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鑿壁読書 2022年の5冊

2022年に読んで印象に残った本を記録しておきます。


1)田中克彦『ことばと国家』岩波新書(1981)

母語と母国語の意味するところの違いや、言語の規範について考えるきっかけになりました。

「母国語とは、すなわち国語に母のイメージを乗せた煽情的でいかがわしい造語である。母語は、いかなる政治的環境からも切りはなし、ただひたすらに、ことばの伝え手である母と受け手である子供との関係でとらえたところに、この語の存在意義がある。」(41頁)

○ 関連して読んだ本
・田中克彦『国家語をこえて』ちくま学芸文庫(1993)


2)山口仲美『日本語の歴史』岩波新書(2006)

広範な日本語史の内容を、時代ごとの特徴に沿って紹介してくれる本です。この本をきっかけに、2022年は日本語史の本を多く手に取りました。また、東洋文庫ミュージアムで開催された「日本語の歴史展」にも足を運び、『日本語の歴史』に登場する多くの史料を見ることができました。

○ 関連して読んだ本
・山口仲美『日本語の古典』岩波新書
・金田一京助『日本語の変遷』講談社学術文庫
・亀井孝ほか編『日本語の歴史1』平凡社ライブラリー(2006)
・亀井孝ほか編『日本語の歴史2』平凡社ライブラリー(2007)


3)石田ゆうすけ『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』幻冬舎文庫(2007)

3月に「旅行がしたい」と思いたち、旅に出たくなる本だろうと思い入手しました。筆者は自転車で南北アメリカ大陸、ヨーロッパ、アフリカ、アジアと各地を旅するのですが、そこで出会うその土地に住まう人とのやり取りが胸に染みました。勢いのある筆力で、あっという間に読んでしまった一冊です。

○ 関連して読んだ本
・近藤史恵『スーツケースの半分は』祥伝社文庫
・北杜夫『どくとるマンボウ航海記』新潮文庫


4)野田サトル『ゴールデンカムイ』ヤングジャンプ・コミックス(2015-2022)

ゴールデンカムイに関しては、内容3割、思い出7割といったところ。漫画を全巻通して読むなんていつ以来でしょうか。元々、なにかのキャンペーンで電子版が無料で読めたのですが、そのときは1巻だけ読んで「こういう話なのか」と面白い設定があるもんだと思っている程度でした。夏になって周りの人たちが、ゴールデンカムイ展なる催事に盛り上がっているのが目につき、東京のネットカフェで読み始めたが最後、夢中で朝まで読んでいたのでした。
3月に北海道を訪れていたり、日本語史の中でアイヌ語に触れていたりと、なにかと縁のあった漫画でした。そうそう、結局、京都のゴールデンカムイ展にも足を運びました。


5)鈴木雅子『デンマーク語のしくみ』白水社(2017)

デンマーク語の発音資料を作るにあたり、最初に手に取った本です。難しい用語の登場なしに読むことができるのが「〇〇語のしくみ」シリーズのよいところ。巻末の文献紹介も助かりました。
そしてこれをきっかけに、外国語学習の道筋を見つけられ、ノルウェー語、スウェーデン語と、北ゲルマン語群へと手を広げていくことになりました。

○ 関連して読んだ本
・東京外国語大学語学研究所編『世界の言語ガイドブック〈1〉ヨーロッパ・アメリカ地域』三省堂(1998)


○ 今年読んだ本はどのようなものが多かったのか

NDC別 読んだ本の冊数

今年読んだ本を、NDCで分けてカウントしてみました。全56冊のうち23冊が言語分野で、関心の高さがうかがえますね。
あとは、文学作品では、森見登美彦の作品が6冊でした。『四畳半神話大系』を皮切りに、『四畳半タイムマシン・ブルース』、『ペンギン・ハイウェイ』も読みましたし、糺の森の古本祭りにも行ってきました。

2022年の読書を振り返ると、本をきっかけにあちこちへ出掛けることが多かったなと感じます。2023年は果たしてどんな体験が待っているでしょうか。

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