ビル風を防ぐには?中高層条例の背景にあるもの(5冊目)
『ビル風の基礎知識』風工学研究所(2005年)★★★☆☆
(1)内容と感想
「マンションを建てたい」とご依頼を頂くと、我々営業マンは役所に調査に行く。その時にお決まりのように出てくるが「中高層条例」である。東京都では、10m以上、もしくは4階以上の建物を建てる際には、看板を設置し、近隣住民を隈なく訪問し、説明会を開催した上で、届け出なければならない。
なぜ、この条例が生まれたのか。その背景の一つにはビル風があるという。本書では、ビル風の基礎知識として、ビル風を防ぐ方法まで踏み込んで書かれている。前編の教科書編は設計士向けだが、後半のQ &Aは文系にも優しい。
(2)本の要約
① 嫌な風ってどんな風?
個人差はあるが、瞬間風速5m/sが知覚としての不快な風の始まり、瞬間風速10m/sが風圧力による不快の始まりと言える。
② ビル風を防ぐには?
植栽。フェンス。庇。その地域の風の吹く方向を抑えることが大切。例えば、東京では南北方向の風が多い傾向がある。
③ 防風対策の具体例は?
田町のNEC本社ビル。東京で風速頻度の高い南北の風に対して、建物の中程で風穴を開け、その中に風を通過させることにより、吹き降ろしを少なくして地上付近の風速を弱めている。200本以上の常緑樹を植えている。
④ 事故が起きたら補償される?
基本的には補償される。ただし、建物が原因かどうかを原告側が立証しなければいけず、専門家への相談が必要なため簡単ではない。
⑤ ビル風の影響範囲は?
一般的には、建物の外壁面から1〜2倍が影響範囲と考えれば良い。細くて高い建物は高さの1倍程度、幅が広い建物は高さの2倍程度。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?