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薄っぺら

人の人生はいい。
そんな、隣の青い芝を眺める様にグラスに口をつけた。
グラスの中には、どこの誰ともわからない人の人生が気泡を立てている様に感じられた。まるで知らずに通り過ぎる車の灯りの様に、ただ登って溜まり行く。
口に含むと、隣で話す誰かの人生を知ったことの様に想像した。
涙を飲む様に、ホップの香りは喉を過ぎて行く。
私は、私の薄っぺらい人生を後ろめたく思う。こんなにも空っぽだから、人の話に満たされるのだ。
それでも、こんな薄っぺらさがきっと、人の気持ちを知らせてくれるのかもしれない。そう思うとこんな日々も悪くはない。
グラスの底がテーブルに着くと、カタンと音を立てて今日を仕舞った。

#風見office
#風見かおる
#短文

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