見出し画像

トラックメイカー難聴レポート2023

自己紹介と最速まとめ

Kabanagu(かばなぐ)と申します。
1998年生まれ、神奈川県横須賀市出身のシンガーソングライター兼トラックメイカー。

個人活動と並行し、友人らとPAS TASTAという6人組制作ユニットも組んでいる。

作詞・作曲・歌唱・編曲・ミックス・リミックスを行っている。過去の仕事や詳細は公式サイトへ。

2023.08.25に突発性難聴を発症し、左耳の高音域がガクっと聴こえなくなる。
自宅での投薬治療の後、3軒目の病院にて1週間入院。
高気圧酸素治療とステロイド点滴により無事回復し、2023.09.09退院。

治療中に毎日更新していたメモをそのままレポートとして公開しています。全5500字程度。

前提

もともと並行作業が苦手なので仕事の数を絞って1件ずつこなしていくスタイルだったが、所属ユニット活動に関する諸々・次回個人アルバム制作用の資金作りを立て続けに行い、

1月~5月
  PAS TASTA アルバム共同制作
  PAS TASTA 初ワンマンライブの監督+準備
5月~8月
  個人仕事 7件
  趣味制作(ボカコレ) 1件

というスケジュールになってしまった。
自分はミックスまで含めて作業&納品するため、どの案件も最終盤の詰め作業ではヘッドホンでの爆音作業を行っていた。

ここ数年間、ヘッドホンで長時間の作業を行った場合は翌日・翌々日まで休息を取るようにしていたが、5月~8月は時々休息を取らず作業を続けてしまっている日があった。

症状に関係しそうな嗜好品情報:
煙草 → 禁煙済
アルコール → 一切飲まない
カフェイン → 作業のピーク時は高頻度で摂取


-- 余談

先輩であるtofubeats氏が2022年に"トーフビーツの難聴日記"という本を出版しており、これを読んでいたおかげで初動の諸々を落ち着いて進められているなと感じる。本当にありがとうございます。

現役でがっつり音楽をやっている人間による日本語の突発性難聴レポートはまだあまりネット上に多くなく、自分も後続の為に何か役に立てたらと思いこれを書いている。

突発性難聴の治療には今のところ確立された方法はないので、こちらのレポートはあくまで一例として捉えてください。
発症から治療開始までが早ければ早いほど回復率が上がり、2週間~1ヶ月放置してしまうとそのまま聴力が固定されてしまう病気です。
少しでも違和感があるならば当日・翌日朝イチで耳鼻科に向かうことを心から強くおすすめします。

突発性難聴に関する一般的な検査を一通り行うと、保険適用で4000円程度だったはず。参考までに。


0825 (発症1日目)

最新曲をリリースし、
直近で受けていた全ての仕事がようやく片付く。

自宅のスピーカーの聴こえ方が若干だけ違う気がしたが、部屋の片付けをしたばかりだったのでスピーカーの補正機能を再度やり直さねばと思っていた。
約束していた友人の家に向かい、宿泊。

0826 (発症2日目)

某公演に向けAirPods Pro2にてDJ用の選曲を行っていたところ、左耳の超低域(50hz以下辺り)に違和感を覚える。

どの曲を何度聴いても変わらず、最速で行ける耳鼻科を調べる。

0827 (発症3日目 治療1日目)

日曜昼から開いている耳鼻科Aへ。
低域に違和感があることと音楽を本業にしていることを伝え、一通りの検査を済ます。
聴力検査の結果、どの帯域も"難聴"ではないと伝えられる。
耳鼻科で検査できる最低周波数が125hzで心配だったのだが、仮にそれ以下の周波数帯に問題がある場合は125hz近辺も多少下がるとのこと。

検査結果のグラフを見せられたが、とにかく難聴ではないと言われたことに安心しすぎて詳しい見方などをこちら側から全く質問していなかった。
念の為、メコバラミンと五苓散を10日分ずつ処方される。

耳の様子が変だという感覚は確実にあり、薬を飲み切るまでは休養を取るべきとのことだったので某公演の出演キャンセルを考え始める。

0828 (発症4日目 治療2日目)

友人の家から帰宅。
聴覚を意識しすぎたせいか、夕方頃に先日よりも強い違和感を覚える。
改めて自宅制作用のモニターヘッドホンでサイン波を出しながら各帯域をチェックしていると、

右 1000 左 3000 左 5000 左 8000以上

が明確に聴こえにくくなっていることがわかった。作曲からミックスまで全てを一人で進める自分にとってこれは致命的すぎる。
評価の高い別の耳鼻科を改めて検索する。

(あくまで簡易的なセルフチェック用ですが、自作のサイン波スウィープを共有しておきます。)
https://www.dropbox.com/scl/fi/9himy94q9jcu6k2zbnpap/2023-03-07_hptestsweep_15to22k.wav?rlkey=5gbh4s9wma2p6fa872autqv3r&dl=0

音楽一本で一生やっていく覚悟だったので、絶望感で頭が回らなくなった。

0829 (発症5日目 治療3日目)

朝イチで耳鼻科Bへ。
こちらでも音楽が本業であることを伝え、それを踏まえて再検査・確認をしてもらう。

聴力検査と診察の結果、
・本来の"難聴ライン"には確かにまだ達していないこと
・元々平均よりも高い聴力を持っていたこと

が判明。検査結果のグラフについて諸々質問をしたところ、特に8000hz以上の帯域で左右20db程の差が出ていることがわかった。

定期的にサイン波でのセルフチェックは行っていたので、今までずっとこれだけの差が出ていたとしたらもっと早く気付けていたはずで、ここ数日間で聴力の低下が起こっているとみなされ突発性難聴の診断を受ける。
「ここまで下がると音楽制作では致命的だね」と医者に言われ、きちんと理解されていることにありがたさを感じる............

耳鼻科Aでの処方に加え、耳鼻科Bからステロイド系治療薬のプレドニンが追加処方される。

某公演の出演キャンセルを決め、告知。
同時に音楽関係者からの情報を募集。

0830 (発症6日目 治療4日目)

まだ特に変化を感じない。
Twitter & Instagramで音楽関係者に向けて情報募集をしたおかげで、毎日様々な方から情報や体験談が届いており本当にありがたい。

中でも ・左耳ほぼ聞こえず ・右耳も半分ほど まで聴力が落ちたが回復できたという音楽家の方からの治療レポをいただき、同病院に速攻で電話をかける。明日朝イチで紹介の総合病院へ向かってみることに。血中のヘモグロビンと酸素の結合率を上げる"高気圧酸素治療"があるらしい。

(刺青が入っている場合は受けられない治療らしく、その他にも様々な条件があったので検討している方は一度検索してみてください。)

高気圧酸素治療

これで3軒目の病院になるが、後続の為に書いているこのメモが医者への状況説明にも使えることに気付いた。便利。

0831 (発症7日目 治療5日目)

西横浜国際総合病院へ。ここまでのメモを見せる。
検査の結果、左右差はまだまだ致命的な範囲ではあるが、投薬により耳鼻科Aでの初回検査時より僅かな改善がみられた。

ただ絶対に後悔を残したくないので、試せることは全て試すため1週間の入院治療を決定。今まで経口投与していたステロイド剤を点滴に変更し、それと同時に高気圧酸素治療を行うことに。
ただ現状病床の空きがないこと、また既に投薬の効果が出ていることから、9/2からの入院となった。

0901 (発症8日目 治療6日目)

とにかく栄養を爆摂りし、とにかく寝た。

0902 (発症9日目 治療7日目)

入院1日目。
初日から点滴と高気圧酸素治療を開始。
耳を使わないコンテンツしか楽しめないので本を何冊か買ってきたが、左腕に常時刺さっている点滴チューブが思った以上に不快で中々読む気になれず。

メインの目的である1回80分程度の高気圧酸素治療は、開始・終了時の15分間で気圧の変化が発生するため展望台へのエレベーターのような絶妙な不快感が続いてつらかった。個人差もあるだろうが気圧が安定するまで耳抜きを3~5秒毎くらいずつし続ける必要があり、身体と気持ちが落ち着かない。

簡易概要
  服用薬
    メコバラミン → 末梢神経修復
    五苓散 → 余分な体内水分の排出
    アデホスコーワ → 血流改善
    ラベプラゾール → 胃酸抑制
  点滴
    アルプロスタジル → 血流改善
    アデホスLコーワ → 血流改善
    デキサート → ステロイド

0903 (発症10日目 治療8日目) 改善a

入院2日目。
やっぱり点滴に慣れない!
特に血流を良くする薬剤の注入中は常に左腕全体がじわじわと熱く痛く、全ての処理能力をそこに持っていかれる。何にも集中できない。

2回目の高気圧酸素治療。
耳抜きの手助けとして飴の持ち込みを勧められるのだが、中にいる間は何もできなさすぎて暇なので明日はガムに変えてみようと思う。

ステロイド剤の投与自体はもう6日目で、平均1週間ほどで効果が出ると聞いていたので、意を決してサイン波でのセルフチェックをしてみることに。
本当は毎日チェックするべきだったが、もし変化がなかったらどうしようという恐怖で中々試す気になれなかった。

結果、左耳8000hz以上の帯域が明らかに回復し始めていた!
発症段階では眉間を中心として右側50cmくらいのところで聴こえていたサイン波が、右目尻の辺りまで近付いてきた。大興奮。
セルフミックスまで含めた音楽活動を続けていく上で、致命的なゾーンはもう既に抜けられたような感覚がある。

きちんとした聴力検査で診断結果を出した訳ではないのでまだ油断はできないが、とにかく主観上である程度効果が出ていることの安心感により元気を取り戻してきた。生活に現実味が戻ってくる。

0904 (発症11日目 治療9日目) 改善b

朝イチで病院の聴力検査。本当にどきどきした。
結果、8000hzの20db差が5db差まで減っていた!昨日のセルフチェック時よりも良くなっている感覚がある。全てに感謝しかない。おれまだやれます!

まだぶり返す可能性もゼロではないので、入院最終日まで順調に回復しきってみんなに笑顔で報告したい。

3回目の高気圧酸素治療。ガムが正解でした。

0905 (発症12日目 治療10日目)

毎日朝から昼に行われる、血流を増加させる点滴がつらくてつらくて・・・
人によっては全く痛まないこともあるらしいが、自分の場合は幼少期の成長痛を倍くらい鈍くしたような痛みが点滴中と点滴後数時間続く。身体を少し動かすだけで左腕に爆痛が走るので本当に何も出来ないし、毎日夕方くらいまで痛みにしか脳がフォーカスできず精神的にかなり参ってしまう。

4回目の高気圧酸素治療。

0906 (発症13日目 治療11日目)

耳の調子が良くなってきたことで精神に余裕ができ、その余裕が点滴の痛みをがっちり捉え続けていてやばい!もう点滴のことしか書くことないかも!

5回目の高気圧酸素治療。

0907 (発症14日目 治療12日目)

点滴が T_T
6回目の高気圧酸素治療。

0908 (発症15日目 治療13日目) 改善c

7回目の高気圧酸素治療の後、聴力検査。
0903で改善されていた高域は更に回復していて、かつ125hz近辺の聴力レベルも上がっていた!

つまり、初日に感じていた左耳50hz以下の違和感も突発性難聴によるものだったらしい............

0909 (発症16日目 治療14日目) 結果

入院最終日。
8回目の高気圧酸素治療と、点滴・検査・診察。

〇=右耳 ‪✕‬=左耳
(それぞれフロアノイズの異なる別病院での検査なので
左右差と帯域バランスのみ見ていただければOKです)

8000hz部分だけにごく僅かな差があるが、
今回の治療によって全帯域がフラットな状態に変化したことから、これはおそらく発症前からの状態だったのだと思う。完治といってよいでしょう。

全てに、ありがとう。


あとがき

自分の場合は高気圧酸素治療によって初めて明確な改善を感じたので、耳鼻科Aでの"難聴ではない"という診断をそのまま鵜呑みにしていたらステロイド剤すら投与されず治療が終了していた。

おそらくここで終わらせていたら今回の難聴はここまで回復せず、残りの人生で後悔し続ける結果になっていたんじゃないかと思う。
今あなたが聴力に関して何か少しでも違和感を感じているならば、何軒回ってもよいので、自分が納得できる治療法を提示してくれる病院を見つけてほしいです。

今回の突発性難聴とそれによる入院によって音楽活動に対しての考えを改める機会になり、次回アルバム制作に向けてのモチベーションも高まってきました。
身体の様子を見ながら少しづつの再開にはなりますが、また改めて音楽制作に励んでいきます。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

応援してくださっている皆さまへ

応援のメッセージや病院情報など、本当に色々とありがとうございました!精神的にもすごく不安定になっていたので、大変励みになりました。
支援方法に関して色々質問をいただいたので、まとめてお答えさせていただきたく............!

直接的な金銭&物資の受け取りは流石に申し訳なく、自分にとって一番ありがたいことはやはり作品を聴いてもらうことなので、

・アルバムを改めて聴き直してみる
・知人やフォロワーにおすすめしてみる

などの形で応援していただけるとうれしいです。
(現在配信サービスの再生収益が毎月の基本収入になっています............!)

普段の告知をRTしていただくだけでも今後の仕事に繋がったりするので、無理のない範囲で長く応援し続けていただけたらと思っています。

これからもどんどん進化し続けていくつもりなので、お互い元気に生きて、またあなたのことを楽しませたいです。いつもありがとう。

Kabanagu

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?