ピノコを宿した40手前のおっさんが婦人科に通う話 3

次の日木曜日。
歩いて行ける場所に市立病院があり、規模が大きいし、ホームページには地域がん診療連携拠点病院となっていたので、迷い無く受診。
紹介状受付の窓口に行き、健診センターの紹介状を渡すと、
「画像データはありませんか。」
と言われた。
紹介状しか届かず、電話でとりあえず早く受診しろ、と言われてきたことを伝えると、受付の人が若干驚いたような顔になった気がした。
普通は画像込みでの紹介なんだ。
画像を待つことなくすぐに行けってことは相当やばいな。
そう思いながらしばらく待っていると、循環器科へ行くよう指示された。

循環器科で受付を済ませてしばらく待つ。
病院なんて待つ所だから本を持ってきていたけど、読む気になんてならない。
名前が呼ばれた。
診察の前に身長、体重、血圧を測る。
びっくりしたのが血圧だった。
上が165ぐらい、下が130ぐらい。
同じ週に受けた健診の時より、上も下も数値が爆上がり。
看護師のおばちゃんが不思議そうに言う。
「いつもこんなに高いんですか」
肺がんかどうかの診察を受けに来てて、緊張と不安で心臓はバクバクなんだから、そりゃ血圧も上がるだろう。
イライラしながらまた待つ。

再度名前が呼ばれて診察室に入る。
入るなりこう言われた。
「担当の○○です。画像がないのでレントゲンを撮ってきてください。」
いや待っている間に撮れただろ。
割と待ったぞ。
さらにイライラが増す。

レントゲンを撮りおわり、循環器科の受付にその旨を告げ、また待つ。
多分この日一番待った。
ひたすら壁を見ていたと思う。
ようやく名前が呼ばれて、自覚症状の有無などの簡単な問診の後、医師からこんな感じのことを言われた。
「本当は私が治療についてあげたいのだけど、この病院ではちょっと無理なので、ほかの病院を紹介します。このあたりだと、県立病院と大学病院になるのですが、どちらがいいですか。」
さっき撮ったレントゲンすら見せてもらうことなく、治療無理宣言。

えって声が出た。
死ぬじゃん。
どうなってんだ俺の胸の中。
少し間が空いて都合のいいほうの病院を告げると、
「それでは紹介状を書きますので、そちらへ行ってください。」
とあっさりしたもの。
紹介先の予約の調整は、医師とやったのか、地域連携センターみたいな部署でやったのかは覚えていない。
覚えているのはその時の感情だ。

この病院で無理ならダメだろ。
今から苦しんで、苦しんで死ぬのか。
イヤだな。
親より先に死ぬのか。
いや、親もそうだけど、じいちゃんより先に死ぬのか。
申し訳ないな。
35歳で初めて死を自分のこととして捉えた。

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