私が動画編集を教えようとはしないワケ
私は1995年にフリーランスとして独立し、同時にPCを使った動画編集を始めました。
正直いってそんじょそこらの動画編集講師を自称している方々と比べても、経験の長さだけでは負けません。
実際、講師になった時も最初は動画編集を教えようと思っていました。
そんな私が、なぜ今は動画編集を教えようとは思わないのか、それを書いてみました。
ある日届いたメール
しばらく前のことです。
私の個人ホームページの問い合わせフォームから一通のメールが届きました。
動画編集のオンラインスクールを一緒にやりませんか、的な内容。
Webマーケティングを専門とする会社からです。
ともかくも話を聞くだけ聞いてみようと、オンライン面談を行うことにしました。
画面にあらわれたのは、20代半ばの男性。
話を聞くと、私のストアカやUdemyのアカウントを見て、興味を惹かれたようです。
3000万ほどの広告費をかけて5億から10億の売上を作れる、という、話半分に聞くとしても景気のいい内容です。
講師になれば、20〜10%の報酬が入るという。(なんでコンテンツホルダーの報酬がそんなに低いのか、という点でも引っかかりがありましたが、問題の核心はそこではない)
どんなオンラインスクールをイメージしているのか、という点が気になっていたので、真っ先にそこを聞きました。
案の定、あまり具体的なことをイメージはしていないようで、動画編集が副業としてもてはやされている、的な話をしてきました。
私に白羽の矢を立てたのも、動画編集のキャリアが長くて、講師として活動をしている人間、さらには企画・構成を教えることもできる、というだけのことのようでした。
私としては、苦慮の末に動画編集を教えるという道を捨てて、動画教材一本に絞った経緯があります。今さら「動画編集を教えませんか?生徒はウチが集めます」と言われても、ホイホイそんな誘いに乗る気はありません。
この時に「私が動画編集を教える気になれない理由」として先方に伝えた内容を、ここに書いてみることにします。
動画編集スクールは飽和してるんじゃないか
今、世の中には動画編集を教えるスクールが林立しています。
デジハリのような本格的なものから、副業を狙った低価格なものまで、たくさんあります。
単純に考えて、このレッドオーシャンの中に切り込んで行って、成功できるコンセプトを私は考えつきません。
それだけ数多いスクールが出来るぐらいですから、動画編集に一定の需要はあるのでしょう。ですが、供給は過剰になっていると思います。
副業としての動画編集はどうなのか?
簡単に、動画編集を副業で、といいますが、副業としての動画編集というのはどうなのでしょうか?
副業としての動画編集をやっている方にお話しを聞いたことがあります。
イチから独学で動画編集を身につけ、クラウドワークスやランサーズなどのサイトを通じて、クライアントを見つけている、という話でした。
正直なところ、その話を聞いても副業としての動画編集が魅力的には思えませんでした。
時給でいうと、スーパーでパートの仕事をするよりも安いんじゃないか、と思った記憶があります。
アウトソーシングサイトを経由して見つけたクライアントは、動画編集といっても「この人にしか頼めない」というようなクリエイティブな能力を求めているわけではないでしょう。
そこそこの作業を迅速に、しかも安価にこなす人がいればいいという意識だと思います。
より安くて迅速に動画編集を行うフリーランスを見つけたらすぐに乗り換えるでしょう。
正直いって、30年近く動画編集をやってきた身としては、代替のきかない能力が2~3ヶ月のオンライン学習で育つとは思えません。
また、中小企業のYouTube動画の編集が主な仕事であれば、実務の中でクリエイティブな能力が育つとも思えないのです。
何より時間がかかる割にギャラは安い。いま動画編集を副業にしても幸せになれる率は、異様に低いと思います。
動画編集は動画制作のワンパートにすぎない
そもそも動画編集というのは、映像制作業界では「ポストプロダクション」と位置づけられています。
ポストプロダクションというのは、動画制作の中で撮影後の仕上げ段階の技術的な作業を指す言葉です。
動画というのは、制作の流れからいうと、
企画
構成(シナリオ)
撮影
編集・録音(MA)
運用
となります。
この中の4.がポストプロダクションです。
動画のクリエイティブというのは、1.企画~3.撮影までの段階でほぼ決まっています。
動画編集というのは、技術的な仕上げをするだけの段階なのですね。
クリエイティブな仕事をしようとするなら、1.~3.までに携わらないといけない。動画編集の中で発揮できるクリエイティブというのは、ごくごく限定的なものだけです。
アウトソーシングサイトでつながった動画編集者が「私、企画もできます」といっても、クライアントが「それでは企画もお願いします」とはならないでしょう。
そもそも撮影現場も知らない人が立てた企画では、実現性があるかどうかもわかりません。
動画編集だけを教えるスクールは、ホントに動画という幅広い分野のごく一部だけしか教えていないことになります。
私は自動車学校の先生になりたくない
私が、実際に動画編集を教えてみて感じたのは、こういうことです。
自動車学校の先生は、クルマの運転ができない人にイチから運転を教える仕事です。
最初は教習所内のコースでクルマを動かす手順から教え、仮免許がとれたら路上教習をするくらい。
それで免許が取れたら、サヨナラです。
でも自動車の運転というのは、そこから始まるのです。
私は、実際に動画編集を教えてみて「私がやりたかったのはこれではない」と思いました。
自動車の運転にたとえるなら、私はクルマを使って行うさまざまな活動を教えたかったのです。
たとえば、ロングドライブして見える景色を伝えたかった。
教習所のコースで切り返しの仕方を教えるような仕事は、誰でもできます。
要は動画編集ソフトの操作のしかたを教えるだけですから、2~3年ソフトを使っていれば(教え方の上手い下手はあるにせよ)教えられます。
だから私は、動画編集を教えることはやりたくないと思っているのです。
オンライン面談の顛末
オンライン面談の時に、私は以上のようなことを話しました。
そして、動画一般について教えることはやめ、動画教材に絞った経緯を話しました。
その上で「私の話したことに興味があれば、もう一度メールをください」と言い添えて面談を終わりました。
それ以来、今にいたるまでメールが届くことはありませんでした。
👆私の朱雀スタジオにおける先生ページです
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?