月影が照らした雪原は、鼻先が悴むほどの寒さの中でも不思議な事に寒さを感じることはない。こんな日は足元を照らすなど無粋でしかなく、灯を持たないのが常だった。ぎゅ、ぎゅと雪を踏み締めながら畑へ向かう。雪原が明月に満たされた収穫の日。どうか良い薬になりますようにと、円い月に願いながら。

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