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容易い生活

私は一国の主人である。
私の国は最寄駅から徒歩15分。狭めの2Kの間仕切りを取っ払い、広めの1Kとして構えている。
少し駅から遠いためか、近辺の相場からしてみると安い賃料。徒歩1分のコンビニが夜の私を誘惑する。一面のアクセントクロスがチャームポイント。
国民は3名。猫と、犬と、ペンギン。
この国にいる時、私は何もかもから自由になる。
どんな悪事を働いたって咎めるものはいない。
夕飯がわりにヨーグルトを食べてもいい。風呂上りに服を着なくてもいい。冬に扇風機をつけてもいい。暗い部屋で漫画を読んでもいい。冷凍庫をアイスで埋め尽くしてもいい。
思想も、言葉も、寝食も、行動も、ここでは全てが自由だ。
私はこの国の主人なのだから。

この国は、私のものだ。
この部屋は、私だけのものだ。

思想は生活に根付く。そして私は自分の生活を愛している。
ただ、私の日々はまったく理想の暮らしとはかけ離れたものだ。掃除一般が苦手だし、生来の面倒くさがりで少し帰宅が遅くなっただけで自炊に対するやる気も削がれる。休日の万歩計を見ると27歩を記録していた。ウーバーイーツって、なんて画期的なサービス。コロナ禍だって怖くない。
それでもこの平穏で自分本意な日常がたまらなく愛おしい。
私と生活を匿ってくれるこの部屋が大好きなんだよな。

【今回のテーマ:部屋のこと】
【書いた人:よしお】



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先日海を見に行って大層感動したから(私が)

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