夏嶺 (なつね) 2016年3月23日 23:25 ぬめりとした雲が、遠く山の彼方に去る。もうじき冬が終わるだろうと、村の最古参が深く頷く。土の匂いを含んだ風が少しばかり暖かく芳しい衣を纏い、山裾から彼方の村までを満たしていった。冬の雲を戴いた山の頂から、深い鐘の音に似た音が空に響き渡る。冬が春を呼んでいる。美しい歌で。 #掌編 #掌編 3 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート