銀行は、どのようにSDGs達成に貢献できるか?~きらぼし銀行で勉強会を開催しました
SDGsというワードが、企業だけでなく、金融機関にも浸透してきています。SDGsに取り組む企業が増えているから、金融機関も目を向け始めている。と同時に、金融機関がSDGsを重視するから、企業もSDGsを意識する。そんな相互作用で、両者に広がっているようです。
なぜ、銀行でSDGs勉強会なのか
ケイスリーは、昨年から「SDGs×評価×金融」という、SDGsへの貢献を見える化し、それを新しいお金の流れにつなげる取り組みを神奈川県と進めています。
一方、きらぼし銀行さんでは、「取引先企業からSDGsに関する相談が増えてきて、銀行として何ができるのか考えたい」「企業の実態を多面的に把握する事業性評価に加えて、社会的・環境的価値も含めた判断が必要なのでは」といった問題意識から、有志のSDGs勉強会が始まっていました。
12月9日、この2つの流れが交わるかたちで、きらぼし銀行で「SDGs×社会的インパクト評価」勉強会を開催することになりました。
金融機関がSDGsを考える2つの理由
銀行を含め、金融機関がSDGsを考える理由には、大きく2つあると考えられます。
1つは、持続性や成長性の高い企業を選別し、資金提供をするため。社会全体がSDGsに向かうとき、社会に負の影響を与える企業は淘汰され、正の影響を与える企業が生き残っていく、という選別が起こると考えられます。つまり、企業の社会的・環境的影響を考えて、正の影響の大きなところに資金提供をすることは、これからの社会に必要とされる企業、すなわち、持続性や成長性の高い企業を選ぶことにつながる、という考え方です。
2つめは、金融が経済の心臓部だから。金融は、資本主義経済に資金という血液を送りだす心臓の役割を担っています。どんな血液を送るかによって、社会のかたち変わると言えます。単純化、極論化してしまうと、SDGsに逆行するような企業に血液を送れば、そうした企業が活躍する社会に、SDGsを牽引するような企業に血液を送れば、そうした企業が活躍する社会をつくることができる。自らを介したお金の流れを変えることで、何もしなければ行き詰まってしまう社会を、持続可能な社会に変えられる可能性がある。自分自身が持続可能な社会の一員であり、そして作り手でもある、という考え方です。
大きな流れに適応していくのか、自らがその流れをつくるのか。どちらが正解というものではありません。しかし、SDGsの中心的目的が「Transforming our world(我々の世界を変革する)」であることを考えると、その変革の起点となる人や組織が生まれていくことが、SDGs達成にはとても大事なことだと言えます。
ロジックモデル作成体験で見えたこと
勉強会では、実際の融資先企業を例に、企業活動がどのような社会的影響をもたらしているかを可視化する「ロジックモデル」作成をグループで体験してもらいました。ロジックモデルとは、企業の活動と、それによるアウトカム(社会への影響や成果)を構造的につないでいくフレームワーク。アウトカムは、初期的なものから、長期的なものにつないでいきます。
ワークショップを終えて、こんな気づきが共有されました。
・活動や事業に近いことは考えやすいが、そこからどのようなアウトカム(社会的な影響や成果)につながるかは普段考えたことがなかった。
・企業の小さな業務一つで、社会にこんな影響を与えているのだと実感できた。
・長期的アウトカムが、企業理念に近いものだと感じた。それが事業の目的や意義を表しているのでは、という気づきがあった。
短時間の体験ながら、銀行と企業間の融資・返済を中心に見る目線から、その向こうの社会とのつながりや、企業がその事業の先に目指しているものを見る目線へと移り、視界が広がったことが感じられました。
銀行が変革の「起点」となる可能性
最後に、「きらぼし銀行が社会的・環境的価値を創出するために、何ができるか?」をテーマにディスカッションをしました。8グループそれぞれに異なる視点の提案が出て、銀行ができることの幅の広さに気づかされました。
・SDGsに向かって活動する会社がまだ少ない中、銀行がそれを一緒に考えるコンサルティングができるのでは。
・事業性を理解するという方針をさらに進めるため、融資判断に社会的・環境的価値等も取り入れていく。
・ビジネスマッチングなど、課題解決のための事業支援。
・銀行の強みである「情報」を活かし、良い事業をやっている事業者の情報発信を支援する。
・課題解決のためのファンドを作るなどして、子供を育てやすい環境をつくって少子高齢化の改善につなげる。
・ペーパーレスを進めることで、環境負荷を下げ、コストと時間を削減し、生まれた時間を企業との対話に使う。
・SDGsへの取り組みに対して短期的には財務リターンがとれなくても支援する。
・自分が預けているお金が何に使われているかを預金者に伝え、預金者の意識を変える。
何より、これらが外部の評論的な意見ではなく、銀行の中で働く方々の中から出てきたことに、「変革」に向かっていく大きな可能性を感じました。
資本主義社会の心臓部である金融には、社会を変える力がある。今回、その一端を担う銀行で、志ある皆様と学びの場を持つことができ、その感触を改めて掴むことができました。こうした機会を作ってくださった運営側の皆様、夜遅くに集まってくださった参加者の皆様、どうもありがとうございました。
これからも、金融機関の方々と議論を重ね、可能性を広げ、そして具体的な行動へとつなげ、一つでも多くの変革の「起点」を共につくっていきたいと思います。
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