マガジンのカバー画像

鬼と天狗

118
幕末二本松藩の様子を描いた拙作「鬼と天狗」の各話(スピンオフ含む)をまとめたマガジンです。 マガジンイラスト/紫乃森統子さま ©紫乃森統子.2023
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

鬼と天狗~【主要登場人物・目次】

二本松藩の泰平の眠りを醒ましたのは、尊皇攘夷の嵐だった――。 文久2年、思いがけず名家を継…

k_maru027
8か月前
43

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(5)

 ――城への道すがら、鳴海は平八郎との会話を思い返していた。やはり現在の水戸藩は家中が真…

k_maru027
7日前
18

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(4)

 眼の前で手を叩く音が起き、鳴海ははっと顔を向けた。権太左衛門が、槍を振ってみせている。…

k_maru027
8日前
20

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(2)

「藤乃家に泊まっている守山藩士らの人数は分かるか」  鳴海の質問に、おていが指を折って数…

k_maru027
10日前
23

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~嶽の出湯(1)

 ――半刻後、鳴海は権太左衛門や政之進と共に、馬首を嶽温泉の方へ向けた。 「鳴海様。守山…

k_maru027
11日前
23

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(5)

 那津の婚儀の日は、この季節にしてはうららかな穏やかな日だった。白絹の綿帽子を被った義姪…

k_maru027
12日前
18

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(3)

 彦十郎家に黄山が訪ねてきたのは、それからしばらくしてからのことだった。十右衛門の手紙が鳴海の元に届けられたのが昨年十一月の十日頃だったが、黄山はあの後も、商用かはたまた藩の密命を帯びていたものか、城下で姿を見かけることはなかった。 「久しぶりであるな、黄山殿」  鳴海は、黄山に茶を勧めながら話を切り出した。 「すっかり遅くなり申しましたが、鳴海様も御番頭への御就任、まことにおめでとうございます」  黄山は、懐から袱紗を取り出した。幾ばくかの金子が包まれているようであり、現在

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(2)

「先日の拙宅の結納では、世話になり申した」  努めて明るく屈託のない様子を心掛けながら、…

k_maru027
2週間前
18

【鬼と天狗】第三章 常州騒乱~鳴動(1)

 文久四年正月。鳴海は初めて「正月御目見得」の席に臨んだ。正月に行われる藩主から家臣らへ…

k_maru027
2週間前
20

【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(7)

 十二月十六日、鳴海は針道村へ赴いた。この日は公休日であるが、朝早くから紋付袴を身につけ…

k_maru027
3週間前
18

【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(6)

「万が一、藤田小四郎とやらの勢いに武田殿が引きずられるようなことがあれば、厄介なことにな…

k_maru027
3週間前
19

【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(5)

 源太左衛門が探索に出していた岡と味岡が城下に戻ってきたのは、年の瀬も押し迫った頃である…

k_maru027
4週間前
22

【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(4)

「帝の御本意があくまでも攘夷にある以上、朝廷側はそれにこだわるであろう。然らば、勤皇の風…

k_maru027
4週間前
21

【鬼と天狗】第二章 尊皇の波濤~虎落笛(3)

 善蔵の言葉を裏付けるかのような手紙が鳴海の元に届いたのは、それから間もなくのことだった。手紙の主は、京にいる十右衛門である。  大谷鳴海殿  京師既冬衣成テ京人共冬戯ニ打戦慄候尤モ我等為ハ国元ト無大差京人共乃言実ニ笑止千万也ト相互ニ打笑候  然も鳴海殿兼テゟ御懸念致横濱鎖港之未ダ於京決定勅諚不聞候此儀付五日於朝議大樹公ニ再上洛求鎖港進捗之儀付釈明使事相成聞候丹波様大ニ氣揉共国事故我等彼此論共無為也ト拙者存候帝望真之国家御為之攘夷旦疾キ実現也共暴徒之嗷議曰王政復古不好願ク