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直違の紋に誓って

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実在した二本松少年隊の一人、武谷剛介を主人公とした小説です。 二本松藩がどのように戊辰戦争に巻き込まれ、藩の誇りを賭けて戦ったのか。そして、明治の「西南戦争」は戊辰戦争の敗者にと… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~下長折(1)

 翌日、今日も学校の仕事があるという水野に付き合って早く起きると、剛介は一晩の宿の礼を述…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~帰郷(2)

 確かに、十分に見送ってやれなかった。だが、「二本松に帰る」と言っていたではないか。手紙…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~帰郷(1)

 磐根との邂逅から数日後。剛介は、上司に半月ほど休暇を取る旨を告げた。同僚には申し訳ない…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~邂逅(2)

 近江屋に着くと、磐根は自分より遥かに年上だという見栄もあってか、気前良くもてなしてくれ…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第三章 若木萌ゆ~邂逅(1)

 一八七七年(明治九年)。剛介は、二十二歳になっていた。  会津に逃れてきてから、既に八…

k_maru027
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~敗戦(2)

丸山の言葉は、その通りになった。  九月二十二日には会津藩も降伏し、奥羽の地における長か…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~敗戦(1)

 坂下に着いたのは、四つ刻(午後一〇時)だった。さすがに人々は寝静まっているが、そもそも人気が少ない。 「ここだ」  石川が、とある庄屋の家の前で馬を止めた。 「これは、石川様」  家の主が、目をしょぼつかせながら出てきた。 「丸山四郎右衛門様が、士道を掛けてお守りしようとしているお子たちだ。丁重にな」 「へえ」  主は柔順に従った。 「まずは、床を延べましょう」  剛介と豊三郎は、頭を下げた。  二本松を出てから、このように落ち着いて、布団で眠るのは初めてではないだろうか。

【直違の紋に誓って】第二章 焦土~猪苗代(2)

(その通りだ)  口には出さないが、鳴海も同じ思いだった。今まで、白河や本宮、そして城下…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~猪苗代(1)

 剛介と豊三郎は、それから山中をさまよった。季節はとうに秋になっている。出来ることならば…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~母成峠の戦い(2)

 本道の通る萩岡で戦が始まったのは、午前十時頃である。  中央道を目指し板垣、伊地知が率…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~母成峠の戦い(1)

 翌二十一日の早朝は、剛介たちのいる猿岩も、深い霧に包まれた。猿岩の断崖下を流れる石筵川…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~二本松を奪還せよ(2)

 翌日、剛介らは会津藩士の一人に連れられて、陣地を見回った。   聞くところによると、二…

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1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~二本松を奪還せよ(1)

 剛介たちがようやく母成峠に着いたのは、その翌日だった。大谷鳴海は与兵衛と共に母成峠に陣…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】第二章 焦土~盗賊(2)

 今までの食事で、これ程美味な食事があっただろうか。剛介は腹を擦った。かぼちゃのこっくりとした甘み。きのこの旨い出汁。葱の甘みを伴ったぬめり。  腹もくちくなり、剛介はこの数日において、初めて寛いだ気分になっていた。 「ようやく、まともな顔になったない」  孫次が笑った。気が張っていたこともあり、孫次や喜兵衛から見れば、剛介らは子供ながら油断のならない殺気を帯びていたのだろう。  「二本松が落ちたというのは、本当だったんだな」  一人がぽつりと呟いた。その言葉に、剛介たちはそ