うちの成人式のこと② スーツ迷宮
*長女の成人式のため、20年間ちまちま貯めて着物資金を作ってきた母。
だが娘は、着物でなくスーツにしたいというではないか!
「成人式はスーツで」という世界線に移行したものの、大学の課題など忙しくて、なかなか探しに行けない長女。
とりあえずPinterestでスーツのイメージを固めていました。
Pinterestは画像検索サイトのようなもので、例えばはじめに「ワンピース 黒」と入力したらたくさんの黒ワンピ写真が出てくるんだけど、その中のひとつを選ぶと、次のページでは選んだ写真にさらに寄せた写真がたくさん出てくる。
そうやって直感で、潜在的に自分が好む方へイメージをどんどん絞り込んでくれるわけ。
そんな感じであれこれ見比べた結果、長女はある結論に達したのであった。
・パンツスーツがいい
・これだ!と思ったのは、高級ブランドとZARA のもの
・なんちゃってでない、本格トレンチコートも激しくほしい
高級ブランドとは?と思って、サイトでお値段を見せてもらったら、ちょ待っ、それお着物くらいするじゃんよ!
それかZARAというならば、そりゃあまずはZARAからみようじゃないか。
ということでようやく都合のついた秋のある日、我らはZARAのリアル店舗に乗り込んだ。
とがってる。
とがってるね、ZARA。
あんたは本当にこのとんがりスーツで、振袖だらけの成人式に乗り込もうっていうのかい?
「そうだよ。みんなおんなじ白いポワポワ付けてる中で、1人とがったスーツ。目立つし、かっこいいじゃん!」
そうか。
そんなら母はなにもいうまい。
けれど、実際にZARAで手に取って見てみると、「うーん、イメージと違うかも」とのこと。
こ、これは。こだわり発動で、もしや長引くパターンなのか?
ADHDの特性を持つ長女の決め方は、小さな頃から独特だ。
まず、こだわりが全くない分野と、めっちゃこだわる分野の両極端が存在する。
そして、こだわる分野に関しては、なんというか、完璧な正解が最初からそこにあるという感じなんだよね。
例えば買い物をするとするじゃない?
普通はあれこれ見比べて迷いながら選ぶという感じだと思う。
でも長女は、もうすでにある正解を探すというような買い方をすることがある。
「これじゃない」とか、「あった!」とか。
だから、一軒めの最初に見たものであっても彼女にとっての正解なら即決するし、逆になかなか正解に出会えない場合は永遠に買い物が終わらない。
もしくは、買わない。
100点満点のものがなければ、80点のもので妥協を、とはならなくて、そんならいらないってなるんだよね。全か、しからずんば無か。
もちろん全部においてそういうわけではないし、これがADHD由来のものなのかどうかは断言できないんだけど。
とにかく、このスーツ選びにおいては、こだわり案件のにおいがぷんぷんする。このヤマ、長引きそうだぜ!
案の定、デパートをまるまるふたつ渡り歩いても、2軒目のZARA店舗をみても、長女のYESを聞くことはできなかった。
ヤバイなー。タイムリミットのあることだからなぁ。
母ばかりが気が焦る。
「いいよ、もう。いざとなったら入学式の黒いスーツで行くから」
入学式のスーツね。
うん、スーツ屋でリーズナブルに買ったブナンなやつな。
進学先が決まったのが3月下旬で、入学式まで一週間もなくて、大慌てで買ったんだよね。
いや、もちろんそれでもいいけどさ。
でも今回は晴れの日じゃないか。
そもそも、物欲があまりなくてめったにおねだりしたりしない子だったんだ。
せっかくのこだわり、ここはなんとか晴れ着とタイマン張れるような100点スーツを買ってやりたいよなぁ!
母には奥の手があった。
ふふふ。それはオーダースーツ!
お高いと思うでしょ?
それが、思ったよりお値段おさえめで下は3万円台くらいからあったりして。
もちろん、上を見ればキリはないけれど。
最短で2週間くらいで仕立て上がるところもあるというし。
納得のいくデザインや布で、世界で一つのスーツをこしらえる。
あ、むしろアリかも。こっちかも。
とはいえ、この時点ですでに11月。
オーダーするにしても、タイムリミットは刻々と我らに近づきつつあるのであった。
→ 続く
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