葦の舟

葦の舟が行くよ
澄んだ水の上を行くよ

空は快晴
日差しは暖か
風に微かにそよぐ髪

葦の舟が行くよ
澄んだ水の上を行くよ

あなたが垂らした釣り糸が
底の底まで垂れていく
澄んだ水が黒くなるほど
深い深い水の底へ

その釣り糸の先に
針は付いているのですか
餌は付いているのですか
何を釣ろうというのですか

水の底に沈んでいるのは
眠った魚でしょうか
口を閉じた貝でしょうか
開くのをやめたイソギンチャクでしょうか
色をなくしたサンゴでしょうか

葦の舟が行くよ
澄んだ水の上を行くよ

(いいえ 針は付いていません)
(餌もついてはおりません)
(糸の先には私の心)
(水の底に沈んでいるのは)
(深い深い悲しみと諦めと後悔と)

葦の舟が行くよ

(水の底へ届けるために)

澄んだ水の上を行くよ

(私は水底にはいませんと)

葦の舟が行くよ

(ここはもう穏やかですと)

澄んだ水の上を行くよ

(底は暗くて寒いでしょう)

葦の舟が行くよ

(私の心を掴んでください)

澄んだ水の上を行くよ

(愛するあなた)

葦の舟が行くよ

葦の舟が行くよ

#詩

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