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2023/11/02の日記 

 クレしん映画30本全部見るやつ。今日は「謎メキ!花の天カス学園」を。2021年とかなり新しい作品。

 全寮制の超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」通称・天カス学園に1週間体験入学する事となったしんのすけ達。入学を目指していた風間は、足を引っ張るしんのすけとの大喧嘩の末に寮から飛び出してしまった。
 探しに出た所、壊れた時計塔の中でお尻に噛み跡がある状態で倒れている所を発見された。翌朝に目を覚ましたものの究極のおバカに変貌していた。学園で似た怪事件が多発していた事もあり、しんのすけ達は「カスカベ探偵倶楽部」を結成。しんのすけ達が迷推理の末に見つけたモノとは...

Wikipediaより引用

 すいません、「しんちゃんの声変わって以降のやつか〜観る気しねえ〜」とか思ってました。どうせオトナ帝国超える作品なんて今後無いと思ってました。

 最高傑作、これでした。

 超面白え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!! 全員観ろ!!!!!
 
 オトナ帝国とか戦国大合戦って、まあ文句なく傑作なんですけど、あくまで大人目線での1位評価だったと思うんですよ。個人的に「一番笑える」のはヤキニクロードだし、クレしん映画を評価する物差しは色々あると思うんです。天カス学園は泣けるし、笑えるし、キャラもいい、挑戦的な要素もありと総合点で1位をあげていい快作です。

 本作の何がすごいかって「ミステリー」と「青春」という二大要素を両立させたうえで、子どもでも楽しめるように調理されているところ。 

「ミステリー」要素

 クレしん映画を何本も観てきた自分ですら、「どうせ子ども向けだし単純な謎なんでしょ?」と侮って観てました。見事に騙された。「クレヨンしんちゃん」の世界でしかこのミステリーは成立しない。これがすごいの。

 普通の学園ミステリーなら恐ろしい殺人鬼を出すところを、本作ではおケツを噛み、相手をおバカにしてしまう「吸ケツ鬼」という存在にしています。これを単なる「子供向けで殺人は描けないよね」という妥協に終わらせず、ミステリーがグッと面白くなる仕掛けにしているんです。

 まず、人が死なない、ということは被害者を登場させ続けることができるわけです。でもおバカになってるから会話が成立せず、捜査の難度は以前高いままにできる。そして何よりおバカになっているのでギャグを乗っけられる。実際、襲われて以降風間くんがずっと画面内でボケ続けるので超ウザくて面白い。

 天カス学園では成績から素行に至るまでAI「オツムン」が監視しポイントが付けられていくため、おバカになることは実質死を意味するわけで、解決すべき課題として物語を動かす動力にちゃんとなっています。 

「青春」要素

 かすかべ防衛隊は今こそ一緒にいるけど、風間くんだけは私立小学校に進学することはマンガでもアニメでも描かれています(番外編『えんぴつしんちゃん』)。本作はその設定を膨らませた感じですかね。私たちは仲良し5人組を30年近く見続けているけど、実は2年も経てば離れ離れになってしまう、ほんの短い時間なんですね。

 エリート人生を歩みたい気持ちと、友達と別れたくない気持ちの板挟みに葛藤している風間くん。厳しいポイント制でエリートと落ちこぼれを分断する天カス学園という舞台が、風間くんが日々感じていたであろうストレスを爆発させます。しんのすけのせいでポイントが激減した風間くんがしんのすけと喧嘩するシーンはかなりキツいです。ウォーターセブン編のウソップとルフィの喧嘩を思い出す。お互い勢い任せでいらんこと言っちゃう感じ。そうだ、ネネちゃんがなんかに似てるなーと思ったんだけど、このときのナミだわ。
 5歳児が主人公でも真っ向から青春を描けるんだなーというのは発見でしたね。

 学園ものといえば個性豊かな生徒との友情。本作はゲストキャラクターがたくさん登場しており、その誰もが無駄になっていません。

 生徒会長の阿月チシオ、番長の半公木切太郎、生物部部長で野生児のろろ、エリートポイント1位の豆沢サスガ、2位のギャル寺盛アゲハといった個性豊かな面々がかすかべ防衛隊のメンバーと交流し関係性を積み上げ、クライマックスで全てが回収される展開には舌を巻きました。

 ろろがヤバい。サブキャラなんだけど、ろろのシーンで3回くらい心臓抑えた。クレしん映画は見るたびに一番好きなヒロインが塗り替えられていくな……。あの絵柄でこんな可愛いってすごくね?! ボーちゃんの恋愛体質も久々に活かされ、青春ものに欠かせない恋愛要素はボーちゃん×ろろに集約されています。

 これまた学園ものに欠かせない不良グループ。マサオがまたグレます。なんか「鬼義理のマサ」になります。マサオくんはやっぱ調子乗ってるときが一番ウザくて一番面白い。カス組の番長とマサオが不良要素を担っています。

 ネネちゃんは比較的影が薄いんですが、男4人が惚れたりグレたりバカになったりバカだったりで役に立たなくなるので地味に重要な存在です。推理パートでは女子しかできない立ち回りもするし。先述したけど、ネネちゃんはナミなんですよ。姫的扱いは一切してもらえない、男連中に喝を入れるヒロイン。

 「青春ものあるある」を満遍なく活かしきり(マジで「全部」活かすのですごい)、ミステリーが解決してもまだ感動のラストバトルが待っている。ネタバレを避けて語れないのがもどかしい。マジでみんな観てくれ。

その他

 本作では野原一家はお留守番。みさえがストレートに寂しがっているのが結構意外でした。あとシロは可愛い。「(しんのすけが帰ってくるから)明日は焼肉でもすっか!」というセリフがヤキニクロードを思い起こさせてニクい。焼肉は野原一家団欒の象徴なんですかね。風間くんのママも要所要所で登場します。

 あと名前オタクとして言わせてもらうと、「天カス学園」というネーミングが素晴らしい。私立天下統一カスカベ学園の略であり、スーパーエリートの「天組」と落ちこぼれの「カス組」にもかかっている。

 好きなシーン
・推理するとき尻がピクピク動く、という新しい演出
・バカになった風間くんに「しんちゃん」と呼ばれキモがるしんのすけ
・風間くんのボケに「反応に困りますな」と真正面からぶった斬るしんのすけ。お前がいつもやってることだよ
・カニを見ながら食パンの耳を食べるとカニの味がする、とそんなわけないことを言うしんのすけと「本当だ!」と納得するマサオ
・一番怪しくない人が逆に怪しいと言われ本人のいないところで容疑者にされるマサオ
・見たことない早口でろろを弁護するボーちゃん
・珍しく10代に鼻の下を伸ばすしんのすけ
・しんのすけの坊主頭恋しさにタワシを撫でるみさえ
・しんのすけが帰ってくる前夜、はしゃぐシロ
・ろろにフラれるボーちゃん
・見たことない早口でろろを弁護するボーちゃん
・カス組在籍のフワちゃん(ゲスト)
・崩れる時計台の中で殺陣を繰り広げるしんのすけ。そういえば剣術の才能があるって設定あったな。これだけじゃなく懐かしい設定がちょこちょこ復活していて嬉しみ

好きなセリフ
・「そうやって一生いい加減にふざけて生きてろよ!」
風間くんとしんのすけの喧嘩、キツいんだけどこのセリフは特に、ね……。

・「これで、私たちは共犯者だ」
ろ、ろろさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。好き。ボーちゃんって奥手なタイプかと思ってたけどはっきり言葉にするタイプなんだな〜。

 ケツだけ爆弾(シロ)、オラのプリンセス(ひまわり)、ロボとーちゃん(ひろし)、珍風伝(みさえ)と野原家は一人一人メインを張り、かすかべ防衛隊もユメミーワールドでネネちゃん、カンフーボーイズでマサオくん、天カス学園で風間くんときたらやっぱりボーちゃんメインの映画が観たいよね〜。待ってまーす。


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