2015.5.15「使わないかもしれないけれど」

 介護ベッドを借りたのは良いきっかけだった。すぐに返すのだから(と当時は思っていた)介護保険を使わず、費用全額を自己負担しても良かった。だが、サービスを利用することを良しとしない母が、介護保険利用を受け入れる貴重な機会だと思った。

 その2年前、母は障がいを持つ叔母を引き取った。母が同居すると決めたとき、私は「必ず外部のサービスを使って。一人で抱えたら絶対続かない。」と強く言った。2ヶ月後に行政からサービス利用枠が認められたが、実際に利用すると決心するまで9ヶ月を要したのだった。

 ベッドの設置を終えた福祉用具貸与事業者の方に相談すると、その場でケアマネジャーに電話を繋いでくださった。たまたま、その事業者は、叔母のヘルパーの派遣元と経営母体を同じくしていた。日頃の信頼関係から安心したのか、母もすんなりと受け入れ、二日後の面談が決まった。「使わないかもしれないけれどね」と言いながら、介護保険の申請がスタートした。