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初っ端からしばかれる

9月21日はショーペンハウアーの命日らしい。せっかくなので、その著作に久々に触れてみようと思いました。岩波文庫から出ている『読書について』(斎藤忍随訳)は、本読みならば、一度は手に取っているのではないでしょうか。

「『読書について』か。読書法とか書いてんのかな」

なんて思って読んでみると、いきなり頭をはたかれます。

 数量がいかに豊かでも、整理がついていなければ蔵書の効用はおぼつかなく、数量は乏しくても整理の完璧な蔵書であればすぐれた効果をおさめるが、知識のばあいも事情はまったく同様である。(p.5)

冒頭から、多読に対して苦言を呈するような言葉。反論を許さぬような、厳しい物言いですね。

岩波文庫でのタイトルは『読書について』ですが、このほか、「思索」「著作と文体」の2篇が収められています。全部読み返すのは手間なので、付箋を貼っていた場所をめくってみると、内容はすっかり忘れていたんですが、はっとさせられるようなことが書いてあるんですね、これが。

 読み終えたことをいっさい忘れまいと思うのは、食べたものをいっさい、体内にとどめたいと願うようなものである。その当人が食べたものによって肉体的に生き、読んだものによって精神的に生き、今の自分となったことは事実である。しかし肉体は肉体にあうものを同化する。(p.137)
 世間普通の人たちはむずかしい問題の解決にあたって、熱意と性急のあまり権威ある言葉を引用したがる。(p.19)

…………!! これには返す言葉がありません。

おわり


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