾向があれば教えていただけますか。

中野:
文理や専攻といった属性の偏りは、あまりありません。現在、就職活動をしている学生の約半数が登録しているので偏りはなくなっているのですが、唯一の特徴としては地域差が挙げられます。大阪で創業し、その後、東京、名古屋に拠点を広げたこともあり、東名阪の学生の利用率が非常に高くなっています。中四国、九州、東北、北海道などの地域ではまだシェアが低い傾向にあります。この点については、私たちも戦略的に開拓する余地があると考えています。

ただ、単に地方の学生さんに都心の企業のオファーを流してしまうと、都市集中型の雇用を生んでしまいます。そうではなく、地元と地元、UターンやIターンの機会も提供できるはずです。エリアを越えた出会いの場を作ることはできるので、この課題も解決していきたいと思います。

Q: 資料14ページについて、OfferBoxにおいて学生の希望と企業のオファーが一致する割合と、学生の希望と異なる企業からのオファーの割合は、どの程度でしょうか。

中野:
全部とは言えないのですが、データ上でファクトとして見られるものに、志望業界と入社した先の業界の一致率があります。業界で見ると、約8割の学生さんが志望業界以外に最終的に入社されています。

Q: 企業側としてはOfferBoxのようなところから直接オファーを出したいというニーズが高いのだろうと思います。一方で、学生としては、複数のサービスに登録するのが一般的だと思います。その中で、OfferBoxはプロフィール作成などのハードルが高いのではないでしょうか。そうすると、そのハードルを乗り越えられる一定数の学生には企業からのオファーが早く届いて、残りの学生はマッチングが難しくなるのではないかと感じました。
学生側の視点で、企業に採用されやすくするとか、OfferBoxをもっと利用してもらうための工夫については、どのようにお考えでしょうか。

中野:
ご指摘いただいた通り、多くの学生は8~10個のサービスに登録し、その中で自分に合ったサービスを2、3個使い続けるという行動特性があると思います。もう一つ、実態として毎年約45万人の就活生がいます。そして、そのほとんどが就職しています。就職できないという人は、実はほぼいないのが現状です。

プロフィールがなかなか書けないというのは、初期の頃からよく言われています。でも、同じようなことはエントリーシートでも求められるので、書こうと思えば書けるはずです。ただ、何を書いたらいいのかわからない、自信がないという状況だと、書きづらいのは事実だと思います。そういったこともあり、サービス開始当初は、自分に自信がある高学歴の学生から利用が広がりました。

実際、プロフィールをしっかり書くと、ほとんどの学生に1社以上オファーが届きます。そういうことを知っていってもらうことで、今では多くの学生にプロフィールを書いてもらえるように変わってきたので、今後もこの流れが続けば、自ずと多くの学生が書けるようになると思います。現在、登録者の40%近くが口コミで広がっています。学生が友人や後輩に伝えるというのを繰り返していくことで、さらに利用が拡大していくと考えています。

私たちは、プロフィールに何を書くかというのは教えないようにしています。こういうことを書けば企業から注目される、というものはありません。人というのは多様なので、色々な経験を自分なりに書いていくことで個性を出せます。書き方を教えなくても利用が広がっていますので、これをもっと5年、10年と続けていけば、さらに裾野が広がっていくのではないかと考えています。

Q: i-plugは過去には営業利益が3億円ほど出ていました。PaceBoxの影響を考慮しても、OfferBoxの売上は伸びているものの利益が生まれていないように感じますが、その理由は何でしょうか。

中野:
利益率などの詳細はOfferBox単体では開示しておりませんが、昨年の中期経営計画のローリングの際に、事業の構造についてはお伝えしました。OfferBoxで得た収益を、OfferBox自体への再投資と、新しい事業への投資に充てています。

OfferBoxへの投資は、ほぼ全額が当期の費用計上となりますが、その収益が上がるのは翌期となります。そのため、投資をすればするほど、その期の収益率は下がってしまいます。その影響でなかなか見づらいというのがありますが、実際はOfferBoxの利益率が下がっているわけではないと理解いただければと思います。

Q: 先ほど、企業が求める人材と求職者のミスマッチが課題だというお話がありました。この課題を解決する手段の一つとして、ラーニングの環境を提供している上場企業との提携などは検討されたことがあるのでしょうか。

中野:
ラーニングの最大手は大学だと考えています。大学での学びをより良くすべきです。大学に対して大学生や親がすごくお金を出しているので、そこがすごく重要だと思っています。一方で、就職活動のためのラーニングは要らないと思っています。そこにお金を使う必要はありません。

ただ、今ないもので言うと、働くということに身近になる期間を早めに持った方がいいと考えています。例えば、大学1年生や2年生の時に、楽しそうに働いている社会人と会うことで、働くことへのイメージが変わるはずです。そういったものは作っていくべきだと思いますが、実現している会社はほぼないので、私たち自らが新規事業として、今チャレンジしているところです。

ラーニングは基本的には大学がやるべきことだと考えていますが、社会人になってから学ぶ場所はほぼ会社しかありません。社会人のラーニングの場所は、もっと増えていくべきだと思います。

Q: 早期定額型の料金体系は適正だとお考えでしょうか。受注から推測するに、早期定額型利用企業の多くは入社枠を使い切れていない、実質的にはオファー枠を買っているだけのように見えます。これは健全な状態なのでしょうか。オファー枠を減らしたり、金額を変更したりするなどの検討はしていますか。

中野:
現状、企業のリピート率や満足度を聞いていると、一定の適正さはあると考えています。正直なところ、費用対効果で他社より高いと言われるケースはほぼありません。最終的に採用枠を使い切れなかったとしても、コスト的には問題ないと思っています。

ただし、採用計画に対する適切な行動、つまりオファーを送信したり、学生と会ったりというのは、もっと良くする方法があると思います。現状、カスタマーサクセスという形で担当者をつけてサポートしていますが、そこでの改善は更に進められると考えています。

Q: 料金の値上げについては検討されていますか。

中野:
値上げについては、まだ検討していません。実際、値上げする余地はあると思います。安いと言われることが多いのですが、私たちが一番実現したいのはミスマッチの軽減です。そのためには、エリアを超えたマッチングが必要だと考えています。今、値段を上げると、地方の企業が利用しづらくなる可能性があります。日本全体に広げるということを最優先にしないと、プラットフォームの価値自体がなくなってしまうと思っています。

今、人口は日本中に散らばっていますが、大学生の約40%は関東にいます。大学が関東に集中していて、地方に行くと大学がない町もあります。そういうところでは、18歳から若者がほとんど流出してしまいます。彼らが戻ってこないといけない。これが各都道府県の地方創生の根底の課題です。

大学進学で多くの若者が都会に出ていくため、彼らを戻すためのサービスが絶対に必要だと考えています。まずは日本全体に広げることを最優先するほうが、最終的なサービス価値は上がると思います。

Q: 東京だけ特別料金とか「青森割」みたいなものは考えられませんか。

中野:
やろうと思えばできますが、新卒採用は多くが総合職という形で、勤務地が限定されていないことが多いです。「この人は青森」というように勤務地を指定して採用しているかどうかが分からないのが実態で、また意思決定者も東京に集中してしまっています。余地はありますが、今のところなかなか触りづらいと思います。

Q: 大手との差をどのようにお考えでしょうか。リクナビ、マイナビ、パーソルといったところとの差は詰まるとお考えでしょうか。

中野:
どうすれば大手との差が完全に詰まるかは明言しづらいですが、過去からの事実でいくと、新卒採用市場で、数十億円規模のサービスは生まれてきませんでした。2社の寡占で、ほかは入れないと言われていたところに、弊社のOfferBoxや、ワンキャリアといったサービスが生まれてきました。小さな改善の積み上げと、決定人数を伸ばすことで実行できるのではないかと考えています。

Q: OfferBoxで稼いだ利益を、新たな新規事業やM&Aに投資することは考えていますか。

中野:
中計で出していたOfferBoxへの再投資、新規事業への投資、M&Aへの投資という3つの方向性について、大きな変更は考えていません。ただ、PaceBoxへの投資は、私たちはすごく反省をしています。全然回収ができておらず、大いなる失敗だったと思います。投資に対してしっかり牽制、抑制をしていくのと、利益コントロールをして、再投資しながらも利益は成長させていこうと考えています。

Q: 現在の株価はどう評価していますか。OfferBoxは問題ないものの、新規事業がうまくいっていなくて株価が良くないと思っているのですが、株価についてはどう思っていますか。

中野:
単純にOfferBoxだけの収益性や規模感からすると、株価は高くついてもおかしくないのではないかと、投資家の方から言われることがあります。ひとえに経営陣への信頼がないということが、今の株価の原因だと思っています。しっかり計画を立てて実行するということを繰り返して、信頼を取り戻さないと株価は上がりません。実行して証明するしかないと思っています。

Q: 社長の座右の銘を教えてください。

中野:
私の座右の銘は「生涯前向き」です。前向きに生きていこうと思っています。

Q: PaceBoxのために仕事をされている28名は、サービス終了後どうなるのでしょうか。

中野:
基本的にはi-plugが主体になりますが、グループ会社に転籍という形になります。役割は今までとほぼ変更なく、グループ内のポジションに就いていただくという形で進めています。

Q: 成功報酬型は厳しそうだと思います。新卒採用をしている会社は、早い時期にインターンを今やっていると思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

中野:
成功報酬型が厳しいかどうかは、先々を見ないと分からないと思っています。現状3月からとしている利用開始時期をずらせば変わってくる可能性もあると思います。また、ほとんどの登録企業は成功報酬型から登録されているので、事業を伸ばしていく上でのキードライバーになっています。

インターンシップについては、私たちがサービスを提供していく中で市場に与える影響も大きいので、その在り方はしっかりと考えていかないといけません。ほぼ採用目的のインターンシップは、インターンシップではありません。インターンシップは日本語で「就業体験」です。本当の就業体験を「インターンシップ」にして、採用のためなのであれば「採用活動」で良いと思っています。そういった流れに持っていくことが重要だと思っています。

一方で、採用活動の時期が早くなったり遅くなったりするのは、景気の変動、需給のバランスで起こってくるものです。過去のデータを調べても、これ以上前にいくことはなく、ずっと3ヶ月くらいの間を前後しています。そこは自由競争に任せていくほうが良いのではないかと思います。採用活動の時期と、インターンシップとは別軸で動いていく方が良いと思います。

Q: 若い人の間でFIREが流行っていますが、そういう風潮はどう思われますか。

中野:
流行はどんどん出てくるものだと思っています。今は特に、短い時間でどれだけの情報や楽しみを得るかという流れになっているので、それによってツールはどんどん変わっていきます。反面、じっくり時間をかけるというのも増えていくと思います。そこはもう流行り廃りの話かなと思います。

Q: 人手不足を反映して、最近ではオファーの送信数が承認数よりも多くなっているように見えます。これが企業の満足度低下につながっているように思いますが、対策はどのようにされていますか。また、営業はどのようにされていますでしょうか。

中野:
オファーの送信に対する反応率、私たちはこれを「オファー承認率」と呼んでいますが、OfferBox内で下がってきています。他の新卒向けや転職市場のダイレクトリクルーティングサービスでも、今一斉に反応率が下がっている状況です。企業側からすると、より工数がかかるようになるため、満足度の低下につながると思います。新卒領域だけで見ると、OfferBoxの反応率は他のサービスと比べてまだ2倍から3倍以上ある状況なので、そこに関しては一定の満足はいただいていますが、対策を打っていく必要はあると感じています。

需給のバランスは市場の話なのでどうしようもないところがあります。一方で、良いマッチングというのは、企業と学生の相性の良し悪しの問題と、コミュニケーションのあり方の問題があります。
営業サイドの対策としては、使い方と使う時期をどんどん企業にインプットしていくことです。きちんとコメントを添えてオファーを送ると反応率が高いので、それを企業にしっかりやってもらうことです。また、プラットフォーム上でのターゲットのずれというのは、検索機能などの改善によって対応できるのではないかと考えています。

Q: i-plug社が従業員を採用する際に、一番優先していることは何でしょうか。

中野:
私たちが優先しているのは2つの点です。1つは、弊社のミッションやビジョンへの共感度です。もう1つは、そのミッションやビジョンに向かって自分がどれだけ変化できるかという点です。

良い方向への変化は成長につながります。ミッションやビジョンに向かって変化できるということは、会社にとっては成長していることを意味しますので、この2つを見ています。変化できる人というのは、基本的に自分のことをよく理解している人だと思います。他者から見た自分と、自分から見た自分にずれがあまりない人です。そのような点を大切にしながら採用しています。

Q: 今後、高校生の採用ニーズも上がっていくと思いますが、そのようなより若い世代へのサービス展開はあるのでしょうか。大学への進学率も下がっていくと思っています。大学へ行くより高卒の方がいいというニーズが増えてくるかもしれないという状況を踏まえての質問です。

中野:
現状は、一番ボリュームが大きい大学生の課題解決を最優先で取り組んでいます。高校生の領域については、最近上場が承認されたジンジブさんのような企業や、専門学校や高専の就職に特化したスタートアップ企業もあります。全部i-plugが解決しないといけないとは思っていません。そこは役割分担だと思っています。そのため、私たちは大学生の領域に特化してサービスを提供しています。

世の中に課題があり、私たちが取り組めそうで、さらに他の人では解決できなさそうである、という3つが揃ったところをやっていくと社内では決めています。高校生の領域については、代表的な4社が今チャレンジしているので、彼らによって課題解決されるのではないかと考えています。

Q: 26ページの内容についてお聞きします。早い段階で就職が決まる学生には特徴がありますか。また、早く就職が決まる学生は離職率に差がありますか。離職を調べることは難しいとのことでしたが、早く就職が決まる学生の特徴について教えてください。

中野:
離職率は先ほどお伝えした通り、データがないのでわかりませんが、早期に就職が決まる学生の特徴はいくつかあります。データ上で出ているのは、3年生の早い時期の方がオファー承認率が高いです。就職活動の後半になるほど、承認率は低くなっていきます。一方で、企業と会った後にその企業に入社すると意思決定する率は、就職活動の後半の方が高くなる傾向にあります。

早い段階から社会人との接点を持つと、大人っぽくなるので、企業からすると優秀に見えるようです。遅いと、学生らしさが目立ち、優秀そうに見えないことがあります。ただ、これは入社して1年ほど経つとあまり関係がなくなりますので、影響はそんなにないと思っています。一方、4年生になってから就職活動を始めると焦りがあるので、その状態で就職先を決めてしまうとミスマッチが発生しやすくなるのではないかという危惧はあります。

Q: 実際に入社した社員に対して、社長や役員の方々は、会社の方向性をどのように伝え、社員に同じ方向を向いてもらおうとしているのでしょうか。

中野:
まず、どれだけできているかという自己認知の話でいくと、課題があると思っています。構造的に難しい問題と、伝え方をもっと磨いていかないといけないという2つの観点があります。

創業から12年が経ちますが、毎期、従業員数が1.5倍から2倍のペースで増え続けています。2年前にいなかった人が半数というような状況になっており、人事機能が弱かったと思っています。ただ、現状そこはかなり強化しており、伝える場や成長の場を作っていっています。具体的には、年2回のキックオフを開催しています。また、役員からゼネラルマネージャー、グループマネージャーに伝えたり、一人一人が何をやりたくて、どういうことができるか把握したりするために1on1を実施しています。そして、それがきちんと実施されているかも把握できるように、人事機能を強化しています。

以前よりは改善できたと思いますが、まだまだ課題は大きいと思っています。

Q: 「これからはこの領域に伸びしろがあって、これが会社が大きくなっていきます」という話がないのが残念です。そういう話はしていただけないのでしょうか。

中野:
新卒領域や中途領域について、市場自体には大きな伸びしろがあると考えています。私たちがどこまで実行できるかと言うと、新卒市場に対しては、今のまま成長させられると思っています。中途領域については、会社として投資をしたけれど上手くいっていない状況ですので、再度仕切り直しだと思っています。今、無責任に上手くいくとは言えませんので、しっかりと準備して、然るべき状況を作ってからお伝えしたいと思います。

Q: ちょうど今、春闘の結果が出ていて、満額回答という数字が並んでいるニュースが出ています。これからは横並びではなく、給与を出せる企業はどんどん出していき、大手と中小の格差が広がっていきます。新卒にしても、賃金で競争する企業がたくさん出てくるという環境は、御社の事業にとってマイナスにしか思えません。大手が進もうとしている方向は、ビジネスチャンスを失う方向ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

中野:
二つの観点から見て、マイナスにはならないと考えています。
まず一つは、大手が給与に差を出すというのは、全社員に対して上げるという構造ではないと思います。会社にとって高付加価値の人材には高い給与を出し、そうでない人材には低く出すという形で、これは中途採用市場とほぼ同じ構造になっていこうとしています。そうなった時に、自社の採用ページに、職種ごとの給与水準を出すことはかなり難しくなりますので、個別にスカウトオファーを送るという構造になっていくでしょう。

もう一つは「お金をもらえるからこの会社に決める」という価値観はかなり変わってきています。やりがいを持って就職したい学生の比率はまだ少ないですが、過去よりは増えています。この二つを見て、また実際に学生の就職決定理由を聞いていても、マイナスになるとはあまり感じていません。

Q: 来期の業績や中期経営計画の達成で、市場の信頼を回復する自信はありますか。

中野:
具体的な数字をこのタイミングでお伝えするのは難しいのですが、回復をさせられる見込みは十分にあります。ただ、もっと先のことの期待をいただいているのだと思います。弊社はOfferBox一本足打法の会社なので、この収益の柱の成長はまだ実現できると思っています。一方、OfferBoxで得た内部留保を活用して、もう一本の新しい収益の柱を作れていないのも事実です。そこを作るような実力を持たないと、この先もっと大きな会社にはなれないと思っていますので、しっかりと鍛えていきたいと思います。

Q: 本日は皆様、たくさんのご質問をありがとうございました。最後に会場の皆様やオンラインの参加者の方々に、一言メッセージをお願いいたします。

中野:
今日は長い時間、ありがとうございました。私たちが掲げているのは、日本の労働市場が抱える本質的な課題の解決であり、非常に難易度の高いことだと思っています。実際この2年間チャレンジしたのですが、失敗してしまったということもあります。再度、経営としても仕切り直しをして、成長性にプラスして収益性もしっかり出しながら、世の中にインパクトのあるサービスを作っていきたいと思います。是非とも応援をいただければ嬉しいです。今日は本当にありがとうございました。