ピノコを宿した40手前のおっさんが婦人科に通う話 8

生検を受けるまでもいくつか検査を受けた。
まず歯科。
抗がん剤治療をすると免疫が大幅に下がり、虫歯菌で亡くなってしまう場合もあるらしいので、歯を見てもらい虫歯を治療。
さらに、抗がん剤はがんの細胞分裂を止める効果があるが、正常な細胞の分裂も止めてしまう副作用があるという。
特に細胞分裂が頻繁であるところに大きく影響が出るそうで、まず体毛、そして生殖器がそうらしい。
なので婦人科で精子保存をするかの話をする。
何がつらいって担当がきれいな女医さんでとても恥ずかしい。
そして本当に睾丸がんが無いか、泌尿器科で金玉をエコー検査。
おっさんの医師が容赦なく金玉をぐりぐりしてくる。
めちゃくちゃ痛い。
これはもう2度とやりたくない。

そのどこかの日、近所のコンビニで友人と会った。
病院帰りは平日昼過ぎの早い時間。
スーツでない自分を見た友人は
「ついに仕事辞めたのか」
と言いやがった。
うるせーよと言い返し、その後ちょっと迷った。
自分が病気であることを言うべきか。
いきなり言われて向こうも驚かないか。
まあでも言っておいたほうがいいだろうな、となんとなく思った。

いや、実は病院に行って帰ってきたところ。
なんか胸に腫瘍があるらしい。

絶句するというのはこういうことを言うのか。
友人は数秒固まったままだった。
ようやく言葉を発した。
「大丈夫なのか」
それは自分が知りたい。
でも心配してくれるのはとてもうれしい。
とりあえず、検査して入院治療することを伝えて、年末に飲む約束をした。
もしかしたら人生最後の飲み会になるかもしれない。
いつも通り何人かで集まって、馬鹿な話して終わる楽しい飲み会になるだろう、と思うようにした。

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