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鑿壁読書 2020年の10冊

今年印象に残った本を読んだ順に紹介します。

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1)黒田龍之助『はじめての言語学』講談社現代新書(2004)
「ことば」に関心を持ったので読みました。なにより興味を惹かれたのはその文体です。リズムがよくてすらすら読めちゃうんです。そのうえで内容はしっかりしている印象。入門書として言語学の扱う範囲や、誤解してしまいそうなポイントがきちんと説明されています。そして、この本に出合っていなければ著者に関心を持つこともなく、noteを始めることもなかったでしょう。

関連して読んだ本
a)加藤重広『言語学講義』ちくま新書
b)黒田龍之助『大学生からの文章表現』ちくま新書:実際の大学の講義をもとにして「面白い文章」の書き方を教えてくれる本。noteを始めるきっかになりました。


2)茨木のり子『詩のこころを読む』岩波ジュニア新書(1979)
茨木のり子がほかの詩人の作品を紹介していく本です。茨木のり子の詩がもともと好きで、「自分の感受性くらい」や「疎開児童も」といった詩では、こちらの背筋がのびるような、鋭いまなざしを持っていそうな印象でした。しかし、この本での茨木のり子の語り口は柔らかで、母親のような深さを持っているからこそ、ああいう詩を生み出してきたんだろうなと思いました。

関連して読んだ本
a)茨木のり子『倚りかからず』ちくま文庫:一部が合唱曲になっています。松下耕作曲の混声合唱とピアノのための「四つの断章」。


3)アーネスト・ヘミングウェイ、大久保康雄訳『誰がために鐘は鳴る(上・下)』新潮文庫(2007)
本を読むのが苦手な私が2か月近く書けて読み切った本です。2年前に購入したときに挫折したのですが、ペンを片手に再挑戦し、見事読了となりました。作品の内容もよかったのですが、海外の長編小説を読み切る自信をくれた一冊です。

関連して読んだ本
a)ヘミングウェイ『老人と海』新潮文庫
b)三宅香帆『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』笠間書院


4)辻村美月『ツナグ』新潮文庫(2012)
故人と一晩だけ会わせてくれる使者「ツナグ」。一度しかないチャンスにどうするのか。読書だからこそできる体験を通して、他者との関係を見直すきっかけになりました。


5)森見登美彦『恋文の技術』ポプラ文庫(2011)
『夜は短し歩けよ乙女』で森見ワールドに引き込まれてしまって、運よく選んだ2冊目が本作です。手紙のやり取りのみで話が展開していく「書簡体小説」の技法に驚き、そして私も他人に手紙を書きたいと思わせてくれました。

関連して読んだ本
a)森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』角川文庫
b)三島由紀夫『三島由紀夫レター教室』ちくま文庫:この本をきっかけに三島由紀夫に手を伸ばすことになりました。次に読むことになったのは『不道徳教育講座』。


6)鷲田清一『「待つ」ということ』角川選書(2006)
臨床哲学とはなんぞや。内容は難しいところが多いんだけれど、実際の問題に近いことを言っているところもあり……。カウンセリングとまではいかないけれど、一個人として他者を受け止める難しさを感じました。そして、私がのちに河合隼雄の語る心理学を受け止めていく下地になったのです。

関連して読んだ本
a)鷲田清一『「聴く」ことの力』ちくま学芸文庫
b)河合隼雄『ユング心理学入門』岩波現代文庫


7)小川洋子『物語の役割』ちくまプリマ―新書(2007)
Twitterで本書のよさげな引用がされていたので読んでみました。高校時代に「音楽なんて必要ない」と言われたショックを払拭してくれました。

関連して読んだ本
a)梨木香歩『西の魔女が死んだ』新潮文庫
b)小川洋子『博士の愛した数式』新潮文庫
c)小川洋子、河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』新潮文庫


8)河合隼雄『ユング心理学入門』岩波現代文庫(2009)
ユング心理学への興味はそれほどなかったものの、序盤にある、筆者がカウンセラーになるまでの経緯に興味を惹くものがありました。が、「文庫本に1,000円も出せないよ」と思ってしばらく本屋で眺めるばかり。4か月目にしてやっと購入するのですが、以降、河合隼雄の著作をこれほど読むことになるとは思いませんでした。

関連して読んだ本
a)河合隼雄『心理療法序説』岩波現代文庫
b)岩宮恵子『生きにくい子どもたち』岩波現代文庫
c)河合隼雄、谷川俊太郎『魂にメスはいらない』講談社+α文庫


9)ヘルマン・ヘッセ『デミアン』新潮文庫(1951)
信長貴富作曲の「くちびるに歌を」を口ずさんでいたとき、ヘッセの「白い雲」にも曲がつけられているのを思い出しました。それから高橋健二編集の『ドイツの名詩名句鑑賞』を経て、『デミアン』を読むに至りました。内容を読んでびっくり。夢や個性化の話が直接的ではないけれども出てきたのです。調べてみるとヘッセはユングの弟子に治療を受けたり、ユング自身とも交流があったようです。点と点が線でつながったような体験をさせてもらいました。

関連して読んだ本
a)高橋健二『ドイツの名詩名句鑑賞』郁文堂
b)ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』新潮文庫
c)ヘルマン・ヘッセ『地獄は克服できる』草思社文庫
d)ラルフ・フリードマン『評伝ヘルマン・ヘッセ』草思社


10)山本貴光『マルジナリアでつかまえて 書かずば読めぬの巻』本の雑誌社(2020)
読書の楽しみ方を広げてくれた本です。本へ書き込むことへの抵抗も減りました。

関連して読んだ本
a)フランツ・カフカ『変身』新潮文庫:グレーゴルの姿を絵にかいてみよう。
b)藤田節子『本の索引の作り方』地人書館:索引の重要性、検索との違いが勉強になりました。

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