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音楽というもの。

鼓膜を振動させる音に、

不快感をあらわにしたものの、

僕は魅了されたこと自体を

否定する材料をもっていなかった。


憎らしい、そう思った。

この音楽とかいうやつが、

メロディとかいう、

リズムとかいうやつが。

初めて友人と喧嘩した日の、

初めて女の子に振られた日の、

初めてちょっとした悪さをした日の、

悲しさも

寂しさも

罪悪感も

思い出したくないことばかり

僕の触れられたくない心の奥ばかり

あっさりと一番前に引っ張り出して

まっさらにして去っていくんだ。


聴きたくない

もう聴きたくない。


そんな日でも自然と鼓膜を揺らす。

きっと逃れることはできないんだ。


そう思っても僕は眉間にしわを寄せて、

悔しいから音楽を嫌いだと言うんだ。

愛しい愛しい、そんなの嘘さ。


お前のことなど知るもんか。


そう思って歯を食いしばる。


僕にとって音楽ってそういうもの。


210121 散文。

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