コロナ前から始まっていた問題

 航空業界に関するニュースでよく見るワードと言えば「人手不足」。「コロナで減った人手に対して需要回復が早過ぎた為人材確保が追いついていない、コロナ禍で不安定な業界のイメージがついたこと」とよく報道されています。前者は確かにそうでしょう。後者もあるでしょうが、果たして本当にそうでしょうか?

 航空業界の人手不足はエアライン関係者の方ならご存知でしょうが、今に始まった話ではありません。元々東京オリンピックが開催される予定だった2020年を基準にして振り返りましょう。

↓羽田

https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/result/index.html


↓関空

羽田空港と関空の利用者状況です。関空は2019年度は前年より若干減っておりますが、ほぼほぼ2020年に向かって右肩上がりです。私が航空専門学生だった2018、19年度の航空業界はかなり忙しい時期でもありました。関空の保安検査場はパンク状態でしたし、私が働いてた空港も繁忙期時の保安検査場混雑はかなり深刻問題でした。

(余談ですが2018年のサマーダイヤ繁忙期で はキャセイは関西〜香港、台北合わせて午前だけで4便位飛んでたと記憶してます。夕方で更に3〜4便。ただでさえ競争が激しい関西〜香港路線で毎回B777やA350の大型機を1日に何便も飛ばしてたキャセイ。しかも搭乗率はそこそこ高い。今考えると恐ろしい、、笑)

「もう直ぐオリンピックだけど大丈夫なのかな?」「今の状態で更にお客さん増えたら回らない気がする」っていうのが当時の本音でした。

 私が内定先の企業に入社したのが19年の夏。丁度繁忙期で、便が重なると保安検査場はテーマパーク並みの行列が発生し、利用者からも不満の声が上がるほどでした。しかし地方空港であるが故にターミナル内のスペースは拡張余地が無いに等しい上、検査機器導入に多額の資金がかかる事、追加の人員が必要になるという現実がある為今すぐレーンを増やすのは厳しいと聞かされました。

 いやいや、これは緊急に投資すべきだし行動起こせや

 日本人の国民性か地方ならではの県民性か不明ですが目に見えてる課題をどうにかしようとするスピード感のない対応にぺーぺーながら憤りを感じたのを覚えています(百歩譲って、保安検査内の動線や荷物置きの配置を定期的に見直して少しでもスムーズに流れるよう工夫していたのは認めるが根本的解決にはならない)

 私の空港含め、2020年に向け増便や利用者増が続く中現場である空港では色々準備が追いついていない、というのが明らかだったんですね。
SNS上でも私と同じような不安を持った業界関係者の投稿がよく見受けられました。
 ところがどっこい2020年、皆様ご存知の通りコロナによるパンデミックで需要は蒸発。オリンピックは延期。航空各社は資金繰りに奔走。
 正直不謹慎かもしれませんが、私は「助かった」って思ったんですね(金銭的には全然助かってないですが)。これどういう事かと言うと、前述の通りかなり逼迫した状態で働いていた事もありますが、私の職場でのシフトが関係しております。

早番 5:50〜13:00
通し 6:30〜20:00
遅番 12:00〜22:00

基本的にこの時間を基本にしたシフトで、3〜4勤して1日休みです。
基本休み前は遅番明けは早番なんで休日は体力回復で1日終わります。公休は平均して月8日。そんなサイクルでずっと仕事していく訳ですから疲れは溜まるばかりでほぼリフレッシュできない、疲労で家事もろくにできない状態に陥っていました。
「本当にこれ早く辞めないと身体壊すかも、もしくはぶっ倒れるかも」と結構本気で感じていましたが、何せ専門学校卒業前である為迂闊に退職できない(学校も関わってくるから)、それ以前に低賃金で資金もない、という文字通りの八方塞がり状態。その状況でのコロナによる勤務数激減。当時を振り返って「助かった」と感じたのは自然な事だったのかなと思います。

 私の会社は入社当時は特別人手不足だった訳ではありませんが夏に入社してから専門学校を卒業する3月まで人員は増えていない一方で退職者は10人近くいました。たった数ヶ月で。私の会社に限らず業界全体として人の出入りが激しいのですね。
 卒業式で久しぶりに同級生に会った際こんな話を聞きました。
「半分くらいの人数が一気に辞めてめちゃくちゃ大変だったけど、コロナで今は逆に人が余ってる」
こんなドラマみたいな話最初信じる事ができませんでしたが、実際にあったでき事です。
 パンクが近づいていた(していた会社もあるのでは?)各社に襲いかかったコロナ。人手不足問題はコロナと共に一旦“棚上げ”状態になり、と言うかいかに雇用を守りながらキャッシュフローを保つかというサバイバルに切り替わった訳です。
 そして2023年ようやくマスクも解禁されコロナ禍も終わりを迎えた訳ですが、当初予測されてた需要回復を大幅に上回るスピードで旅客が戻ってきて、経営的には御の字ですが肝心の人手は戻ってません。
(日本だけの話ではなく世界的に空港スタッフの人員不足が問題になっています)

無論、航空会社各社、ハンドリング会社各社は採用活動しておりますが、それでも十分な状態にはなっておりません。

理由として

・そもそもな話人材育成に時間がかかる
→GSもGHも取得する資格が沢山ある。
GSならチェックイン、ゲート、到着一通りできるようになったら
キャッシャー(売上やお金の管理)、ゲート責任者、カウンターチーフ、会社によってはPBB操作やドア開閉、インチャージ(責任者、管理職級)などなど取得項目が沢山待っています。
飛行機のドア開閉も機種によって全然違う為その機種毎に資格を取らないといけないから面倒。

そのような事情もあり資格を沢山持っている中堅〜ベテラン社員が沢山辞めちゃうとポジションや機種によっては偏りが出てきてしまうので、ただただ新入社員を一定数入れたら解決できる問題ではないのが想像に難くないでしょう。

・上述の状態で負担が増えた社員が辞めていく

・低賃金のため応募したがる人がいない
GS、GHのお給料ですが平均
年収にして250〜300万
月収18万前後
この辺りが多いです。

敢えてもっと突き詰めると手取り15万以下なんてザラです。手取り12万で家賃手当なしっていう会社もあると耳にした事もあります。
賞与もどんなに多いとこでも2ヶ月いくかいかないかでしょうかね。

給与 180,000
勤務 土日祝、お盆年末年始、早朝深夜(もしくは5:30〜23:00の間で)を問わずシフト制

大体こんな感じで求人に書かれていますが、正直この時代この条件で働きたいと言う人はなかなかいないでしょう。
ましてや岸田政権になってから手取りは更に減る一方ですので実家暮らしやパートナーと生活しないとやっていけないでしょう。

 まだまだ問題点はあります。シフト制のため身体に不調がでたり、日系企業特有の企業文化で病んだり、精神科に通いながら仕事したり、、って方も一定数いらっしゃいます。

 残念ながら表向きのイメージに反して社員に優しくない企業が多いのが現実です。給与低すぎ問題に関してはハンドリング手数料も理由に関わってくるのでこの点に関しては後日解説します。

 このような現実問題を抱えながら現場のスタッフ達は航空網を支えてくださってます。今年末年始で繁忙期ですが、飛行機をご利用の際は極力ご自身でできることはやって頂くこと、早め早めの行動をとって頂けると少しでもスムーズに飛行機を出発させれますので、お手数ですがご協力をお願い致します。お客様一人一人の行動が現場の負担減に繋がります。


年内の投稿はこれがラストです。


良いお年を!
Have a nice day

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