第5話 崖っぷちは落ちてからが勝負

5way
部長補佐。
そう奴は宣った。
うちの会社では、部長を補佐出来る偉い人という意味であって、それはすなわち、私より四階級も上なわけだ。
「つまりですよ、課長。私の方がうえなのですよ。ほほほ」
ビッグバンの如き殺意の誕生であった。
つまり、相対的に私は落ちたのである。佐伯のアホより下なのだ。クビだと言われれば辞めなきゃならん。
そんな馬鹿げた話があるものか!
「オホホ、のついでに課長はクビです」
……あるのだった。早々にドン底である。あれなのですかね、 人はきっと突然殺人鬼になるのではないでしょうか。

なんというか、佐伯君はいつの間にか上司になり、いつの間にか……言うなれば私は無職になったわけだ。
急展開と言うか超展開と言うべきか、そこはそこはかとなく定かではないのだけれど、妻は私を責めるでも貶すでもなく、ただ悲しい顔をして家を出て行ったという状況に鬱展開だと言えるだけの自負はある。
そんな32歳の夜である。

崖っぷちというには、足元に土はないし、浮遊感と言えば、どちらかというと急速な落下速度をそこはかとなく感じるわけで。
すなわち私は人生の崖っぷちで突き落とされたのであった。

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