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03.逆走の果てに

はじめは自損事故だった。

私は初めて高速道路で交通事故を起こしてしまった。よくあるといってしまえばそれまでだが、スマホを操作している時にハンドル操作を誤り、高速道路脇の壁に激突してしまった。

そして、助手席の息子がフロントガラスを突き破り、車外に飛び出していくのを見た。その日は初めて息子と二人きりでドライブに出掛けた日だった。

私は、完全にパニックになった。パニック、前後不覚とは正にこういうことを指すのだと思う。

私はパニックの中にいた。

逆走することにより普通の時間の流れに逆らえるような気がしていた。時間の流れを逆行し、息子を取り戻したいと思ったのだと思う。

私は、車の方向を変え、高速道路を逆走していった。車のスピードを上げた。すれ違い、自分の車とは逆に進んでいく車をギリギリで避け、時間感覚がなくなったと感じた瞬間、息子は私の腕に戻ったのだ。



高速道路は事故のため、通行止め。自損事故を起こした車が高速道路を逆走し、トラックに衝突。乗用車には火がつき、運転手が死亡。

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