足元ばかりを見ていた視界に黒い長靴が現れた。大きな手が頭の雪を乱暴に払ったかと思うと、そこにぽんと何かを置かれた。驚いて伸ばした手に触れたのは、探していた祖父に貰った御守りで、ありがとうございますと顔をあげると、その人はもういなかった。雪の上に、足の跡すら残さずに。

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