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シャニマスP自己投影問題と従来のアイマスPとの違い

アイドルマスター スターリットシーズンの詳細が発表された。

いままでDLCでライバル・ゲストキャラとして交わることなどはあったがプロデュース対象キャラとして765プロに留まらずシンデレラガールズやシャイニーカラーズのアイドルともコラボする作品はこれが初のように思う。

というのもあって賛否両論色々と巻起こっているのだが……その件はこの記事の本題ではない。

この記事で書きなぐりたいのはその賛否両論の中に見えてきた『シャニマスのプロデューサー』と『アイマスのプロデューサー』の”ズレ”である。

このプロデューサーというのはユーザーのことではなくゲームの中でアイドルと喋っている彼の話だ。

とある方がTwitter上でアンケートを取っていた。

「アイドルをプロデュースする時に作中のプロデューサーを自身と同一視しているか」といったものだがその結果が興味深いもので

シャイニーカラーズにおいては「Pと自分を同一視していない」が50%を超す過半数という結果となった。「P=自分」と回答した方は僅か13%。

これの比率はミリオン、シンデレラと遡るにつれ差が小さくなり所謂765ASのPへ向けたアンケートでは「P=自分」が27.5%、「Pと自分を同一視していない」が33%まで縮まった。(2020年10月10日現在)

なぜこのような差が出たのか、当然同じアイドルマスターシリーズではあるが運営している会社も違えば目指す方針も構成されたファン層(あえてそう表現するが)も今や5ブランドそれぞれ独自性の確立しているだろう。

では765ASとシャニマスのプロデューサー観の違いはどうして生まれたのかということを確認していく。


まず細かいかもしれないが個人的に重要だと思っている部分がこちらだ。

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このスクショは箱マスのスクリーンショットだが注目してほしいのはメッセージボックスの名前、今誰が話しているのか示す箇所だ。

「XBOX36P」と書いてあるがこれはプロデューサーの名前だ。ゲームを開始すれば主人公に名前をつける。ポケットモンスターやドラゴンクエストの主人公と同じだ。

またこれはアイドルからプロデューサーに話しかけて来る場合にも使用される。スクショの通りであれば「XBOX36P!こんばんは!」私であれば「カバドルンP!今日の仕事はなに?」といった具合である。音声は多くの場合「プロデューサー」と発音される。

つまるところ、「あなたが入力した名前」が「プロデューサーの名前」なのだ。

この仕様は箱マス以降のシリーズでも共通であり最新作ステラステージも同じだ。また765ASのシリーズだけでなくシンデレラガールズ、ミリオンライブこれら派生ブランドでも同じ手法が使われる。

ではシャイニーカラーズもそうか?そこに差別化がなされているのである。

シャイニーカラーズも所謂ソーシャルゲームの類であるためゲームアカウントを作る時にプレイヤー名を入力する。それはアカウントの識別名であり対人戦(オーディション)を行うときのプレイヤー名として機能するが、コミュにおいては

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「プロデューサー」と表記される。アイドルからこちらを呼んでくる際も「プロデューサー」だ。私はカバドルンというユーザー名を入力したアカウントでプレイしているが変わらない。

また、とあるコミュの一幕では『アイドルがプロデューサーを本名で呼んでくる』というシチュエーションがあるのだが…

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「――さん」。あくまでプロデューサーの本名は伏せ、しかし我々プレイヤーが入力したユーザー名は使わない。

先程の”「あなたが入力した名前」が「プロデューサーの名前」である”とは対照的であり、言うならば”「あなたが入力した名前」は「プロデューサーの名前」ではない”と受け取ることができる。

細かいところかもしれないが、アイドルマスターの新作を開発するという目的において過去の恒例であったユーザー名=プロデューサー名をあえて徹底的に廃しているという判断には意図を感じざるを得ない。


次に、プロデューサーのキャラクター性だ。

シリーズによってプロデューサーの喋る頻度・テキストの量というのはまちまち異なるがシャイニーカラーズはアイドルマスターシリーズで最もプロデューサーのセリフ量が多いと言っても過言ではないだろう。

こちらに三択の選択肢を投げかけることでプレイヤーに発言を委ねることも多いがそれを遥かに超える量勝手に喋る。

また独自のキャラ設定を複数持っており好物は苦いコーヒー、ユーモアが苦手、プロデューサーになる以前に前職があったことの示唆、学生の頃にとあるアイドルと会ったことがある、など。

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テキストボックスのキャラクター名は「学生」。

プロデューサーになる以前のことが語られるという点でいえばアニメ アイドルマスターの通称「赤羽根P」以上に独立したキャラクター性を持っていると言ってもよいのではないだろうか。

制作プロデューサーの高山祐介氏はインタビューで「プロデューサーのキャラ立ち」について質問された際、

「設定はあるにはありますが、アイドルたちほどしっかりしたものではありません。」

と前置きした上で

「キャラ立ちの部分に関しては、そのアイドルを描くために必要だと考えた結果です。『シャニマス』においては、そうしたほうがよりアイドルたちのことを深く描写できるという判断ですね。プロデューサーが動くことで、アイドルたちにもドラマが発生しますので。」

と回答しており必要なものとしてプロデューサーにキャラクターを与えたと話している。

市川雛菜のWINGシナリオにおいてはプロデューサーの独白を廃し、なにを考えているのかわからないよう描いた上でアイドルである市川雛菜の方に読者を感情移入させるという特異な手法を取っている。

彼女をプロデュースしたプレイヤーの多くは彼女の考えに感情移入し、「プロデューサーは努力を押し付けようとしている」と彼を誤解し、しかしシーズン4で裏切られたことだろう。

プレイヤーが主人公の考えを誤解するということが起こっているのだ。

これらは既存のアイドルマスターシリーズにおけるプロデューサーとは大きく異なると思っている。少なくとも自分はアイドルマスターシリーズを広くプレイしているが他シリーズにおけるプロデューサーとシャイニーカラーズにおけるプロデューサーには大きく異なる部分があると認識し、どちらも楽しんでいる。


さて、本題ではないと前置きこそしたがこの記事を書こうと思った動機として最後にスターリットシーズン触れたい。

ここまで書いたことを踏まえた上で今回賛否両論の渦中にある杜野凛世さんについて語ると、彼女は「たまたまプロデューサーに下駄の鼻緒を直してもらったことをきっかけに、なんの縁もなかったアイドル事務所に足を踏み入れる」という物語を持つアイドルだ。

つまり彼女がアイドルになるにはプロデューサーとの出会いが必要不可欠、そしてスターリットシーズンにおいてはそんな彼女が283プロから765プロへと出向してくる。

プロデューサー=プレイヤーの構図を廃したシャニマスの視点で見れば283プロデューサーの元を離れ、765プロデューサーの元で活動するという形になる。ここまで記事を読んでくれた方なら283も765もプロデューサーは俺だろ?なんてことは言わないはずだ。そう思ってプレイするのも良いがそう思えないプレイヤーも多くいることは伝わっているはず。

杜野凛世は283のプロデューサーを想っている、故に765Pの元で活動をするが想いはいつも283のPへと…といった内容のコミュがスターリットシーズンから初めて杜野凛世さんに触れるプレイヤーにとってどう感じられるかはわからない。

逆に彼ら新規に杜野凛世さんに触れるプレイヤーに従来の杜野凛世さんの魅力を届けるため、まるで原作シャイニーカラーズにあるような凛世さんとプロデューサーの甘くどこか切ないコミュを765Pと行う…なんてことが起きれば目を覆いたくなるような人も現れるだろう。

正直どうすれば正解なのかはわからない、なぜあえて杜野凛世さんをプロジェクトルミナスに選んだのかもだ。

しかし出てみないことには分からない、しかしPR段階で小出しされた情報に期待も不安もどのように抱くのかは自由である。

スターリットシーズンと杜野凛世さんをめぐる不穏な空気は発売まで続きそうだがこの記事で書きなぐったようにプロデューサーという存在の認識一つとっても価値観がことなるファン同士の異文化交流だ。

お互いの認識を共有、とまではいかなくとも理解し喧々囂々と平和的な賛否両論を築いていきたい。

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