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読書遍歴

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自分が読んで、面白かった!ぜひ読んでほしい!という本をできる限りネタバレなしでご紹介しています。
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2021年3月の記事一覧

青空の卵 坂木司著 創元推理文庫(2006年2月発行)

鳥井&坂木シリーズ三部作の第一作で、著者のデビュー作です。とある事情でひきこもりになった鳥井と、複雑な思いを抱えて鳥井と付き合い続ける坂木のコンビが様々な事件の真相を解き明かす連作短編集です。 という紹介だけ読んでいたら絶対にこの本は読まなかったでしょう。こんなのよくある「安楽椅子探偵」もので、安楽椅子にするべく探偵役に「ひきこもり」という属性を与えた安直なミステリーだと思い込んで・・・ そんな中、この著者の短編集を読み、久しぶりに大感動を覚えました。この作家なら、すべて

トリノトリビア 川上和人著・マツダユカ画 西東社(2018年10月発行)

面白い文章を書く鳥類学者として有名な川上和人氏と鳥マンガで有名なマツダユカ氏がタッグを組んだ野鳥の知識がつまった一冊です。 構成としては見開きで一つのトリビアが掲載されていて、右ページに四コマ漫画。左ページに解説が書かれています。 四コマ漫画はトリビアに基づくネタで、一部に解説がないとオチがわかりにくいものがあります。解説はいつもの小ネタは控えめですが、とてもわかりやすい文章なので、個人的には左の解説を読んでから右の四コマで笑う、というのがお勧めです。 ちなみに栞となる

鳥類学者無謀にも恐竜を語る 川上和人著 新潮文庫(2018年7月発行)

「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」で有名な著者ですが、最初は新書によくあるタイプの「売るための過激なタイトル」だと思って興味を持ちませんでしたが、ある日書店で今回紹介する本を見つけ、読んでみることにしました。 なんといっても恐竜ですし、文庫解説があの小林快次氏でしたから、読まないわけにいきませんね。 で、読み始めたら面白いのなんの。時間を忘れて読み続けてしまいました。ちなみに今回紹介するために三回目の再読をしたのですが、初回と同じぐらいの感動がありました(単に

短劇 坂木司著 講談社文庫(2011年2月発行)

この作者は創元推理文庫から「青空の卵」「仔羊の巣」「動物園の鳥」という日常の謎系ミステリ三部作を上梓しています。タイトルも凝った感じでよく見かけるので気にはなっていましたが、どちらかといえば「どっしりしたミステリ」が好きなので、積極的に読もうとは思っていませんでした。 しかし50冊目の「異形コレクション」に掲載された作品が、とても面白く、同書監修者の作者紹介の中で、この「短劇」という作品集をべた褒めしていたことから、入手して読んでみることといたしました。 これは阿刀田隆ら

定吉七番の復活 東郷隆著 講談社文庫(2015年4月発行)

約20年前に角川文庫から5冊刊行された「定吉七番」シリーズが復活していました。 執筆が2010年らしく、作者の前口上に「時事ネタ若干古く」とありますが、この年になりますと2010年なんてつい二時間前ぐらいの感覚ですから、腹を抱えて笑って読みました。 それにしても、読んでいるこっちが心配になるぐらいのパロディ、いやそんな生易しいものではないですね。ここまでくると「愚弄」です。さすがは定吉七番。 20年前を思い返すと、こんな小説はたくさんありましたね。作者もやり放題。世間も

恐怖の構造 平山夢明著 幻冬舎新書(2018年7月発行)

昔からの癖で布団に入ったら必ず何かの本を開いてからでないと眠れません。 ただ、雑誌は手がつかれる上に眼鏡をはずしているので細かい文字が読めないし、マンガや小説は続きが気になって眠れなくなるので、必然的に専門的な題材を扱った新書に手が伸びます。 よく読む分野としては天文学・物理学・生物学・歴史とどちらかといえば理系よりなのですが、少なくとも一か所は「へぇー」と感心する内容がないと途中でほおり投げてしまいます。特に自分の主義主張をやたら押し付けてくるようなものは嫌いですね。

キネマ探偵 カレイドミステリー 斜線堂有紀著 メディアワークス文庫(2017年2月発行)

異形コレクションの50巻で出会ったこの作者が気になっていたので、デビュー作を仕入れて読んでみました。全4話からなるこの作品は、同一登場人物の連作短編となっており、第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞受賞作でもあります。 作品の内容は・・・ 語り部である大学生「奈緒崎」は留年が確定しそうになった時に担当教授から一年間ひきこもりを続けている、教授曰く「極めて優秀な」学生である「嗄井戸高久(かれいどたかひさ)」を大学まで連れてきたら留年を取りやめにするとの救済措置を提案さ