(創作物語)聖ヴァンパイア~呪われし運命~ その20 『魔女アデリーヌの躍進』

前回までのあらすじ
 ついに魔女アデリーヌは、騎士ヨーセフとドラゴンが持つ指輪を手に入れてしまう。強大な力を得た魔女アデリーヌ。一目散に逃げることになるオマリ、犬のミンミ、騎士ヨーセフ、ドラゴンの4人。泣く泣く魔女アデリーヌに操られたままのナイルス、フレーゲル、ネヴィルを置き去りにし、始祖ネーブロスが眠るとされる塔の前に戻ることになるが果たして、、、、、。
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 オマリ「はぁ、はぁ、はぁ、、、、、」

 犬のミンミ「ここまでくれば追ってこれないだろう」

 騎士ヨーセフ「、、、、何たる不覚!!!我としたことが」

 ドラゴン「まあ、そう言うな。あの状況で逃げられただけでも命拾いしたわけだ」

 犬のミンミ「少しは感謝してほしいくらいだよ。あの魔女アデリーヌの指輪が奴の元に戻ってしまったのだからな」

 犬のミンミはギョッと騎士ヨーセフを睨みつける。

 騎士ヨーセフ「随分とたいそうな物言いだな。我が聖剣エクスカリバーでもあの魔女には太刀打ちできなかったとでも言いたげだ」

 犬のミンミ「ふんっ、そんなおもちゃのような剣、何の役にも立たないね」

 騎士ヨーセフ「貴様!!!言わせておけば!!!」

 ドラゴン「ヨーセフ、やめておけ。その犬のミンミとか言う者、見た目に騙されてはならぬ」

 犬のミンミ「そこのドラゴンさんの方が、この状況をよくわかっているみたいだな」

 歩きながら話す4人。

 オマリ「ところで、お前たちはなぜあの洞窟にいたんだ?それに、なぜあの魔女の持ち物の『指輪』を持っていたんだ?」


 騎士ヨーセフとドラゴン

 魔女アデリーヌと始祖ネーブロスの関係


 騎士ヨーセフ「この指輪は、我が聖騎士一家カルモナに代々伝わる指輪だったのだ」

 ドラゴン「ありとあらゆる者を手懐けることのできる魔力を秘めた指輪」

 騎士ヨーセフ「そうだ。ある日、私の祖父がいつものように魔物退治から帰ってきたときのこと。とある魔物の身体から出てきた一つの指輪があった。祖父は珍しくその指輪を持ち帰り、日々眺めては形見離さず持ち歩いていた。しかしある日、解呪師であった祖母の目にとまるとその指輪は、呪いの力を発揮し始める。祖父は次第にやつれ、目がくぼみ、徐々に身体が動かせなくなってきた。そんな祖父を見て解呪師としてその指輪の呪いを解こうとした祖母。信心深かった祖母は、ある日指輪の呪いを解くために、とある山の山頂にある神が降りられるとされている祭壇に祖父を連れて行くことになる。山の中腹で半ば倒れかけていた祖父を半分背負い、力の限り山頂まで連れ出してくれたらしい。しかし、山頂に着いたとき、祖母は天に願いをかけると一人の神が降りてくる。その神は祖父にかかった呪いを祖母に移すかわりに祖父には鍛冶屋としての腕を授けると問いかけてくる。祖母はその契約を飲み、そしてまた、その信心深かったことが逆に仇となり、魔女アデリーヌとなってしまう。呪いから覚めた祖父は、魔女アデリーヌとなった祖母を救うため、神から授かった指輪に魔女アデリーヌの魂を吸収させ、魔女アデリーヌの指輪に魂を封印させることに成功した。が、祖母の魂は封印されると共にこの世を去ることになってしまう」

 オマリ「じゃあ、あの魔女アデリーヌは、、、、」

 騎士ヨーセフ「そう。我が祖母が祖父の呪いを解くために、自らの肉体と引き換えに成り果てた姿。何かの原因で、指輪の封印が解け、以前の姿に戻っている魔女アデリーヌだ」

 犬のミンミ「何の因果か、魔女アデリーヌがお前の祖母とは、、、、な」

 騎士ヨーセフ「呪いを解かれた祖父はその後、鍛冶屋として生き、魔女アデリーヌの姿に祖母を重ね苦しんでいたのかもしれない。そして、祖父は復活してしまった魔女アデリーヌを討つために、鍛冶屋としてこの聖剣エクスカリバーを鍛え上げることに成功した」

 オマリ「で、何が原因で魔女アデリーヌはあの指輪から復活できたんだ?封印されていたのだろう?」

 騎士ヨーセフ「それには、ペデルセン族が関わっているとされている。お前たちヴァンパイアの中でも光の中を歩くとされるあの特殊な種族さ」

 ドラゴン「光の中を歩くヴァンパイア『ペデルセン族』は、魔女アデリーヌと深い関係にある、、、、、。死の聖典を介してな」

 オマリ「死の聖典?」

 ドラゴン「魔女アデリーヌが誕生したその時、神は邪悪なパワーをリングに、聖なるパワーを聖典に閉じ込めた。しかし、閉じ込められたとはいえ、魔女アデリーヌの強大な闇の力は聖典までに及び、聖典は死の聖典と変化してしまった。そして、魔女アデリーヌは死の聖典と人間の血を使って、最初の生きる屍としての最初のヴァンパイアを生み出すこととなってしまう」

 オマリ「それが、始祖ネーブロス、、、、。ん?誰がその死の聖典を使って最初の始祖ネーブロスを誕生させたんだ?」

 ドラゴン「神から聖なるパワーを注入された書物は聖典となったが、すぐに魔女アデリーヌの闇の力で死の聖典と変化してしまった。そして、魔女アデリーヌは神からこの死の聖典を奪うと、最初の人間であった騎士ヨーセフの祖父の血を使い、始祖ネーブロスを生み出したとされている。騎士ヨーセフの祖父は死際に魔女アデリーヌとなった祖母と接点があった」

 オマリ「始祖ネーブロスは、光の中を歩けるのはそのためなのか、、、、じゃあ、俺たちのような陽の光の下を歩くことができないヴァンパイアはどうやって生まれたんだ?」

 ドラゴン「始祖ネーブロスの誕生後、始祖ネーブロスは徐々に仲間を増やしていった。聖典の聖なる力を持ちながらも魔女アデリーヌの邪悪なパワーを持つ類稀なヴァンパイアの始祖ネーブロス。そして、始祖ネーブロスは、人間を犠牲にしながら徐々に増えていったペデルセン族。神は永遠の命や驚異的な回復力を持つ始祖ネーブロスが子孫を増やすことを恐れ、ペデルセン族のある世代から陽の光に弱くなるように、そして人間の血を飲むと死に至る病になるように遺伝子を改変したのだ。人間は神の忠実なしもべだったからな。神は始祖ネーブロスやその仲間よりも、人間の方を愛されていたのだ。だからお前の遺伝子も元をたどればペデルセン族となる」

 オマリ「、、、、そうだったのか、、、、。元々は俺もペデルセン族だったのか、、、、、。それに、神は人間の方に肩入れしていたとはな」

 騎士ヨーセフ「神は何にもまして偉大だ。お前達ヴァンパイアが存在していられるのも、神の存在有りきなのだ」

 オマリ「、、、、、どおりで俺達ヴァンパイアは神に嫌われているわけだ。陽の光の下を歩けないのもそのせいか」

 騎士ヨーセフ「さて、話はこれくらいにして、これからどうする?」

 オマリ「魔女アデリーヌがどうのとか、その前にナイルス達を助けるんだ!」

 ドラゴン「お前が言うそのナイルスとかいう者、ペデルセン族だな?」

 オマリ「ああ」

 犬のミンミ「ペデルセン族に人間の血を飲ませなきゃ、魔女アデリーヌの呪いは解けない。しかし、ペデルセン族に人間の血を飲ませると、、、、」

 騎士ヨーセフ「ある一定の量を超えると、、、、、存在そのものが無くなる」

 オマリ「!!何だと!!」

 ドラゴン「限界を超えると、無に帰るのがペデルセン族の定め」

 オマリ「あいつ、俺にはそのことは全く言わなかったのに、、、、」

 犬のミンミ「本人が知らないだけな可能性も、、、、、ある」

 オマリ「で、その魔女アデリーヌの目的は何なんだ?ゆびわを手に入れ、次は?」

 ドラゴン「おそらく、魔女アデリーヌは始祖ネーブロスを復活させ、自らに吸収させ、神をも超える存在になろうとしているのかも、、、、な」

 犬のミンミ「始祖ネーブロスの復活には、ペデルセン族の純血、そして清らかな人間の血、そして死の聖典が必要なのだ」 

 オマリ「清らかな人間の血、、、、、。ヤバい!アニッサが危ない!!!」 

 騎士ヨーセフ「そいつは、人間、、、、か、、、」

 オマリ「ああ。俺と、ナイルスとアニッサとヴァンパイアハンターで旅をしていたんだ」

 騎士ヨーセフ「ヴァンパイアがハンターと共に旅とはな、、、、。で、そのペデルセン族の純血はどこにいる?」

 犬のミンミ「4つに別れた宗主国の君主がそうなのだ。代々ペデルセン族はヴァンパイアの君主に君臨していたからな」

 オマリ「人間の血を飲みすぎないように、自らセーブしていたのか、、、、。いや、君主になっていたヴァンパイアは、すでに知っていて人間の血など飲んでいなかったというわけか、、、、、。俺は、何も知らなかった、、、、、。なんてことだ、、、、。宗主様が危ない!!!」

 犬のミンミ「まずいな、、、、。魔女アデリーヌの狙いは、4カ国の君主の純血だ」

 オマリ「急ぐぞ!!!」

 

 魔女アデリーヌの国巡り


 魔女アデリーヌ VS 北の国ペズレイ

 ちょうどその頃、魔女アデリーヌは南北東西のヴァンパイアの宗主を巡っていた。

 北の国のペズレイ・ビーモント家のペズレイは南の国を制圧し、一旦自国に戻る最中であった。

 ヴァンパイアを食う悪魔「ノメルグレウス」を使役し、更には始祖ネーブロスの血で作られたネックレスを持ち、日の中を歩けるようになったペズレイ。

 そのペズレイを待ち構えるように北の国の城門前であの女が、待ち構えていた。

 魔女アデリーヌ「やっとお会いできましたわ」

 片手に悪魔ノメルグレウスを従え、首からは始祖ネーブロスのネックレスを下げた宗主、ペズレイの凱旋である。

 ペズレイ「貴様は、、、、誰だ?ヴァンパイアではないな?」

 魔女アデリーヌ「あら嫌だわ、これからお仲間になる私にとって、きつい当たりですこと、、、、、」

 ペズレイ「悪魔ノメルグレウスよ、あの女を八つ裂きにせよ!!!」

 悪魔ノメルグレウスは、持っている鎌を魔女アデリーヌに対して振りかざすも、瞬間移動で回避する魔女アデリーヌ。

 魔女アデリーヌ「(この魔物、、、、、どこかで見たような、、、、)、、、あら?もうおしまい?」

 ペズレイ「小癪な!!!我が爪を受けるがいい!!!」

 ペズレイは手から長く伸びる鋭い爪を出して、魔女アデリーヌに切りかかる!

 ひらりひらりとペズレイと悪魔ノメルグレウスの連撃を交わしつつ言葉を交わそうとする魔女アデリーヌ。

 魔女アデリーヌ「あなた達、二人一緒になれば、もっと強くなれるわよ」

 そう言うと、魔女アデリーヌは、天に手をかざしながら呪文を唱える。すると、目の前のペズレイと悪魔ノメルグレウスが一つになってしまう。

 その姿はおぞましく、全身を妖気で包まれた新たなるヴァンパイアが生まれてしまう。

 ペズレイ&悪魔ノメルグレウス「いい気分だ、、、、、、」

 魔女アデリーヌ「あら、いい男になったじゃない。手始めに、あの子達を、食すのはどうかしら?」

 魔女アデリーヌが指差す方向に、魔女アデリーヌの支配下に置かれたナイルス、フレーゲル、ネヴィルがいる。うつろな目をした、ナイルス達。

 ペズレイ&悪魔ノメルグレウス「腹が、、、、、、満たされぬ、、、、」

 ペズレイ&悪魔ノメルグレウスがナイルスに触れようとしたその時、一本の銀の矢がペズレイ&悪魔ノメルグレウスの腕を射抜く!!!

 魔女アデリーヌ「!!!」

 少し離れたところに、あのヴァンパイアハンター、アニッサ、そしてオマリ、ドラゴン、犬のミンミ、騎士ヨーセフがいるではないか?!

 ヴァンパイアハンター「間一髪間に合ったぜ!」

 

 

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