神奈川県SDGs社会的インパクト・マネジメント実践研修【第6回】レポート

2019年12月17日、SDGs社会的インパクト・マネジメント実践研修の第6回を実施しました! 全10回の研修もいよいよ後半戦。今回のテーマはインパクト投資の実践と社会的インパクトマネジメントにおける指標設定の手法でした。

参加者の目的共有

本研修における目的・獲得目標について、支援者の方達からは以下のような意見が出ました。

・相談相手となる中小企業の事業はまだ社会的インパクトが大きくない状況。そのため、その前段階の整理として、事業者の皆さんと一緒に社会的インパクト評価の研究会を行おうと考えています。

・支援をしてきたNPOの、これまでの取り組みが社会的に価値あるものだったことを証明するために、社会的インパクト評価を行いたいと考えています。

『インパクト投資の実践とエコステム構築へ』

〜 新生企業投資のインパクト投資のご紹介〜

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新生企業投資の黄(ファン)さんに、インパクト投資の概要、投資先の選定基準や投資プロセスについて講義していただきました。

銀行での勉強会報告

神奈川のSDGs社会的インパクト評価実証事業に参加している地方銀行で、行内勉強会を行ったときの様子を報告しました。

「銀行が社会的・環境的価値の創出に向けてできることとは?」に対して出た意見

・SDGsに向かって活動する会社がまだ少ない中、銀行が一緒にそこを考えるコンサルやビジネスマッチングができるのではないか

・財務だけではないトータルでの事業性を重視するという方針を持っているので、それを融資判断にいれることができる

・良い事業をやっている事業者をアピールしてあげることができる

・課題解決のためのファンドを作るなどして、子供を育てやすい環境をつくって少子高齢化の改善につなげるべき

・SDGsへの取り組みに対して短期的な財務リターンがとれなくても支援すると腹をくくる

事業者の進捗共有

計画フェーズのおさらいをする前に事業者の実施状況を以下の観点で共有していただきました。

①当該事業の社会的インパクトを考える/見るために「工夫した点」

②計画立案において、「難しかった点」

③その他 得られた「気づき」や「学び」

難しかった点

・指標を取るのが難しかった。「市民の意識変容」をいかに計測するのか分からなかった。

・他社の先行事例が少なく、自社の計測結果が良いのか悪いのか判断しづらかった。

・課題が不明確なままでは計画しづらい。

指標設定の留意点

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リハビリ型デイサービス事業者の事例を元に、指標設定の留意点について講義と質疑応答を行いました。指標を設定する時に留意すべきは以下の点です。

・ロジックモデルに基づいて検討する

・ロジックモデルと指標を往還する

・既存の指標にとらわれない

質問1:「既存の指標にとらわれない」で指標の正当性は担保されるのか?

回答1:その分野の専門家に相談したり、引用数の多い論文やSIMIのツールセットなどをを参照するという方法があります。

質問2:やはり指標に正当性がないと第3者からみて社会性評価への信憑性が無いのではないか

回答2:その通りです。だからこそ指標設定に専門家の裏付けがあると(例えば介護事業なら医療専門家の裏付けがあると)信憑性が上がります。

質問3指標の厳密性はケースバイケースか?

回答3:そうですね。目的次第です。投資家とのコミュニケーションが目的なのか、事業改善が目的なのか、何にウェイトを置くかで指標設定の厳密さは決まります。

グループワーク(事業者・支援者)

ロジックモデル、指標設定のブラッシュアップを通しての気づき

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・事業実施しながら社会的インパクトに足りないものに気づくことが多い。それがインパクトマネジメントの有用性かもしれない。

他業種の方と議論すると新しい発見を得ることが多い。

・やはり指標に出典の根拠があった方がいいのか迷う。

・「負のインパクトを減らす」という目線でしかロジックモデルを書けていないことに気づいた。「正のインパクトを増やす」ことも考えなくてはいけないと思う。

誰に説明するためのロジックモデルなのか? を考えたとき、関係者の整理を改めなくてはいけないことに気づいた。多様なステークホルダーから重要な対象者を絞ることができた。

資金提供者のグループワーク

資金提供者にとって社会的インパクト・マネジメントの意義とは?

・なぜその事業を始めたのかというビジョン、そのビジョンを達成するために必要なビジネスモデルを整理するもの。

・事業ごとにロジックモデルが必要かもしれない。それが統合されて企業のロジックモデルになると思う。

・ロジックモデルは対話のツールになる。金融機関の強みとしてビジネスマッチングの足がかりになり得る。

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まとめ

本日は研修前半の計画フェーズの振り返りを行うとともに、指標設定の具体例に入りました。インパクト投資の実践者である新生企業投資様に、インパクト投資の概要、投資先の選定基準や投資プロセスについてお話いただき、議論しました。次回は参加者の皆様にそれぞれ指標設定を実践していただきます。


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