インパクト投資のもやもやを考える(3):そもそもインパクトとは何なのか
「インパクト投資」をもやもやさせる根源の一つは、そもそも「インパクト」とは何なのかが曖昧なことにあると思う。
3回目にして振り出し以前に戻るようだけれど、手始めに「インパクト」を辞書で引いてみる。
【インパクト】
①衝撃。強い影響や印象。
②野球・ゴルフ・テニスなどで、ボールがバット・クラブ・ラケットに当たった瞬間。
(広辞苑)
「インパクト投資」という時の「インパクト」は、①の方だろう。けれど、「衝撃」ではないし「印象」でもないので、辛うじて①に引っ掛かる程度といえなくもない。
そこで、英語の「impact」を引いてみる。
【impact】
1.the action of one object coming forcibly into contact with another
2.a marked effect or influence
(オックスフォード新英英辞典)
こちらだと、2の意味、すなわち「効果や影響」が割とストレートに当てはまる。
ということで、「インパクト」という言葉のわかりにくさは、「impact」と「インパクト」の意味がまったく同じでないにも関わらず、「Impact Investment」→「インパクト投資」と翻訳し、輸入したところに起因するのかもしれない。もちろん、それはほんの一部の理由に過ぎないにしても。
そしてインパクト投資の文脈になると、「インパクト」はこう説明されている。
ー What is impact?
Impact is a change in an outcome caused by an organisation. An impact can be positive or negative, intended or unintended.
(インパクトとは、組織に起因するアウトカム《効果・影響》の変化のこと。正もあれば負もあり、意図されたものもあれば意図されないものもある。筆者訳)
出所:Impact Management Project ウェブサイト
英語の「impact」も、日本語の「インパクト」になるとなおさら、まだ辞書上はここまでの意味を持たない。やがて「インパクト投資」がもっと広まれば、辞書に新たな意味が加わる日が来るかもしれないけれど。
というわけで、「インパクト投資」の中では、「インパクト」が一般名詞ながら、辞書以上の意味を含んで使われていることを改めて確認したところで、サイコロを振りなおし、話を前に進めたいと思う。
次回は、「インパクトを理解するには5つの側面を見よう」という、Impact Management Project(国際イニシアチブ) の枠組みに乗って、「インパクトとは何なのか」を考え進めていきたい。
(文/今尾江美子)
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