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作家の人たち 倉知淳著 幻冬舎文庫(令和3年6月発行)

この作家さんとは「星降り山荘の殺人」で、完膚なきまでに「やられて」以来のお付き合いで、新刊を見るたびに購入しています。あんまり多作ではなさそうで、新刊か!と喜ぶと持っている新書の文庫化だったりしていたのですが、今回は持っていない作品の文庫化でした。

やった!と早速購入してみたら、残念ながらミステリではありませんでした。確かに裏表紙にも「出版稼業の悲喜交々を描く連作小説」とあるだけで、ミステリとか推理なんて単語は使われてはいませんでした。

とはいえ、SFチックであったり、ギャグ満載であったり、「ええのか、こんなん書いて!」と言いたくなる暴露?小説であったりとバラエティ豊かでとても楽しめました。

押し売り作家

「倉-ナントカ」という編集者でも即座に名前が出てこない経歴だけが長い作家がいろんな出版社に持ち込みをかけます。編集者の立場で読むとホラーですし、読書目線としてはちょっとしたトリックが楽しめます。

夢の印税生活

苦節十年にしてやっと小説の新人賞をいとめた作家が主人公です。二作目も順調で、編集者の忠告も無視して作家業に専念しようとしますが…

この後の展開は皆さんの予想通りではありますが、読ませ方が上手いなあ。わかっていながら最後まで楽しめました。

持ち込み歓迎

弁当箱のような暑さの推理小説を出すあの有名作家は、始まりが出版社への持ち込みだった、という事実を元に、中堅出版社が持ち込み原稿を大々的に募集するのですが…

はっきり言ってコントです。展開は面白いのですが、登場人物が饒舌すぎてついていけず斜め読みをしてしまいました。

悪魔のささやき

短編3つで構成されています。出版に関わる人の元へ「本の悪魔」がやってきて本に関することなら何でも願いを叶えると告げます。少々長めとはなりますが星新一のショートショートを彷彿とさせる3篇です。

らのべっ!

どんでん返しが楽しいのですが、「いいのかここまで書いても!」という気持ちになります。ま、何となく予想はしてましたが。

文学賞選考会

いいのか、ここまで書いても!の第二弾です。とてもリアルに感じたのは自分だけでしょうか。

遺作

「倉-ナントカ」という作家さんらしい人が主人公です。話の展開というより、著書は推理小説を書くときにこういう思考を辿るんだな、と思わせる内容です。いやぁ興味深かった。

作家の人たちと編集の人たち座談会

いわゆる解説のところに位置しています。これと、その前頁に掲載されている「本書はフィクションであり…」の件も見逃せません。

推理小説ではなかったものの、楽しめる一冊でした。たまにはいいよね、こんな悪ふざけしたお話も。

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