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go to bed

 大企業や学校などでパワーナップの取り組みが始まっているそうな。
昼寝をすることで午後の仕事や学業をより効率化させることができるらしい。
 昼寝にそんな効用があることはよくわかる。むちゃくちゃ眠い時に必死で目をこすりながら何かをこなすより、たとえ数分でもうとうとしてから再度行う方がずっとちゃんと出来るのは誰しも経験している。
 でもそれ、なんか昼寝に対して失礼というか、本来昼寝ってそういうものか?
 昼寝は効率とか生産性とは無縁の時間であるはずじゃろが。
 眠いからつい寝てしまう・・のが昼寝じゃろが。

 たとえば学生のころの午後の歴史の授業。春先のよく晴れた日。今思い出すだけで瞼が重くなってくる。ローマ帝国の隆盛な、コンスタンティノープル・・世の中といふものは儚いものよのう〜・・・と、そのままどんどん深い眠りに落ちていき、恥ずかしながら教科書を涎で濡らしたり寝言まで言って先生を呆れさせたこともある。別の先生は誰かが眠っていてもそのまま気づかないふりをして、その子が目を覚ましたらこういうのだ。「ヤマダ~。目が覚めたら教科書をみろよ」私たちはあの先生が好きだった。それから逆にわたしの夫は授業中先生に「おまえ!眠そうな顔するな!」と怒られたらしい。全然眠くなんてなかったのに。(元々がそういう顔)これは理不尽である。

 わたしは偏頭痛持ちで、低気圧が近づく時や痛くなる前ぶれにものすごく眠くなることがある。そのタイミングでたとえ数分でも眠ると頭痛を回避できることがあるので最近は状況が許す限り寝ることにしている。そんな時デパートやホテルのきれいなトイレはとてもありがたい。時間があれば電車でもわざと空いている各駅停車に乗ったり、わざと乗り過ごして戻るというワザ(ワザか?)も使う。気のおけない友人と一緒の時は無理せず「ごめん、寝る」と宣言もする。

 また、うちの息子は睡眠時無呼吸症候群でやはり昼間とても眠かったらしい。検査してそれがわかり毎晩専用のマウスピースをつけて寝るようになると昼間の眠気がずいぶん軽減されたという。これが原因の人は結構多いらしい。とくに車を運転する仕事の人はみんな検査するべきだ。

 以前仕事場で、若い人と二人差し向かいで打ち合わせしている最中に彼女がだんだん朦朧としてきたのを見てうろたえたことがあった。(彼女も無呼吸症候群か偏頭痛持ちなのだろうか?・・困ったな、ここから大事なところなんだよな・・)と思いながら起きろとも言えない、さり気なく目が覚めそうな話題を振る、大きな身振りをしてみせる・・など「あなたが寝かけてることなんてワタシぜ〜んぜん気づいてませんよ〜」という前提で苦肉の策を繰り出すしかなかった。
 しかしふと見ると彼女の手元のメモの字はもうぐちゃぐちゃじゃないか。もうだめだ。私は最後の手段で「お茶のおかわり入れてくるね」と席を外してしばらく時間をつぶした。少ししてからお茶を持って戻ると彼女はすっきりとした顔で「すみません」と言ったが、それは寝てしまったからか、お茶に対するお礼なのかわからなかった。とりあえずものすごくホッとしたのを思い出す。

 眠気は生理現象でトイレと同じだと思う。仕事や作業の途中でもよほど支障がない限り、トイレに立つごとくナチュラルに「ちょっとウトウトしてきます」って言える社会になってほしい。個人的な生理現象に寄り添える世の中になれば過労死はもちろん自殺率も減ると思う。でもトイレの休憩すら制限があったり、生理休暇だってままならない日本ではやっぱりパワーナップという大義がないと無理なのだろうか。
 「あ、ウトウト行くの?了解、おやすみ〜」って会話がごくふつうになりますよう心から願う。

#昼寝 #パワーナップ #goto   #睡眠時無呼吸症候群



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