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「なまら」は北海道ルーツの方言じゃない!

 こんにちは、くろさきのぞみ(@NozomiN_18)です。
前回の「お気持ち表明」から昨日の今日で恐縮ではありますが、ライティングのリハビリのため執筆数を増やしていく所存です。よろしくお願いいたします。

 さて、リハビリ一発目の記事ですがかなり過激なタイトルとなってしまいました。
別に私は「北海道が嫌い」だとは思っていませんし「アンチ北海道」を掲げているわけでもありません。ジンギスカン万歳!
では、なぜ今回このような、思わぬ敵を作りかねない記事を執筆しているのか……その経緯を説明させていただきます。

「なまら」は北海道弁!?!?

 ある日、私がとあるVtuberさんの配信を見ていたところ、そのVtuberさんが会話の流れで、『「なまら」って最近よく聞くけどどういう意味だっけ?』と何気なくリスナーに問いかけました。

 そのVtuberさんはかなり人気が高い方で、その時は視聴者の数も3ケタほど。すぐさまその回答がコメントで何件も流れてきました。

『北海道弁で「とても」とかって意味だったと思う』
『なまら=すごく、とても 北海道弁』
『北海道弁で「すごく」やね』
『とても@北海道』


・・・・・・んん?!?!?!

私は目を疑いました。


「北海道弁!?!?!?」

 ショックでした。
新潟生まれ新潟育ちの私が、おじいちゃんおばあちゃん世代の人との会話で使っていた「なまら」が「北海道弁」と言われてしまったからです。

 このショックを例えるなら、若かりし頃(今も若いですが)に使っていた「壁ドン」という言葉が、2014年ごろにそれまでとは全く違う意味で、テレビや恋愛漫画などで使われだしたような感じ(知らない方はググってね)。

 私は今こそ声を大にして言いたい。

『「なまら」は北海道で生まれたわけではないし、北海道だけのものではない」!!!!!』


これ以降は、「なまら」の語源と流行について論文のようにつらつらと書いています。それでもOKな方はどうぞ。それ以外の方は我慢して読んでみてね。

「なまら」は新潟生まれ北海道育ち

 この記事を執筆するにあたって、まずGoogle先生に聞いてみたところ、「なまら」を北海道弁として紹介する記事が出るわ出るわ。
日本辞書検索サービス「goo辞書」が扱っている、三省堂の『全国方言辞典』にも、「なまら(北海道の方言)」という見出しで、意味が記載がされています。

 それでもなんとか「なまら」と新潟について言及しているサイトを探したところ、まず最初に見つけたのが、まさかの『ニコニコ大百科』。
なまら」という見出しを見ると中に、

新潟弁、北海道弁で使われる。

歴史的には、新潟弁で使われていたものが、北海道への移住に伴い、使われていったと考えられる。1980年代以降流行し、一般に広まったが、道内でも使わない者もいる。

出典:なまらとは (ナマラとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

という記載があります。

 とはいえ、これだけではさすがに情報が少ないので、さらに探してみると『「なまら」が新潟生まれの方言』とするサイトがちらほら。
そのほとんど(というか見た感じすべて)が情報元を表記していないので、信ぴょう性に欠けますが、その中で共通しているのは、

・新潟県の漁師の間で使われ始めた
・語源は「生半可」
・新潟から北海道へ移住した人々によって伝わった
・1980年頃に北海道のテレビ番組で使われたことがきっかけで、道内で流行し始めた

という記載。先ほどの『ニコニコ大百科』の記述とも合います。

 ところが、インターネットの百科事典の最大手である『Wikipedia』にある「北海道方言」の中に、

元は新潟弁で、1970年代に新潟県出身のラジオDJが使ったことから広まった地域的な若者言葉だった。

出典:北海道方言 - Wikipedia

という記載も。
詳細は分かりませんが、少なくとも北海道内で「なまら」という言葉が使われだしたのは、1970年代以降といえます。

 また、それより前の「新潟から北海道へ移住した人々」について。
「近代以降の大規模な北海道への移住」と考えると、明治時代に盛んにおこなわれた「屯田兵」の移住が思いつきます。

 当時、新潟からの移住民は900人弱といわれており、屯田兵全体の約12%ほど。しかし、新潟弁にもいくつか種類があるため、「なまら」を使っていた人はもっと少ないはず。

 そこから、近代・現代を経て「北海道弁」としての「なまら」になったと考えられます。

「なまら」を全国区にした番組

 「なまら」が新潟から北海道に伝わり、70年代以降に道内でブームになったことはわかりましたが、ではなぜそこから「北海道弁」として全国区になったのでしょうか。

 それは、1996年から北海道内で放送されていた『水曜どうでしょう』の再放送が全国各地で放送されたことがきっかけだと思われます。
その番組のレギュラーの1人、北海道出身の大泉洋氏が番組内で(やたらと)「なまら」を使っていたことから認知が広がり、水曜どうでしょう自体と「俳優としての大泉洋」の流行で一気に『北海道弁としての「なまら」』が全国に知れ渡ることになりました。

 その影響もあってか、現代で「なまら」を使うのは、『水曜どうでしょう』を視聴していた若年層が中心。
一方、新潟県内で「なまら」を使う人は、比較的高齢の方に多いように思います。

 余談ですが、『水曜どうでしょう』の名場面でよく挙げられる「だるま屋ウィリー事件」。
大泉洋氏の「大丈夫じゃねーよ!なまら怖かったよ!」というセリフをご存じの方も多いと思いますが、実はその事件の現場が「なまら」が生まれた新潟県の海沿い。どこか因縁を感じてしまいます。

さいごに

 ここまで、「なまら」の語源をいろいろ言ってきましたが、言葉の語源、ひいては方言の語源は史料として残っておらず、伝承や口承でしか残っていないものがほとんど。
そのため、完璧に調査できるものではありません。

 そのため、仮に
『「なまら」は北海道弁』
と言っている人がいても、

『「なまら」は新潟のモンじゃゴラァ!』
などと、言うなれば「方言ヤクザ」のような態度を取ることが許されるわけでもありません。

あくまで、『新潟弁でも「なまら」は使う』ことを忘れないでね、というお話でした。

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