ぬめりとした雲が、遠く山の彼方に去る。もうじき冬が終わるだろうと、村の最古参が深く頷く。土の匂いを含んだ風が少しばかり暖かく芳しい衣を纏い、山裾から彼方の村までを満たしていった。冬の雲を戴いた山の頂から、深い鐘の音に似た音が空に響き渡る。冬が春を呼んでいる。美しい歌で。 #掌編

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