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味園ユニバース、エンディングのその先を観た夜

※いつも私的なことしか書いてませんが今日のはいつにも増して私的でわかりづらい内容です!最初から最後まで全部わたしの趣味のことが書いてあります!ご容赦ください!

前日、眠りについたのは5時前だった。最近仕事が本当に忙しく、眠れぬ夜勤を繰り返しているためわたしの体内リズムは完全にバカになっちゃっている。夜勤を終えても上手く眠れないことが多く単純に休息が足りていないため、ここ数ヶ月めちゃくちゃ風邪を引いてる。
今も実は病み上がりで、なのに睡眠が十分に取れてなくて、外は人が倒れるくらいの猛暑で、コンディションとしてはけっこう最悪。新幹線で寝ようと思ったけど心がザワザワして寝られない。
人に迷惑をかけないように。倒れないように。水分と糖質をしっかり摂ること、無理をしないことを自分に約束する。


わたしはライブ会場に向かっていた。渋谷すばると赤犬の対バン。会場、味園ユニバース。
生きているとこんなことがあるんだなあとしみじみ思う。

わたしが味園ユニバースという映画に出会ったのは...7〜8年前、関ジャニ∞を好きになってすぐ。メンバーが出ていた映画を片っ端からレンタルして、その中でいちばん心にひっかかったというかズドンと突き刺さったのがこの映画だった。ただただ、音楽と街だけが説得力を持った物語。魅了されて何度も何度も見た。レンタル回数が20回を越したあたりで買った方がコスパいいんじゃね?と気づいてDVDを買った。わたしが人生で初めて買った映画DVDだ。

ユニバースの眩しいネオンライト、カスミの着ている古着、ポチ男に着せられた古いバンT、卵焼きとご飯、公園で食べるバーガーキング、縁側のスイカ、全部が眩しかった。おしゃれなアイテムだからとか、ノスタルジーとか、エモーショナルとかじゃなくって。カスミ、マキちゃん、亡くなったカスミの父ちゃん、おじい、赤犬。みんな猛烈にカッコいいんだ。自分が好きなことと周りが楽しんでくれることと自分たちのできる範囲のことをわかって、擦り合わせて、全力を尽くしている。その生き様に付随している景色が眩しいんだ。
すばるくんのことがとても好きだったけど、だからこの映画を好きになったというわけじゃない、絶対にそれだけじゃなかった。

映画を観たあと、ポチ男はあれから歌う道を選んだのか、ずっと考えていた。エンドロールで流れる記憶のハーモニカを吹いたのがポチ男であって欲しいと思っていた。そして願わくば、あなたと赤犬の音楽をまた聴かせてほしいと思っていた。古い日記とココロオドレバだけでは足りない。全然足りない。もっともっと赤犬と歌い踊るあなたを見たい。エンドロールのその先を何度も何度も何度も勝手に頭の中だけで反芻した。

こんな風に書いてるけどポチ男はほんとクソ野郎、救いようのないやつで。それでもわたしは彼の歌が好きでたまらなくて、わたしだけが知っている(実際は全くそんなことはないのだけれど)彼の凄さに浸る時間が、恥ずかしくも、好きだった。

大阪旅行に行った時はわざわざ夜のなんばを恐々歩いてユニバースの写真を撮りに行って彼らに想いを馳せた。繁華街に迷い込んだ高校生のように足早に歩いていたけれど、あの日の景色はしっかりと残っている。
大人になった今、あの頃のわたしは難波という街に少なからず憧れていたんだろうなと思う。東京の映画で下北沢とか猿楽町とか円山町が出てきてそれに憧れるように、なんとなく悪い街なんばにわたしは憧れていた。今ならそれがちょっとサムいこともわかる。でも、ラジオで中川家がヤバい街やと言って笑ってることが少し羨ましく感じてしまう。これが良い感情ではないことはわかっているんだけど。

就職したての4月の半ばには、研修が終わったあとダッシュして電車に乗って、川崎の映画館で味園ユニバースのリバイバル上映を見た。映画館の音響で味わう赤犬とポチ男の演奏は最高で、本当に最高で、1人だったら絶対に踊り回っていた。余韻に包まれながら電車に揺られ、想いを馳せる時間。社会人になって最初の贅沢だった。あれは彼がグループ脱退を発表する、ほんの数日前のことだった。

わたしはすばるくんの歌が本当に好きだった。
過去形じゃなくて、今も好きだ。グループで誰が好きと聞かれたら違うんだけれど(丸山くんの大ファンです)、すばるくんがいなかったらここまで熱心にグループを応援していなかったと思う。あのときのわたしにとって彼の歌声はグループの代名詞だった。歌声に心をバシバシ叩かれるはじめての経験。
彼らの世界に強引に手を引いてくれたのは、彼の歌声だった。

ひとりで歌うことを選んだ彼の歌をわたしは聴いていた。CDも買っていた。でも、ライブには行っていなかった。いつか行く日が来るんだと思っていたけど、行っていなかった。
行けなかったのか行かなかったのかとかは分からない。なぜなのかはうまく説明ができないんだけれど、とにかく行けずにいた。

それでも彼の歌はわたしの遠い場所にあるわけではなかったし、毎年夏には味園ユニバース上映会をひとりで開いていた。

そして、今年の3月か4月か。すばるくんのライブの情報がTwitterで流れてきた。

赤犬、渋谷すばる、対バン。会場は味園ユニバース。

夢なのか?と思った。あの頃のわたしの夢。行くことを全く迷わなかった。味園ユニバースに住んでいる人なのか?というくらい迷わなかった(実際は片道13000円です)これに行かないとわたしは一生後悔する、そしてわたしはこれに行かないと一生すばるくんの歌声を聴けないと思った。

そして当選。楽しみで体がビリビリ震えた。

ライブの当選発表からほどなくして、老朽化のため味園ユニバースがなくなることを知った。いつも聴いている金属バットのラジオで。もったいないなあアホやなあと2人は嘆いていた。
味園ユニバースですばるくんと赤犬の演奏を聞く、ほんとうにほんとうに最後のチャンスだったことをわたしは知った。

立っているだけで汗が吹き出す、うんざりする暑さの大阪の街を歩き、会場に着いた。

グッズ列でひしめき合う道路の真ん中に、チリンチリンとベルの音が響く。自転車の荷台にアサヒビールの缶がぎゅうぎゅうに詰まった袋をくくりつけたおじいちゃんが、くわえタバコでチャリを走らせていた。そのビジュアルが、もう完全にカスミのおじい。仕込みか?というくらいおじいすぎて笑ってしまった。山下監督がなんばという街をいかに細かく表現したのか伝わってくる。
ていうかその少し後、普通に山下監督が道に立っていてまた笑ってしまった。どんな街なんだよマジで。わたしの人生いちばんの映画をありがとうございます…と伝えたい想いを堪えてグッズ列に並び続けた。


割と前半の整理番号だったけれど、暑すぎるせいで時間が何倍にも長く感じる。ようやく入場すると、キラキラと小さなライトが光る天井に、惑星のようなミラーボールがいくつも吊り下げられている。この映画のロケ地には何ヶ所も足を運んでいたのだけれど、味園ユニバースの中に入るのははじめてだった。夢の中にいるような気持ちでずっとキョロキョロと会場を見渡していた。

赤犬の演奏はそれはそれはすごかった。映画の中にいるよう、嘘みたい、と何度も思った。
めちゃくちゃだった。めちゃくちゃで最高。客席に降りてチークダンスを踊るし、ぬいぐるみを投げ入れるし、半被で組体操をするし。
心の奥底が勝手に踊り出す楽しさ。全人類の遺伝子に組み込まれている、音楽が好きという気持ちが勝手に騒ぎだすような、そんな演奏だ。
レインボーの蛍光灯がチカチカと彼らを照らす。ミラーボールが踊っている。

タカさんが"酔わせてよ"と歌い上げると、頭がぼうっとする。あの映画から10年その先の、物語じゃない彼らがそこに息づいている。嘘みたいに思うのは映画だけが好きなわたしのエゴで、彼らはずっとここでこうやって歌ってきたんだ。味園ユニバースという映画は、昭和っぽい空気が漂っているけれど、バリバリ2015年のその頃のリアルタイムの物語だった。カスミがパソコンで大森茂雄と検索するまでわたしは映画の時代背景に気づかなかったくらいだ。あの昭和の雰囲気は、赤犬と難波という街がそうさせたんだろうな。

そして、渋谷すばるが登場した。
表情が見える。サイズ感も伝わる。7年前東京ドームで見た彼が、今すごく近くにいる。

明日世界が終わってしまうかのように叫び、歌う。突然へらっと崩れる笑顔も、口を真一文字に結んでバンドを振り向く姿も、客席ひとりひとりの目をじっと見つめ言葉を繋ぐ姿も、大好きなすばるくんだった。
眩しくて眩しくて、直視できない。伝えたい、届けたいという彼の想いがこれでもかと乗っけられた歌声に息が止まりそうだった。そしてバンドがすげえかっこいい。わたしに音楽を評価できる語彙力はないんだけれど、スッゲーかっこよかった。痺れた。(本当に語彙力がないな)

彼は、変わらず、歌の持つ力を心の底から信じていた。自分の進む道を、自分で正解にしていた。

"歌が必要だ"と高らかに歌う彼に、
"うちにはあんたの歌が必要や"とぶっきらぼうに伝えるカスミの顔が重なる。カスミ、どこかで聴いてる?この人には歌が必要だったんだよ。

少し前の話になるが、FIGHTの"あ"という曲がすごく好きだ。
針金のような鋭さやお腹の底に響く迫力、メッセージをこれでもかと伝える芯のある歌声…彼のイメージというとそういうものが多いかもしれない。でも、世界をあたたかくまあるく包む魅力も、彼にはある。"あ"という曲の中にあるそれが、わたしはとても好きだった。DVDに映る幸せそうな表情で一緒に歌うお客さんたちがすごく羨ましかった。

わたしはそのあたたかさに包まれていたんだ。彼を好きになってから、ずっと行ってみたかった場所だった。音楽と言葉に乗せられた彼の愛に、全身がすっぽり包まれていた。心底幸せだった。

歌い続けることを選んでくれて、この場所に連れてきてくれてありがとうと、彼のステージの間ずっとずっと思っていた。


アンコール。カツカツとすばるくんが出てきた。歓声を切り裂くように、古い日記を歌った。それは間違いなくポチ男の歌声だった。冒頭のワンコーラスだけだったけれど、胸に熱っつい焼印をジュッと押されたような気持ちだ。もう消えないよこんなの。あの歌を文章で表現なんてできないのが悔しい。わたしの心をひん剥いて焼印を見せたいくらいだ。

そして赤犬が登場。
ココロオドレバを歌うんだってさ。夢?本当に?もうあの客席の一体感といったら。全員が全員、半端じゃない熱量で望んでいたことが初めて分かった。嬉しいね、嬉しいね。ここにいるみんなすばるくんが、赤犬が、味園ユニバースが大好きなんだね。

心ゆくまで踊った。体が勝手に動いたし、歌っていた。もう歌っているのが茂雄でもポチ男でもすばるでもタカでもロビンでもマジでなんでもいい。(いい意味です)
共感性羞恥がデフォルトで、ひたすらに人の目を気にして生きているわたしの心のタガが、イントロを聴いてピーンと外れた。見えたよね、外れる瞬間が。もうなんでも良かった。嬉しくて、楽しくて、幸せで涙が止まらない。おいおい泣いているのに顔は笑顔で体は踊っている。(怖い)
大好きな映画の世界と音楽に包まれている。ここが私のディズニーランドだ、一夜限りのディズニーランド。本当にこれが最初で最後。
なんていうか、脱がされたんだ。いつも分厚く纏ってるやつを。すばるくんと赤犬の音楽が、わたしを踊らせたんだ。

わたしがずっと見たかった、味園ユニバースのエンドロールのその先がそこにあった。ポチ男を演じた彼が今も歌い続けてくれている。困難も後ろめたさもあったかもしれないけれど、歌を必要として、その道を選んで走っている。そして、わたしその歌を受け取ることができた。7年の時が流れて、ようやく。
なんて素晴らしいことなんだ。こんな日が来るなんてね。

楽しいだけでいいんだよなあ音楽って。
歌が好きな彼に、楽しそうな彼に会うことができて、そして大好きな映画の世界にこっそり入れてもらえて、特別な場所で夢のような一生忘れない夜を過ごすことができた。

ありがとうね、味園ユニバース。この会場はこんな夜を何度重ねてきたんだろう。
寂しいけれど時は流れていく。時が流れるから失うものと、時が流れたからもう一度出会えたものをわたしはどちらも抱きしめて、ポチ男のように箱にしまっておく。

大地蹴って 振り返って ほら急がば踊れ
長いものに蓋をして 
ありのままでいい さあ詠え

ココロオドレバ/渋谷すばる



そしてこれは本当に私的な追記。会場で隣にいたすばるくんファンの10代の女の子2人組が優しく話してくれて、救われました。はじめてのすばるくんライブなのと病み上がりオールスタンディングなのとでかなり緊張していて、途中で体調悪くなったりしないかも不安だったんだけれど…長い待ち時間お2人と談笑させてもらってリラックスして過ごせて、気づいたら開演時間になっていました。感謝しています…また会えたらいいなあ。

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