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Mr.D

スラムの中とは思えない、立派な構えの家の門の前に立ち、バックスは一呼吸おいた。
門番はいない。
意を決して門を開き、中庭を通っていく。あたりは静かで、人気がない。
家の中に入る扉にノックする。
「入れ」、と、野太い声が聞こえた。
--黒人少年ギャングのボスか。いったいどんなヤツなんだろう。少なくとも腕っ節はすごいだろう。何かドジったら、帰れんかも知れんな。
覚悟を決めて、バックスは中に入った。
薄暗い部屋の奥の怪しい装飾の施されたソファーに腰掛けている人物がうっすら見える。
「掃き溜めにおっさんか・・・」。また野太い声だ。
--また、おっさんか!もう十分だ!オレの堪忍袋も限界がある!バックスは先ほどの弱気をもう忘れていた。
「オレはおっさんじゃない。まだ33才だ!」
「十分おっさんだろ?」そう言って、Dは笑った。
「君は何才だ?」
「まだ18だ。」
「くそっ、18と比べられたら、誰でもおっさんさっ」
またDは笑った。
「面白いおっさんだな。話は見張りのジョーから聞いている」
--やはり、連絡を取っていたのか。それならDの家を案内してほしかったぜ。
「で、オレになんの用だ?」
威圧感はあるが、なんだか受け入れる抱擁間があり、妙な気分だ。ボスは何か余裕があるもんだな。
「Dr.Dを知っているだろう?」
「ああ、あのじいさんか。だいぶ世話になってるよ」
--世話になっている?Drは何で少年ギャンググループに肩入れを・・・?
「世話になっているって、具体的にはどんな?」
「ああ、じいさんは学校やらNPOやらにだいぶ寄付してくれてな。オレの妹もその学校に通っている」
「そうなのか。寄付をしていたのか。なるほどな。」
--DrはDとそんな関係だったのか。
「白人の割にはだいぶ話の分かるじいさんだったぜ。感謝はしている。で、Drのことで何なんだ?」
「実は、Dr.Dは・・・、死んだ。いや殺された。爆弾でな」
今までソファーによりかかって不動だったDが身を前に向ける。
「なんだって!?マジかよ!?殺されたって、誰に?」
「それはまだ分かっていない。Mr.D、Drからグラサンをもらったろう?」
「???グラサンはもらったが、それと何の関係がある?」
「いや、そのグラサンが元で殺されたのかも知れない」
「・・・訳がわからないな。ただのグラサンだぜ。ゲームはできるが。」
「オレも詳しくは分からない。ただ君がDr.Dと同じ名前のDだから、何か知っているかと」
「・・・悪いがグラサンには興味が無くてな。しかし、Drの死に関係があるなら・・・」
「何かDrから聞いていないか?詳しく教えて欲しいんだ。」
バックスは歩み寄りながら、問いかけた。
--その時!
「ヘイ!元気そうだな、くろんぼ!」
背後の扉から大きくわめく声が聞こえた。
驚いて振り向くと、ジョーと白人の少年が入り口に立っていた。
白人の少年は銃を構えている!

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