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カテゴリーエントリーポイント(CEP)をつくる視点

 ドラッグストアやスーパー・コンビニで売られている多くの商品は、
「買わない理由があって買われていない」わけではなく、「買う理由がないので買われない(無関心)」状況にあるのではないでしょうか。
 そうだとすると、買ってもらえない理由を一生懸命考えるよりも、買う理由をつくることに注力すべきなのではないかと考えています。
 買う理由をつくるとは、必要な時に必要な場面で想い出してもらう(想起に入る)状態をつくることです。
なぜ想起が重要なのか、その想起をどのような視点でつくっていけばよいのかを解説します。

エボークトセットとは?

エボークトセット(Evoked Set)とは、消費者が購買決定を行う際に思い浮かべる商品やサービスのブランド群を指します。このセットに含まれるブランドは、購入の選択肢として上位に位置付けられるため、非常に重要です。

なぜ想起が重要なのか?

消費者が商品を選ぶ際には、多くの選択肢の中から特定のブランドを思い出し、それを基に購入を決めます。
ブランドが消費者のエボークトセットに入ることは、市場での見込み顧客にとっての存在感を確保し、売上機会を増やすことに直結します。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは?

カテゴリーエントリーポイント(Category Entry Point)は、消費者が商品やサービスを購入しようとしたときにブランドを想起するきっかけやヒントのことで、当該カテゴリーを想起するきっかけとなる「状況」や「目的」を指します。
このCEPとブランドを紐づけることで、カテゴリー想起のきっかけ=ブランドの状態をつくることができます。この戦略は、ブランドの市場での優位性を築く上で非常に重要です。

なぜカテゴリーエントリーポイント(CEP)が重要なのか?

CEPはブランドが消費者の意識の中で「最初に思い浮かぶきっかけ」となることを意味します。
これにより、競合他社よりも先に考慮される可能性が高まり、購買確率が向上します。
最初に思い浮かぶ選択肢をつくることで、買われる理由を意図的につくることができます。

CEPは指名検索にもつながる

消費者が特定のブランド名を直接検索する行動は、CEPの強化が直接的に影響します。
強いCEPを持つブランドは、指名検索が多くなり、それが直接的な売上へとつながります。

CEPは目的CEPと場面CEPに分けて考える

目的CEPは特定の目的(例:「日常を忘れたい」)で、場面CEPは特定の使用シーン(例:「仕事終わり」)でブランドが思い浮かぶことを指します。 これらを明確にし、生活の文脈につなげていきます。目的CEPPOD起点で考え、PODを反転して目的に転換してみるとよいでしょう。
※POD(Point of Difference)は、他の競合とは異なる独自の提供価値のことを差します。


POD(独自価値)を反転して目的化するとは

「非日常感を提供できる」という独自価値があった場合、
「日常を忘れたい」という目的(ニーズ)を求める人にとって、この独自価値は「ストレスを解消できる」という便益になります。
独自価値が便益になれば、目的(ニーズ)を満たせるということになります。なので、独自価値を目的に変換してみることをおススメします。

CEPを目的と場面に分けて考える

これは私が考えてみたディズニーリゾートのCEPです。
非日常感を提供できるというPODを目的化すると「日常を忘れたい」になり、その目的が発生するシーンを場面CEPとして「仕事終わり」と設定します。
そうすると、CEP=仕事終わり(場面)の、日常を忘れたい(目的)時にいく場所 となります。

想起させるには、生活者の脳内に刷り込みをしていく必要があります。
そのためには、具体的にイメージできる共感できるクリエイティブによるPRや広告が必要となるでしょう。目的と場面を普段の生活の文脈につなげることで具体的にイメージできる状態がつくれます。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)をつくる際の考え方

CEPをつくるには、PODを再定義することが必須と考えます。
この独自性がCEPを形成し、ブランドを特異的なものとして消費者の心に残ります。(POD→CEP=ポジショニング)

PODを再定義する3つの視点

①    誤った認識を正す

市場に存在する誤解や誤った情報を正し、ブランドの独自の価値として強調します。
これにより、消費者が持つネガティブなイメージを改善し、ポジティブなブランド認識を構築することが可能です。
例)冷凍食品は添加物が多い
・・・これは誤った認識なので、その認識を正すため無添加を強く打ち出す 
   ことで、POD化(独自の価値化)をしていきます。

② 潜在的な諦め(トライアルバリア)を解消する

消費者が「このカテゴリーはこういうものだ」と思っている潜在的なバリアを取り除くことで、新たな利用シーンや価値を提案します。
これにより、ブランドの利用機会を広げ、CEPを形成します。
例)冷凍食品は野菜感がない
・・・多くの人が言っているわけではないが、「言われてみたら確かに」と
   共感されるネガティブは、潜在的に諦めていること=期待していない
   ことと捉えることができます。
   言い換えれば、潜在的に利用を阻害している要因(バリア)ともいえ
   ます。
   この潜在的トライアルバリアを解消させることで、
   POD化(独自の価値化)をしていきます。

③    潜在的な良い点を強調する

カテゴリー内であまり知られていないが、有益な特性やメリットを消費者に提示することで、ブランドの魅力づけをしていきます。
これにより、消費者の関心を引き、CEPの確立に寄与します。
例)冷凍食品はとれたて感・作りたて感がある
・・・多くの人が言っているわけではないが、「知る人ぞ知るよさ」
   冷凍食品は新鮮さがないと思っている人が多かったとすると・・・
   「とれたて・作りたての品質を保つことができる」ので、
   「いつでも作りたてを食べられる」「いつでも旬の食材を食べられ
   る」という点を冷凍食品のよいところと認識し
   ている人の声は、「潜在的なよいところ」といえるでしょう。
   言い換えれば、潜在的に損をしている要因(潜在的機会損失)ともい
   えます。


POPがあってはじめてPODがいきる

上述の通り、CEPをつくるにあたってPODが重要であることをお伝えしましたが、PODを効果的に機能させるためには、POP(Point of Parity)、つまり競合と同等の基本的な価値や機能を持つことが前提です。
消費者がブランドを信頼し、選択肢として考慮するためには、競合と同様の水準を満たす必要があります。このバランスが取れたとき、PODの独自の価値がより際立ちます。
POPなくしてPODなし。PODがあってもPOPが満たされていなければ、その時点で「買わない理由」になってしまいます。

POPあり + PODあり → POD=買う理由、POD≒CEP
POPなしPODあり → POD≠買う理由、POD≠CEP

カテゴリーエントリーポイントをつくるための価値再定義フレーム(パターン1を公開)

(image)

STEP0. 定性的定量調査を実施
STEP1. カテゴリーのネガティブなイメージをアフターコーディング処理
STEP2. アフターコーディング後に、いくつかのポイントでフラグを立てて 
    いく(このフラグが肝)
STEP3. ネガティブなイメージから、想像を掻き立てて生活の文脈をつくっ 
    ていく
  そのネガティブなイメージからどんなトライアルバリアがありそうか
  そのトライアルバリアを解消できたらどんなPODになりそうか
  そのPODを求める目的(ニーズ)はどんなものがありそうか
  そのニーズは生活上のどんな場面で登場するか
  競合はどんなものがありそうか(競争次元の確認)
STEP4. これらを複数パターン作っていき、CEP案を策定
STEP5. そのCEP案をプリコード化し、検証の定量調査を実施
STEP6. 検証結果を受けてCEPを決める
STEP7. 生活者に共感されるキャッチコピーを作成する
   (場合によってはこの後共感度の検証をいれる)
STEP8. タグライン・キービジュアルを作成する

おわりに

定量調査を主体としたリサーチでCEPをつくる際の考え方について解説しましたが、定量調査であってもn=1に目を光らせること、全てデータありきで考えるのではなく、1の真実に解釈を加えて文脈をつくっていくことが重要です。
そしてお客様と対話をしながら一緒につくりあげていくことが必要となります。

CEPブランディング
カテゴリーエントリーポイント(CEP)の理解と適切な構築は、ブランドの成功に直結します。
今後も、効果的で実用的なCEPのつくりかたの研究・検証に励んで参ります。

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