(音楽+創作イントロ物語) 淡い夕霧の中で

 クロトーン「止めろ、止めてくれ!!!」

 暗い部屋の中で、診察台に寝かされる一人の男。クロトーン。

 見えない、薄ら明かりの中、冷たい感触が手を伝う。

 ハッと起き上がった時、辺りは一変し、深い霧の中の森にクロトーンは、ただ一人たたずむ。

 ここがどこかもわからず、木々を辿りながら。どこからともなく、小川の流れる音がする。

 小川を覗き込むと、そこには、失ったあの人の顔が浮かぶ。

 クロトーン「・・・・・・うぅぅぅぅ・・・・・・」

 クロトーンは再び歩き出し、ゆく当てもなく森を彷徨う。

 やがて、日が傾き、辺りは暗くなってくる。そこに、ある一定の距離を保ちクロトーンを狙う一人の謎の男の姿が。

 フロリスはクロトーンの首元を狙い、噛みつこうとする。とっさに避けるクロトーン。その時、小川の畔から、一筋の光が差し込む。辺りは昼の様に明るくなり、失ったクロトーンの妻が降臨した。

 クロトーンの妻「消えよ、邪悪なる鬼よ!」

 フロリスはクロトーンの妻を見ると、一瞬で石化し、ボロボロとその身体を崩してゆき、砂となって消え失せた。唖然とするクロトーン。

 クロトーンは妻の方を見ると、もうそこには妻はおらず、代わりに、生前二人で栽培した薬草が落ちていた。

 その薬草を握り、涙を流すクロトーン。涙は頬を伝い、大地に流れ、新たなる芽を芽吹かせる。その新たなる芽は森となり、時を経て現代。その芽から作られた薬草は多くの人々を救い、クロトーンは英雄とあがめられた。

 

 実際の音楽の歌詞の内容とは一切関係ないので、あしからず。

 悲しみの中に、わずかな希望を見出せるように書いてみた。


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