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他学部卒のための臨床心理士指定院入試対策 基礎心理学編

序文

この前、この記事を読んでとても印象に残り、且つ共感した

受験までにいつなにをやるのか、やればいいのかがまったくわからない
心理系大学院予備校選び③(日本編入学院編)

このような事を、私は勉強中ずっと感じていた。不安なまま勉強を進め、不安なまま試験に挑み、そして何故か合格を頂けた。本当にそんな感じだった。

心理学という学問は茫洋として、つかみどころがない。一歩足を踏み入れれば、だだっぴろい大地が広がる。森だけと思いきや川もあり、川もあるかと思えば氷河すらあり、氷河があるかと思えば花畑もある……というような、トンデモない幅広さである。

つまり、精神物理学から始まって、知覚心理学・社会心理学・発達心理学・心理検査の発展と歴史・各心理療法の歴史・精神医学・コミュニティ心理学、更にもう少し進めば他領域であるものの文化人類学や思想史、あるいは社会学との接点も見出しうる。これらが一つに「心理学」と形容されうるなんて、私は正直信じられない。

話を戻すと、臨床心理士指定院受験者はこうした「心理学」について知っておく必要があるのだが、それが前に引用した、『受験までにいつなにをやるのか、やればいいのかがまったくわからない』に繋がってくる。こうしたとんでもない心理学ワールドを、何処まで進んでいき、どの程度の深さまで覚えるべきなのか。逆に言えばそれさえ分かれば、後は学習するだけなのだ。

私について

私は(地方国立)他学部を卒業した後の2022年5,6月から勉強を始め、秋に3校受けて全落ちし、その後心理系院受験予備校に入って3,4ヶ月必死になって勉強し、2月入試で2校に合格を頂いた(私立と国立)。

そういう私なので、ぶっちゃけ何か大きな事を言える立場にない。予備校のテキストが無ければ間違いなくまた不合格を繰り返していただろうと思う。

ただ、先に引用した記事内で(もう一回貼る)、

予備校は完璧な授業をしてくれるわけじゃない」といった趣旨の記述がある。たとえばこの方の場合、統計学は自習だったようだ(一年コースでそれは酷いと思うが)。

それで自分の場合だが、自分が通わせて貰った予備校では後期からはアウトプット中心の講義であり、講義の中で特別何かを指導されるという事はなかった(ただその予備校の受講生限定で、web上に過去講義のarchiveが公開されており、それがいつでも視聴可能なので大分恵まれていた)。

なので、基本的には私も自学自習で基礎・応用心理学について覚えるという感じだった。10月後半に渡された予備校のテキスト(薄めのが2冊)のうち、半分くらいは初見でかなりビビったのを今でも覚えているw

そのため心理学の勉強について、少なくとも他学部卒として私が心理学の知識のうちどの程度の事を覚えたのかは書ける。私は予備校の講師でもないので、内容が間違っている可能性もあるので、あくまで参考程度にして頂きたい。

いずれにしても、やみくもに他学部の人が心理学を学ぶというのは、方位磁石や地図を持たずに未開の土地を探検する事に等しい。一発で遭難、志望校合格という目的地にはたどり着けない(秋までの私がそうだったし)。何かの参考になれば嬉しい。

臨床心理士指定院入試における心理学の分類

以下のように区分できるのではないかと私は考える。

  • 基礎心理学

  • 応用心理学(+精神医学)

  • 心理統計

今回は初めの「基礎心理学」について、自分がやった事を書く。ここから漸く本題である

知識の深さについて

基礎/応用心理学・統計すべてに通ずることだが、覚える知識の深さとしては、用語説明が出来る事である。下に院の過去問を引用するが、こういった問題に対してつらつら~と説明を書ければ、◎である。またその際、お約束的な単語や概念を必ず含める必要がある。定義・提唱者・関連する言葉・対立する言葉など……。これは結構な深さの知識が求められ(あやふやじゃ書けない)、一ヶ月とかで出来るようになる事ではないので、他学部卒の人はぜひ時間をかけてゆっくりやってみよう。

基礎心理学

自分的には、心理学の歴史/学習・記憶心理学/感覚・知覚心理学/感情・生理心理学/社会心理学/発達心理学/パーソナリティ心理学といった感じで分類されうるかなと思う。↓のサイトも非常に役に立つ。

これら全て覚えなければならないのか? と思われるかもしれない。心配せずとも、勉強しているうちにあらかた覚えるようになる。以下、基礎心理学領域における、実際の問題である。

音韻ループ(phonological loop)について説明しなさい
筑波大学院・2023年
ストレス・コーピングについて説明しなさい
文教大学院(改題)・2022年
ストレンジ・シチュエーション法における不安定型アタッチメントとアタッチメント障害の特徴と違いについて説明しなさい
青山学院大学院(改題)・2022年
リスキーシフトについて説明しなさい
東洋英和女学院大学院(改題)・2021年

臨床心理士指定大学院における基礎心理学の問題は、学習心理学から感情心理学、社会心理学まで多岐にわたる。そんでもって聞いてる知識の深さもまちまちである。

上でいうと、たとえば筑波の問題はBaddeleyのワーキングメモリーの構造について知っていないと書けず、青学の問題は発達心理学と精神医学の複合的な問題となり、両者とも曖昧だと×になるだろう。文教大の問題は素直な感じなので本番で記述出来ないと致命的になり(私は秋季、文教ではない別の大学院を受験し、まさにコーピングについて書けなかったのだが、一次試験落ちだった)、東洋英和は社会心理学の知識がいる問題となる(社会心理学は量が多くて大変)。

目安

臨床心理士指定院入試においてとても有名な本である。非常によく纏まっているが、纏まり過ぎていて、この本だけだと知識量が完全に足りない。中堅院レベルを狙うのならばこの本でも良いかもしれないが、その場合は、この本に書いてある内容を一言一句理解して覚える必要がある。

個人的には、試験直前期に内容を総ざらいするのに使うと良いのかなという気がする。

だから目安としては、河合塾KALSの赤本より1,2歩進んだ理解をすると良いかもしれない。

たとえば(私が秋時点で書けなかった)ストレス・コーピングなら、まず定義を書いて、その次にラザルスの認知的評価説が浮かぶべきだし、認知評価説の中でも一次的評価と二次的評価があってコーピングは二次的評価に該当して、更にコーピングは問題焦点型と情動焦点型に分けられるよね~みたいな事が書ければ良いと思う。知らんけど

目安(発展編)

これからの臨床心理士指定院入試は公認心理師範囲も覚えていかなければならないのだが(マジで)、それにうってつけのものがある。ブループリントだ。

上のURLから飛んでもらうと、ブループリント(公認心理師試験の出題基準)が見られる。ここに書いてあって、明らかに出なさそうなの以外は覚えておくと良いかもしれない。ただこれは受験校の過去問傾向に当然依存するため、別に出なさそうだな……となる場合は、従来の勉強で良いのではないかと思う。

まとめ

ちょっと見て貰ったら分かるだろうが、他学部卒の人は自学自習だと合格はほぼ無理だと思う。知り合いに心理学科卒がいるとか、心理支援者がいるとかじゃなくて、院試に詳しい人がいないとまずこの量の勉強を、しかも効率よく学習することは難しい。

ただシャカリキでやれば、自分自身がそうだったが、(予備校に入ってからの)三か月ほどで秋季とは比べ物にならない知識量をつける事が可能だったので、めげずに頑張って欲しい。

公認会計士だの司法書士だのそういう超難関資格取得ばりに肩に力を入れる必要はないが、ある程度重く見ないと(なめてかかると)、大変な目に合う。ぜひ受験予定の方は頑張っていただきたい。他学部卒でも受かりますので……。