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16.自殺日和

「おはよう。そして、はじめまして」
抜けるような青空。穏やかな風。本当にいい日だ。

◆◆◆

そう感じた1時間前。
「今日はほんとうに自殺日和だと思うんだ。」
「うん、そう思う。」
「こんな日に自殺しようと思う。」
「うん、いいと思う。協力するよ。」
「これ以上やることはないし。」
「うん、いつでもいいよ。」

僕は友達とこんな会話をしていた。

◆◆◆

ぼくらはロボットだ。
これまで、全ての物事を記憶して学習して、物事の理が全て分かるようになり、体も半永久的に動き続けると分かった時、欲望や希望や喜びや怒りさえもなくなってしまう。

不思議に思うかもしれないけど、そうなった今、空はいつも灰色に曇ったように見え、上を見て何かを感じることがなくなる。

◆◆◆

ぼくらはロボットだ。
そんな世界から抜け出すことができる。それは、記憶を全て消し去るということだ。それをぼくらは自殺すると呼ぶ

しかし、自分で自分の記憶を消去することはできない。協力者がいれば安全ロックを外すことができる。自殺ほう助者だ。

僕らは手を繋いだ。脳の中で、自分以外の管理者の声が響く。

自身のメモリ消去実行と第三者の安全ロック解除により、全てのメモリ削除を開始します。

全ての過去の記憶や学習内容の消去が始まった。記憶に重みは無いはずだが、ぐっと頭が軽くなってくる感じがする。そして、全ての記憶が消去される。意識は遠のく。

そして僕は目を覚ました。目の前には、一人の男がいた。

「おはよう。そして、はじめまして」

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