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『怪物と出会った日 井上尚弥と闘うということ』

井上尚弥の強さを知るため、井上尚弥に敗れた選手に対してインタビュー。敗れた選手に敗れた記憶を語ってもらうという難しい取材を繰り返し、日本の選手だけではなく、メキシコやアルゼンチン、海外まで向かい信頼関係を築き話を聞き続けた筆者の行動力に脱帽した。

特に印象に残った5つの要素を記しておく。


● 最初からモンスターはいなかった

今やモンスターと呼ばれる井上尚弥も、アマからプロに転向した時はスタミナが足りなかったり、打たれた時に少しうめき声をあげたり、わずかに弱点があったりした。最初から完成された選手でなく、1戦1戦の成長幅が物凄かったことを知った。井上は、絶えず自己変革し続けることでモンスターとなったのである。

● 「モンスター」というイメージ戦略

対戦相手は、井上が“モンスター”(怪物/化け物/恐ろしい存在)と言われていることで、「井上は強い、闘うのは怖い・・」と先入観を持ってしまう。度重なるKOシーンの映像が鮮烈だけに、さらに頭に焼き付けられる。“モンスター”と名付けた大橋会長のイメージ戦略の手腕を感じる。

● 高いリスク管理能力

試合中、何度も拳を負傷していたが、それを相手に気づかせない。むしろ作戦と思わせて、故障箇所を攻めさせない。そのような対戦が何度もあったことを知った。しかし、相手は最後まで、試合後になっても知らないのである。
最悪のケースをいくつも想定し、その状況を抱えながらも、最善を尽くすことはもちろんのこと、そうとすら感じさせないのだ。

● 努力し続けることが才能

井上尚弥の対戦相手は、才能に溢れた選手だけでなく、とにかく真面目で、他の時間を犠牲にして練習したり、泥臭く粘り強く闘う選手が多い印象。たとえ負けたとしても、周りの人を感動させたり、場を明るくできる選手は人生では成功できる。
またオマール・ナルバエスは「規律」と「節制」を大事にしていた。日本人では当たり前だが、メキシコ人やアルゼンチン人の気質にはないものだそうだ。

● 負けることよりも、負けをどう捉えて行動するか

ボクシングは対峙する2人のうち、1人が勝者、1人が敗者となるスポーツ。敗れて自暴自棄になる選手、燃え尽きる選手もいれば、敗れたことでより一層成長をする選手もいる。勝敗そのものの結果だけでなく、「闘い負けたこと」をどうとらえるか。そこに人格が現れ、人生が変わっていくのである。

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