惚れっぽい魔女見習い
惚れっぽいのよ、私。昔っから。
どれくらい惚れっぽいのかというと、初恋は中学の先輩に一目惚れだったし、その恋に敗れた次は夢に出てきたってだけでクラスメイトを好きになった。
自分でいうのもなんだけど、まぁチョロい。
内緒だけど、夫を好きになったのは、私が落とした50円玉をスマートに拾ってくれたから。「この人と結婚する!」って、直感でわかったものよ。
そんな惚れっぽい私が、ひと目で心を奪われたものがある。
フラッと立ち寄った本屋で見つけた、ひみつの本棚シリーズ「魔女の秘薬事典 忌々しくも美しい禁断のハーブ」だ。
魔女の秘薬?えええめっちゃ気になる!
怪しさ満点。引き寄せられるように手に取ると、プニプニした手触りがまた私を魅了する。
たまらん。マジでたまらん。ページの縁が金色で、ほどよくギラギラ感を演出しているのも惚れポイントだ。
だがしかし、いくら惚れっぽい私でもさすがにお値段は確認する。先日の思い切りすぎた自己投資で、財布の中身がスッカラカンなのだ。
(いや、まったく後悔はありません!投資してよかったです!)
「お値段、税込み1,980円か……」
買えない。
どれだけ欲しくても、いまは自分の趣味に1,980円も出せる余裕はない。
悔しいなぁ。惚れたアイツを手に入れることはできないのか。
まぁ人生なんて、思い通りにいくことのほうが珍しいよね。
初恋の先輩も、夢に出てきたクラスメイトも、私に振り向いてはくれなかったもの。
先輩にはバレンタインにチョコを渡したし、クラスメイトには2回も告白した。頑張って頑張って頑張ったけれど、若かりし頃の恋は実らなかった。
だから、今回も仕方ない。諦めよう。
しょんぼりしながら本を戻す。未練たっぷりに。
……いや、ちょっとまって。
私、この子を手に入れるために、なにか頑張った?なんにも行動していないじゃないの。
「お金がないから」で諦めるのは簡単だ。目の前のニンジンを恨めしそうに睨んだって、誰も口の中に放り込んではくれない。
それに、できない理由なんか探していないで、どうやったら手に入るのか?を考えるほうが100倍楽しいもん!
私は、アイツが欲しい。惚れちまったんだ。もう戻れない。
指をくわえて見ているだけなんて、絶対にできやしないのよ。
しかも、一冊だけじゃない。シリーズ全部欲しい。コンプリートして本棚に飾って、うふふオホホと眺めていたい!あぁもう妄想が止まらない!
こうなってしまってはもうダメだ。
まずは、目標を決めようじゃないか。
いま本気で取り組んでいる、人生最大の自己投資。これで月に5万円稼げるようになったら。
私は、アイツを手に入れる。
惚れたアイツを!必ず!待ってろよーーー!
それまでは「魔女見習い」として、ピリカピリララと呪文を唱える練習をしておこうと思います。
【欲しいものは、苦労してでも手に入れる】
我が家の家訓にでもしておこうかしら。楽して手に入れたものに、魅力はないもんね!
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