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バレているよ

我が家には神様がいらっしゃいます。
なので月に3回、神様にお礼のお祭りをお仕えします。
同じ思いの人たちが、お祭りに参加してくれます。

5年以上前の話です。
夏のお祭りの日、水ようかんを神様にお供えしました。
お祭りが終わり、水ようかん他のお供えものを下げている時、人に呼ばれて部屋を出ました。

その間、部屋は無人になりました。

呼ばれた方とお話をしているあいだにお参りの方々がぼつぼつと帰りだしたので、ものはついでと全員を玄関にて見送りました。

そうしてもとの部屋に戻ると、なぜか強烈な違和感に襲われたんです。
そんなことははじめてで、部屋中のものを見渡しました。
なにも無い・・・はずなのになぜだか水ようかんが気になってしまう。

しばらく水ようかんの前で立ち尽くしてしまいました。こんなところでいつまでもグズグズしてはいられない!

そう思いながらも強烈な違和感が続くため、3つ並ぶようかんのバランを一つ一つ丁寧にはがしてみたんです。

すると・・・微妙に一つが小さく見える。
ずっと凝視し続けると、いやいや微妙どころかけっこう小さい。
その水ようかんには模様として均等な横線が入っていたため、切り取られているのがよく分かるんです。

お店がわの過失ではけっしてない。
女の勘としか言いようがないのですが、だれかが忍び込んで厚さ3ミリの水ようかんを盗んだんです。

どこに何があるかなんてみんな知った仲。
包丁なんてすぐ持ち出せる。
言いようのない気持ち悪さを感じました。

やがて気持ち悪さは解せない気持ちに・・・。

どうしてようかんが欲しいと普通に言わなかったのか。

外に出ればお店なんてたくさんあるのに、どうして外で食べるという選択ができなかったのか。

なにより、なんで厚さ3ミリのようかんで、信頼関係を損なうような行動ができるのだろう。

わたしはことの次第を母に話しました。
すると母は言いました。
「ああ、うちは昔からよくあるのよそういうこと」

解せない気持ちが怒りに変わりました。

その後、友人と食事に出る機会があったので、わたしはその出来事を打ち明けました。
彼女はお寺の住職さん。

わたしの話を面白そうに口角を上げて聞いていましたが、
「いったい誰がそんなことをしたのかしら・・・」
と言ったとたんに彼女はこう答えたんです。

「そんなこと言うたって○○ちゃん、ほんまは誰がやったんか分かってるやろ?」
意外なことばにわたしの瞳孔はひらき、押さえた唇からハッと大きな息がもれました。

本当は知っていたんです。
でも当時はこう見えて(どう見えて?)とても優しかったわたし。

けっして犯人を特定してはならない!と心の奥底で思っていたので、ホワホワ~っと犯人像が浮かび上がるたびに、心と頭がすぐさまそれにブロックをかけていたんです。

それを、
「お前ほんまは知ってるやろ!」
と直球で核心をついたことを言われ、わたしの心は開きなおりました。

「うん、知ってる」
そう答えるのに1秒もかかりませんでした。

というか犯人の彼女…もともとよくちょっとしたものを盗るんですよね。
お金持ちなのに実に不思議。

その後、何事も起こらず犯人さんともいたって仲良くしていましたが、起こったんですよ・・・ついこのまえまた同じような事が。
今回は、デパートで買ったかわいい紙バック5枚組。

隠していたのですが、それはそれはあざやかに盗られてしまいました。

やられたよ!
隠していたショッピングバッグがなくなった事を家人に告げると
「あ!○○さんだ!」と、すぐさま水ようかんの犯人の名が返ってきました。

家人は水ようかんの件も、「そういうのよくあるのよ」との母のことばも全く何も知りません。
でも「○○さん」と即答したのです。

人には分かるんですね。

長く生きていると秘密の1つや2つ、3つや4つなんてだれしも持っているものです。
でも、もれているんですね。

許されているだけで・・・

バレているのだと思います。


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