お迎えにあがりましたよという母は大層若く、銘仙の愛らしい着物を着ていた。お待たせしましたと出てきた父も大層若く、上等なスーツに高山帽を被っていた。それは父の秘蔵の服で、道理で白装束は着せてくれるなとしつこく言っていたわけである。愛した妻に20年ぶりに会うのだから。

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