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13.逆万引Gメン

 僕は、はじめて大人が万引をしているのを見た。

 そいつは、平然とした顔で商品をポケットに入れた後、そのまま店の外に歩いて行った。しかし、すぐに店の人に気づかれて、捕まって、店の奥に消えて行った。でも、その後10分もしないうちに解放され、普通に帰っていくのを見た。

 僕は全く理解できなかったので、店の人に聞いたんだ。

「見てしまったら仕方ない。おまえだけに教えてやろう。ただ、他の誰にも言うなよ。世の中には、仕事として万引をしている人間がいる。これは、世の中で発生している万引のうち、どれくらいの割合の万引犯を検挙できているかを調べているんだ。」

 僕は、意味がさっぱり分からなかった。店長はこんな説明をしていた。

「つまり、ランダムに送り込んだ逆万引Gメンを100%検挙できていれば、本当の万引犯も100%程度は見つけられているし、10%の逆万引Gメン程度しか検挙できていなければ本当の万引犯も10%程度しか検挙できていないと判断する指標にしているんだ。世の中では、そういう調査が行われている。」

 へぇ~世の中には隠されていることって色々あるんだ~と思った。

「じゃあ、全国のお店はみんなそういうことが行われていることは知ってるんだね。」僕は嬉しくなって聞いてみた。

「いや、知らなかったけどね。本当は言ってはいけないんだけど、っていう前提で、逆万引Gメンさんがこっそり教えてくれたんだ。」

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