歌が聞こえるんだと、祖父は私に言った。春と夏の間の季節にだけ。その歌はおよそ人の声とはかけ離れているそうで、しかし雨を浴びながら、命ある事の溢れんばかりの歓喜を込めた歌だという。私も聞きたいと祖父に言ったが、ヒトにはもう聞こえんのさと、寂しげに笑うだけだった。 #掌編小説

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