雪の無い追儺の夜に庭の奥から声がした。祖母に腕を引かれたかと思うと目の前で引戸の鍵が鳴る。あれは何と問おうと祖母を見ようとした目を塞がれ、お前は何も見なかった、何も聞かなかった、と泥濘みに沈むような声で言われればもう何も言えず、哀れな気配のその声はやがて闇に溶けていった。 #掌編

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